キュアクサレス2世

キュアクサレス2世：メディア王国の興隆とアッシリア帝国の滅亡

キュアクサレス2世は、紀元前7世紀に栄えたメディア王国の君主として、その名声を歴史に刻んだ人物です。父王フラオルテスの死後、困難な状況の中で王位を継承した彼は、卓越した政治力と軍事力でメディア王国を繁栄へと導き、アッシリア帝国滅亡という偉業を成し遂げました。

スキタイからの独立と王国の再建

父王フラオルテスはアッシリアとの戦いで戦死し、その後メディア王国はアッシリアの同盟国であるスキタイ人の支配下に置かれました。キュアクサレス2世は、この厳しい状況下で王位に就きます。彼はまず、スキタイ人の支配からの解放を目指しました。ヘロドトスの記録によると、キュアクサレス2世はスキタイ人に対する巧みな外交と軍事改革によって、メディア王国の安定化を図りました。具体的には、軍隊を歩兵隊と弓兵隊に編成し、スキタイの騎馬戦術を効果的に取り入れることで、軍の近代化を推進しました。さらに、スキタイ文化の影響を受けた美術様式が、この時代のメディアの遺物から確認できることから、スキタイとの共存関係も築いていた可能性も示唆されます。こうして勢力を拡大したキュアクサレス2世は、スキタイとの決戦に臨み、勝利を収めます。スキタイの勢力はマンナエ地方へと後退し、メディア王国は独立を取り戻しました。

アッシリア帝国との戦い

スキタイからの独立を果たしたキュアクサレス2世は、次にアッシリア帝国への挑戦を開始します。彼は父王の遺志を継ぎ、アッシリア帝国討伐に乗り出しました。キュアクサレス2世は、アッシリアの首都ニネヴェへの直接攻撃ではなく、まず地方都市タルビシュを攻略することで、アッシリアへの侵攻を本格化させました。ちょうどその頃、南方のバビロニアでナボポラッサルが新バビロニア王国を建国し、アッシリア帝国への反乱を起こしていました。この状況を巧みに利用したキュアクサレス2世は、ナボポラッサルと同盟を結びます。両者の同盟は、キュアクサレス2世の娘アミュティスとナボポラッサルの皇太子ネブカドネザル2世の結婚によって固められました。

メディアとバビロニアの連合軍は、アッシリア軍をニネヴェに追い詰め、紀元前612年にニネヴェを陥落させました。アッシリア帝国の首都ニネヴェの陥落は、帝国滅亡の始まりを告げました。その後、メディアとバビロニアの連合軍はアッシリアの抵抗を徹底的に粉砕し、紀元前610年にはハッラーンを攻略、アッシリア帝国は完全に滅亡しました。

西方への遠征とリディアとの戦い

アッシリア帝国滅亡後、キュアクサレス2世は勢力拡大のため西方への遠征に乗り出しました。彼はウラルトゥ王国を滅ぼし、メソポタミア北部山岳地帯の支配を確固たるものとしました。さらに、アナトリア半島で台頭しつつあったリディア王国と衝突し、長期にわたる戦争に突入しました。この戦争は、リディア王アリュアッテスがスキタイ人を庇護したことが発端とされています。5年に及ぶ戦争は、紀元前585年、ハリュス川での戦闘中に発生した日食によって、突然の終結を迎えました。日食を不吉な兆候と捉えた両軍は、戦闘を停止し、講和条約を締結しました。この講和によって、ハリュス川がメディアとリディアの国境となり、両国の王族間の婚姻が成立しました。

キュアクサレス2世の死とその後

キュアクサレス2世は、紀元前584年に死去しました。彼の40年に及ぶ治世は、メディア王国の最盛期を築き、近隣諸国に大きな影響を与えました。彼の死後、息子のアステュアゲスが王位を継承しました。キュアクサレス2世の功績は、後のアケメネス朝ペルシア帝国の礎を築いたと言えるでしょう。彼の治世は、古代オリエント史における重要な転換期であり、その影響は現在まで及んでいます。

もう一度検索