フライング・タイガー・ライン

フライング・タイガー・ライン：貨物輸送のパイオニア

フライング・タイガー・ライン（Flying Tiger Line）は、かつて存在したアメリカの貨物専門航空会社です。その起源は、第二次世界大戦中に活躍したアメリカの義勇航空部隊「フライング・タイガース」のメンバーに遡ります。彼らが中心となり、戦後の1945年に設立されたのが、この航空会社の始まりでした。

設立と初期の展開

終戦直後の1945年、元フライング・タイガースの搭乗員10名が中心となり、ナショナル・スカイウェイ・フレイト（National Skyway Freight）として設立されました。当初は、戦争で余剰となったC-93輸送機を使用していましたが、翌年には部隊名にちなんで「フライング・タイガー」と社名を変更しました。1949年にはアメリカ国内での貨物航空路の運航が認可され、1950年代にはダグラスDC-4やDC-6などのプロペラ機を使用して大西洋横断貨物路線を運航しました。

また、1950年に勃発した朝鮮戦争では、アメリカ軍および国連軍向けの貨物チャーター便を多数運航し、兵站拠点である日本や朝鮮半島への物資輸送を担いました。その後も、民間貨物輸送だけでなく、世界各地に展開するアメリカ軍向けの貨物輸送（MACチャーター便）を数多く運航しました。

ジェット時代への突入と国際展開

1961年には、カナディアCL-44輸送機を導入し、パレットローディング方式を導入。1965年には初のジェット輸送機となるボーイング707貨物専用機を導入し、1974年にはボーイング747貨物専用機を導入しました。これにより、路線網は拡大し、輸送能力も大幅に向上しました。1960年代後半から1970年代前半にかけては、ベトナム戦争関連のMACチャーター便を多数運航しました。

1980年には、アメリカ第2位の貨物航空会社であったシーボード・ワールド航空を買収し、貨物専用機の運航数で世界一の航空会社となりました。1980年代中頃には、世界6大陸に貨物路線を広げ、国際的な航空貨物輸送の重要なプレーヤーとなりました。

日本での展開

日本には、成田国際空港や大阪国際空港などに、ボーイング747やダグラスDC-8貨物専用機を使用して多数の貨物便を運航しました。特に成田空港は、東アジア地域の拠点として多くの定期貨物便が運航され、日本と世界を結ぶ重要な役割を果たしました。

機体の特徴

フライング・タイガー・ラインの機体には、ボーイング社の顧客番号（カスタマーコード）として「49」が割り当てられました。新造機には、ボーイング747-249Fといった記号が付与されました。登録記号は「N**FT」が多く用いられました。

また、同社の貨物専用機は、機体表面に塗装を施さず、保護剤のみを塗布する「ポリッシュド・スキン」または「ベアメタル」と呼ばれる軽量化策が採用されていました。これは、他の航空会社（アメリカン航空、イースタン航空、ノースウエスト航空、日本航空、大韓航空など）の貨物機でも見られた特徴です。

終焉とその後

1980年代後半に入ると、アメリカ経済の停滞による貨物需要の減少、供給過剰、規制緩和による競争激化などから業績が悪化しました。1988年12月には、宅配便サービス大手のフェデックス・エクスプレスによる買収が発表され、1989年8月7日に統合され、「フライング・タイガー」の名称は消滅しました。

しかし、その精神は後継の航空会社に受け継がれています。元従業員らによって設立されたポーラーエアカーゴは、買収・合併を経て、現在ではアトラスエアとDHLの合弁会社として運航を行っています。同社の機体尾翼に描かれる「サークルP」デザインは、かつてのフライングタイガーの「サークルT」デザインを踏襲したものです。ポーラーエアカーゴやアトラスエアは、ボーイング747-8Fを運航しており、フライング・タイガーの意思を継承する存在となっています。

フリート（合併時）

ボーイング 747-100SF：8機（アメリカン航空、デルタ航空、コンチネンタル航空、パンアメリカン航空から購入。世界でも最初期のBCF（ボーイング・コンバーテッド・フレーター）例）
ボーイング 747-200F/SF：13機（1980年に自社発注機導入、その後シーボード・ワールド航空、カーゴルックス航空からの中古機が加わった。全機ともフェデックスに編入され、機体番号は変更されたが、一部を除いて旧フライング・タイガーの塗装にフェデックスのロゴが入れただけになった）
ボーイング 727-100：19機（全て元旅客型からの改修機、国内線で使用）
DC-8-73：6機

関連項目

航空事故
フライング・タイガー・ライン45便那覇沖墜落事故（1970年）
フライング・タイガー・ライン739便失踪事故（1962年）
フライング・タイガー・ライン66便墜落事故（1989年）

外部リンク

Flying Tigers Boeing 747 Fleet Detail
Flying Tiger Line Pilots Association
Annals of the Flying Tigers
* フライングタイガーライン資料室（運航の歴史） - ウェイバックマシン（2015年5月31日アーカイブ分）

もう一度検索