フェロニッケル

フェロニッケルとは

フェロニッケルは、鉄とニッケルを主成分とする合金（フェロアロイ）の一種です。一般的に、ニッケルが20〜40%、鉄が60〜80%の割合で構成されています。この合金の約7割がステンレス鋼の製造に使用され、現代社会において重要な役割を果たしています。

ニッケル銑鉄

2000年代中頃から、中国では低品位のニッケル鉱石から製造されるニッケル含有銑鉄（通称：ニッケル銑鉄、NPI）の生産が急増しました。このニッケル銑鉄は、ステンレス鋼の製造に使われる純度の高いニッケルの代替品として利用され、世界のニッケル需要の約4分の1を賄うまでになっています。特にロータリーキルン電気炉を用いた製法は、8〜15%のニッケルを含有する高品位ニッケル銑鉄の効率的な生産を可能にし、中国での導入が進んでいます。

その他の合金例

フェロニッケルの他にも、鉄とニッケルを組み合わせた様々な合金が存在します。

テトラテーナイト: 隕鉄に見られる、鉄とニッケルがそれぞれ50%ずつ含まれる合金で、特有の結晶構造により優れた磁気特性を持っています。磁石としての利用が期待されています。
インコネル: ニッケルをベースに、鉄、ニオブ、クロムなどを加えた合金で、耐熱性や耐食性に優れています。
形状記憶合金: Fe-Ni-Co-AlやNi-Fe-Gaなどの合金は、特定の温度で元の形状に戻る形状記憶特性を持ちます。

フェロニッケルの規格

フェロニッケルに関する規格として、以下のものが存在します。

ISO 6501: フェロニッケルの仕様と引渡し条件を定めた国際規格です。
JIS G 2316: 日本におけるフェロニッケルの規格です。

フェロニッケルスラグ

フェロニッケルの製造過程で発生する残留物は、鉱さい、スラグと呼ばれます。これらは、製造所ごとに異なる名称で呼ばれることもあり、グリーンサンド（日向製錬所）、パムコサンド（大平洋金属）、ナスサンド（日本冶金工業）などが知られています。

スラグの成分

フェロニッケルスラグの主な成分は以下の通りです。

二酸化ケイ素 (53%)
酸化マグネシウム (28.8%)
酸化鉄 (9.1%)
酸化カルシウム (4.8%)

これらの成分は、スラグが徐冷または急冷された場合でも、安定した結晶構造を維持します。

スラグの利用

フェロニッケルスラグは、様々な用途に活用されています。

コンクリート用スラグ骨材: JIS A5011-2に準拠した製品があり、コンクリートの材料として利用されます。
* ブラスト処理用研削材: 非金属系の研削材として、金属表面の加工に利用されます。ブラスト材として販売する際には、廃棄物処理法を遵守する必要があります。

宮崎県日向市では、フェロニッケルスラグが埋立材料としても使用されています。しかし、5-0.3mm以下の微粉末スラグは、多くの場合、用途が見つからずストックされているのが現状です。

スラグの安全性

フェロニッケルスラグの安全性については、様々な調査が行われています。フィリピンの工場から出るスラグを対象とした調査では、アメリカ合衆国環境保護庁の基準を超える有害物質は検出されませんでした。また、宮崎県日向市で行われた水質調査でも、環境基準を超える有害物質は検出されていません。国土交通省の資料でも、フェロニッケルスラグから溶出する有害物質は、検出されないか、検出されても環境基準以下であることが示されています。

しかし、フェロニッケルスラグの使用に際しては、有害物質の溶出について事前に確認し、必要に応じて試験を行うことが推奨されています。

非鉄スラグ製品の製造・販売管理ガイドライン

日本鉱業協会は、「非鉄スラグ製品の製造・販売管理ガイドライン」を改正し、フェロニッケルスラグを取り扱う事業者の名前を明記しています。これにより、フェロニッケルスラグの適切な管理が促進されています。

まとめ

フェロニッケルは、ステンレス鋼の製造に不可欠な合金であり、ニッケル銑鉄は代替材料として重要な役割を担っています。フェロニッケルスラグは、様々な用途に利用できるものの、その安全性を確認し、適切に管理することが重要です。

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