フライドバイ981便墜落事故

フライドバイ981便墜落事故：詳細な事故調査と背景

2016年3月19日、フライドバイ981便（ボーイング737-800型機）が、ロシアのロストフ・ナ・ドヌ空港への着陸を試みている最中に墜落し、乗員乗客62人全員が死亡するという痛ましい事故が発生しました。この事故は、悪天候下での着陸復行操作の難しさと、航空会社の安全管理体制の課題を浮き彫りにしました。

事故の概要

事故当時、ロストフ・ナ・ドヌ空港周辺は強風が吹き荒れる悪天候でした。フライドバイ981便は、一度目の着陸を断念し、約2時間にわたって上空で待機した後、再度着陸を試みました。しかし、再び着陸復行を試みた際に高度を失い、滑走路端に墜落しました。この事故により、乗客55名と乗員7名、計62名全員が亡くなりました。

事故の背景

フライドバイは、アラブ首長国連邦政府が主要株主である格安航空会社で、ドバイ国際空港を拠点としています。2009年の運航開始から急速に規模を拡大し、2015年にはロシアを含む95都市に就航していました。フライドバイはそれまで安全記録が良好でしたが、この事故が初の死亡事故となりました。

事故後、同社のパイロットが、過酷なシフト勤務による疲労が事故要因の一つであると証言しました。また、2016年には多くのパイロットが疲労や過密なシフトを理由に退職していたことも明らかになりました。

事故機

事故機はボーイング737-800型機（機体記号：A6-FDN）で、機齢は5年3ヶ月でした。2016年1月にはC整備を終えており、事故当時の燃料搭載量は8.5時間分でした。事故機にはCFMインターナショナル CFM56エンジンが搭載されていました。

運行乗務員

機長はキプロス人男性（38歳）で、総飛行時間5,961時間、うちB737-800型機では4,905時間の飛行経験がありました。事故の1年半前に機長に昇格しており、事故当時は退職を届け出て残り3ヶ月の勤務を消化中でした。

副操縦士はスペイン人男性（37歳）で、総飛行時間5,767時間、うちB737-800型機では1,100時間の飛行経験がありました。両パイロットともにロストフ・ナ・ドヌ空港への着陸経験がありました。

天候

事故当時のロストフ・ナ・ドヌ空港は悪天候で、強風、低い雲底、弱い雨、もや、そして乱気流やウィンドシアが発生していました。

飛行経過

フライドバイ981便はドバイを離陸後、巡航高度に到達し、ロストフ・ナ・ドヌ空港への着陸を試みました。最初の着陸試行時にウィンドシア警報が作動し、着陸復行を行いました。2度目の着陸試行時にも再びウィンドシア警報が作動し、着陸復行を行いましたが、その際に高度を失い、墜落に至りました。

着陸復行時、機体の軽量さと最大推力の設定が過剰な機首上げモーメントを引き起こし、機体がコントロールを失ったことが、事故調査で明らかになりました。

犠牲者

乗客55人と乗員7人、合わせて62人全員が死亡しました。乗客の中には子供4人も含まれていました。

事故調査

事故発生直後から、ロシアの国家間航空委員会（IAC）が中心となり、UAE、アメリカ、フランスの調査員も加わって事故調査が開始されました。調査では、フライトデータレコーダー（FDR）とコックピットボイスレコーダー（CVR）が回収され、解析されました。また、機体の残骸の調査や、パイロットの訓練状況、気象状況なども詳しく調べられました。

調査の結果、機体やエンジンに異常はなく、パイロットの操縦ミスと悪天候が重なり、事故につながったことが判明しました。

最終報告書

IACは2019年11月、最終報告書を発表しました。報告書では、事故原因を、着陸復行時に機体が不適切に設定されたこと、パイロットが夜間の計器飛行と悪天候下で状況認識を誤ったことと結論付けました。特に、着陸装置とフラップを格納した状態で最大推力を適用したため、機体が過剰な機首上げモーメントを生じたことが、事故の主要因とされました。

事故に対する反応

この事故を受け、ロシア政府は遺族に補償金を支払い、ロストフ地域では追悼日が設けられました。フライドバイも遺族支援センターを開設し、経済的支援を行いました。また、事故後、フライドバイはロストフ・ナ・ドヌ便を再開しましたが、981便の便名は欠番となりました。

事故調査の結果、安全管理体制の強化やパイロットの訓練、そして悪天候下での運航に関する基準の見直しが、航空業界全体で進められることになりました。

メーデー!:航空機事故の真実と真相

この事故は、ドキュメンタリー番組「メーデー!:航空機事故の真実と真相」の第20シーズン第1話「Holding Pattern」で映像化されました。

参考文献

国家間航空委員会 (2019年). “ОКОНЧАТЕЛЬНЫЙ ОТЧЕТ ПО РЕЗУЛЬТАТАМ РАССЛЕДОВАНИЯ АВИАЦИОННОГО ПРОИСШЕСТВИЯ”. 24 August 2021閲覧。

関連項目

タタールスタン航空363便墜落事故
アルマヴィア967便墜落事故

脚注

* 出典

この事故は、航空安全の重要性を改めて認識させられる悲劇であり、今後の航空事故防止に教訓を残すものとなりました。

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