フラオルテス

フラオルテス：メディア王国の激動の時代を生きた王

フラオルテス（在位：紀元前665年頃 - 紀元前633年）は、メディア王国の第2代王として知られています。彼は、創始者デイオケスの息子であり、父の遺志を継いでアッシリアとの戦いを繰り広げました。

生涯

フラオルテスは、リディアへの遠征中に日食に遭遇し、ハリュス川の前で進軍を阻まれたという逸話が残っています。父の死後、王位を継承すると、アッシリアへの再度の侵攻を試みましたが、結果としてアッシリア王アッシュールバニパルに敗北し、命を落としました。彼の死後、メディアは一時的にスキタイ人の支配下に置かれることになります。

ヘロドトスは、フラオルテスの後継者をキュアクサレス2世と記録していますが、これは同名の王位請求者との混同であると考えられています。歴史的に知られるキュアクサレスは、フラオルテスより約1世紀前の人物です。

ヘロドトスの記述

ヘロドトスによれば、フラオルテスはキュアクサレスの息子であり、エクバタナで即位後、ペルシア人を服属させたとされています。ペルシア人はメディア王国において特別な地位を与えられ、ヘロドトスは「メディアとペルシアという二つの強大な部族を従え、フラオルテスは全アジアを支配した」と記述しています。

フラオルテスによるアッシリア攻撃は失敗に終わり、彼は戦死しました。その後、メディアは28年間スキタイ人の支配を受けました。ヘロドトスはフラオルテスの在位期間を22年間としていますが、当時の楔形文字史料による裏付けはありません。

同時代史料との比較

フラオルテスは、アッシリアの史料に登場するカシュタリタと同一人物であるという説がかつて有力でした。しかし、アッシリア語の「カシュタリタ」は、古代ペルシア語の「フシャタリタ」を転写したものであり、人名の短縮形であるフシャトラに由来し、ギリシア語の「キュアクサレス」に対応すると考えられています。「フシャタリタ」は個人名ではなく、「支配者」や「総督」を意味する一般名詞である可能性が高いです。一方、フラオルテスという名前はフラワルティシュという人名に由来し、これはカル・キッシュという都市の総督であったカシュタリタという人物と同一視できるという説もあります。

また、アッシリア王エサルハドンの紀元前674年の悪魔払い儀礼の文書には、カシュタリタという人物が登場します。この悪魔払いは、アッシリアがカシュタリタによって災厄をもたらされるというエサルハドンの悪夢に対するものでした。このカシュタリタをフラオルテスと同一人物とみなすことも可能です。

フラオルテスの治世は、メディア王国がアッシリアとの戦いを続け、その勢力拡大を目指した時代でした。彼の死後、メディアは一時的に衰退しますが、後継者キュアクサレスの時代に再び勢力を盛り返し、新バビロニア王国と協力してアッシリアを滅ぼすことになります。

フラオルテスは、メディア王国の歴史において重要な転換期を生きた王であり、その生涯は、当時の国際情勢や政治的駆け引きを理解する上で貴重な手がかりとなります。

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