フライト・ガード

フライト・ガード：民間航空機を守る防空システム

フライト・ガードは、イスラエルのエルタ・システムズ社（現エルビット・システムズの子会社）が開発した、携帯式防空ミサイルシステム（MANPADS）から民間航空機を守るための搭載機器です。200以上の軍用機やヘリコプターに加え、政府専用機など要人輸送機にも採用されており、特にイスラエル国内航空会社では、地政学的状況を鑑みて広く導入されています。

開発の背景と技術

フライト・ガードの開発は、2002年11月28日に発生したアルキア航空機襲撃事件を契機として加速しました。イスラエル運輸・道路安全省は、同社を民間航空機防衛システムの開発・実証試験先として指名し、開発資金の一部はイスラエル民間航空局の認証取得費用に充当されました。

システムの中核は、レーダーを基盤とするミサイル警報装置（MAWS）と、それに対応する回避システムです。ケニアでのMANPADSを用いた航空機攻撃を想定し、ドップラー・[[レーダー]]でミサイルを探知、イスラエル・ミリタリー・インダストリーズが開発したフレアをデコイとして発射することで、赤外線誘導ミサイルを回避する仕組みです。

安全性に関する論争

フライト・ガードシステムは、その安全性に関して各国から議論を呼んでいます。アメリカ連邦航空局やスイス航空当局は、フレア発射に伴う火災リスクや機器の安全性に懸念を表明し、スイスは搭載機への着陸命令を出し、ミサイル以外の攻撃手段には対応できない点を指摘しています。このため、ヨーロッパ各国も同様の対応をとる可能性が指摘されています。

システムの展開と後継技術

フライト・ガードはイスラエル民間航空局を始めとする数カ国で承認されていますが、イスラエル当局は2008年から、フレアを使用しないレーザー指向性赤外線妨害装置「MUSIC（Multi-Spectral Infrared Countermeasure）」の導入を進めています。

現在、赤外線ミサイル妨害装置（CAMPS）を搭載した民間旅客機はイスラエルを除いて少ないのが現状です。しかし、フランス大統領専用機、ドイツ空軍の輸送機、ブラジル、イタリア空軍の軍用機、WFPのチャーター機、さらにはフェデックスの一部の貨物機など、軍用機やVIP機、危険地域を飛行する航空機を中心に、CAMPSシステムや類似のDIRCMシステムが採用されています。アメリカにおいても旅客機への導入が検討されています。

まとめ

フライト・ガードは、民間航空機の安全を守る上で重要な役割を果たしたシステムですが、安全性への懸念や技術革新によって、より高度な赤外線妨害装置への移行が進んでいます。今後も、航空機に対する脅威の変化に対応した、更なる技術開発が期待されます。様々な国や組織が導入していることから、その有効性と必要性は広く認識されていると言えるでしょう。ただし、システムの完全性や万全な安全性の確保には、引き続き課題が残されています。将来的な技術革新によって、より安全で信頼性の高い航空機防衛システムが登場することが期待されます。

もう一度検索