フォード・GT40

フォードGT40：伝説のスポーツカーとその歴史

フォードGT40は、1960年代にフォード・モーターが開発した、モータースポーツ史に燦然と輝くスポーツカーです。その誕生は、フェラーリ買収計画の失敗に端を発します。企業イメージ向上を目指したフォードは、当時ル・マン24時間レースで圧倒的な強さを誇っていたフェラーリを買収しようと試みましたが、交渉は決裂。そこで、フォードは新たな戦略として、自社開発によるレーシングカーの製作に乗り出したのです。

開発の経緯：ローラ・カーズとの協業からGT40誕生へ

フォードは、イギリスのコンストラクター、ローラ・カーズと提携。ローラ・マーク6をベースに、イギリスに設立したフォード・アドバンスド・ビークルズ社（FAV）と共に、新たなレーシングカーの開発を開始します。初期の試作車は「フォード・GT」と呼ばれ、シャーシナンバーGT-101からGT-112までの12台が製作されました。ロードスター仕様も含まれており、スチール製モノコックシャーシに軽量なファイバーボディを組み合わせ、ミッドシップに搭載されたプッシュロッド式エンジンは、最高速度330km/hを達成しました。

これらの試作車の開発を通して得られた知見をもとに、量産モデルであるマークIが誕生。シャーシナンバーにGT40と刻印され、正式に「GT40」と命名されました。ボディ形状の改良やエンジンの出力向上、ZF製5速トランスミッションの搭載など、プロトタイプから様々な改良が施されています。マークIは、グループ4スポーツカーとしての承認を得るため、50台のホモロゲーションモデルが製造されました。

レース活動：ル・マンでの輝かしい勝利と惜敗

1964年、フォードGTはニュルブルクリンク1000kmでデビューを果たしますが、結果はリタイア。続くル・マン24時間レースでも全車リタイアという結果に終わります。その後、レース活動はシェルビー・アメリカンが引き継ぎ、サスペンションやブレーキ、冷却システムなど、車両の多くの部分を改良。1965年のデイトナ2000Kmでは初勝利を収めますが、ル・マンでは再び全車リタイアという結果に終わりました。

1966年、改良型のマークIIが登場。デイトナ24時間で優勝、そしてル・マン24時間レースでは見事1-3位を独占し、総合優勝を飾ります。1967年にはさらに改良されたマークIVでル・マン2連覇を達成。しかし、レギュレーション変更により、フォードはワークス活動から撤退します。それでもなお、プライベーターの手によってGT40の活躍は続き、1968年と1969年にはP/1075という車両が優勝、4連覇を達成するなど、その伝説は今も語り継がれています。

バージョン：プロトタイプからロードゴーイングモデルまで

GT40には、プロトタイプであるフォードGT、そして量産モデルのマークI、マークII、マークIII、マークIVと、様々なバージョンが存在します。それぞれに特徴があり、マークIIIは完全な公道走行可能なモデルとして7台が製作されました。また、レース仕様車とは異なる、快適性を重視した内装が備えられています。

リメイク版とレプリカ：現代への継承

1995年には現代的な解釈によるリメイク版、フォードGT90の製作計画がありましたが、頓挫。その後、2003年にフォード創業100周年を記念してフォードGTが発表され、2005年に1500台限定で販売されました。2016年にはル・マン制覇50周年を記念した2代目モデルが登場するなど、GT40のレガシーは現代に受け継がれています。さらに、多くのレプリカや継続モデルも存在し、その人気は衰えることを知りません。Safir Engineering社やSuperformance社といった企業が、フォードの正式な許可を得て、GT40の継続モデルを生産しています。

名称の由来

「GT」はグランツーリスモ、「40」は車高が40インチ（実際は40.5インチ）であることに由来します。正式にはマークIのみがGT40と名付けられましたが、現在ではマークIVを除く全てのバージョンを指す総称として用いられています。

フォードGT40は、その開発秘話、レースでの活躍、そして現代への継承という点において、自動車史上に残る名車と言えるでしょう。その伝説は、これからも多くの人々を魅了し続けることでしょう。

もう一度検索