フマーユーン

フマーユーン：波乱に満ちたムガル帝国の第二代皇帝

フマーユーン（1508年 - 1556年）は、ムガル帝国の創始者バーブルの息子として生まれ、帝国の第二代皇帝として即位しました。しかし、彼の治世は内紛や外敵との戦いに翻弄され、帝国を一時的に失うなど、苦難に満ちたものでした。

生涯

若き日のフマーユーン

1508年、フマーユーンはカーブルでバーブルの長男として誕生しました。幼い頃から父と共に戦場を駆け巡り、1526年の第一次パーニーパットの戦いにも参加しました。父バーブルがローディー朝を破りムガル帝国を建国すると、フマーユーンは皇太子として帝位を継承する準備を始めました。

帝位の継承と試練

1530年にバーブルが死去すると、フマーユーンは帝位を継承しました。しかし、帝国の基盤はまだ不安定であり、各地に敵対勢力が存在していました。さらに、フマーユーンには3人の兄弟がおり、彼らはそれぞれ領土を与えられていましたが、必ずしもフマーユーンに忠実ではありませんでした。特に、次兄のカームラーンは、カーブルとカンダハールを支配し、フマーユーンに対して独立した勢力を持っていました。

シェール・シャーとの戦いと亡命

フマーユーンの治世における最大の試練は、シェール・シャー率いるアフガン勢力との戦いでした。シェール・シャーは、ローディー朝の残党をまとめ上げ、ムガル帝国に対して反旗を翻しました。1539年のチャウサーの戦い、1540年のカナウジの戦いでフマーユーンはシェール・シャーに敗北し、帝国の支配権を失ってしまいました。

フマーユーンは、帝国を奪還するために亡命生活を送ることになります。彼は、シンド、ラージプーターナーを転々としながら、再起の機会を待ちました。この亡命のさなか、1541年にハミーダ・バーヌー・ベーグムと結婚し、1542年には後の皇帝となるアクバルが誕生しました。

サファヴィー朝への亡命と支援

帝国を奪還するために、フマーユーンはペルシアのサファヴィー朝のタフマースブ1世を頼りました。タフマースブ1世は、フマーユーンを手厚く迎え、軍事的な支援を約束しました。ただし、支援の条件として、フマーユーンはシーア派に改宗することを求められました。フマーユーンはこれを受け入れ、サファヴィー朝の支援を得て、インドへの帰還を目指すことになりました。

帝国の奪還と最期

1555年、フマーユーンはペルシア軍の支援を受けてインドに帰還し、スール朝を破って再び帝位を取り戻しました。しかし、その喜びも束の間、1556年にフマーユーンは図書館の階段から転落し、事故死してしまいました。帝位に返り咲いてからわずか6ヶ月後のことでした。

人物

フマーユーンは教養があり、様々な言語や学問に精通していました。しかし、決断力に欠け、享楽に溺れる傾向があったとも言われています。シェール・シャーを討ちもらしたことや、ベンガルでの遊興などが、帝国の命運を左右したと言えるでしょう。

文化への影響

フマーユーンがサファヴィー朝に亡命したことは、ムガル帝国の文化に大きな影響を与えました。ペルシアの文化、特に絵画の様式がインドに持ち込まれ、ムガル絵画の発展に繋がりました。

フマーユーンの生涯は、苦難に満ちたものでしたが、彼の息子アクバルは、帝国の最盛期を築き上げることになります。フマーユーンの時代は、ムガル帝国の発展における重要な過渡期であったと言えるでしょう。

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