フラッシュバック (物語)

フラッシュバックとは

物語におけるフラッシュバックは、語りの途中に過去の出来事のシーンを挿入する手法、または挿入されたシーンそのものを指します。後説法、回想シーンとも呼ばれ、物語の進行を一時中断し、過去の出来事を描写することで、物語に深みと複雑さをもたらします。

概要

物語は一連の出来事を語るものですが、必ずしも時系列順に語られるとは限りません。フラッシュバックは、物語の途中で過去の出来事を挿入することで、読者や視聴者に背景情報を提供したり、登場人物の心情を理解させたりする役割を果たします。反対に未来の出来事を挿入するフラッシュフォワードという手法も存在します。

フラッシュバックは、ストーリーの背景を補完し、キャラクターを掘り下げ、物語構造に変化をもたらすために使われます。例えば、ミステリー作品では、登場人物の過去の行動をフラッシュバックで示すことで、謎解きの鍵となったり、動機を明らかにしたりします。フィルム・ノワールやメロドラマなどでも、登場人物の複雑な過去や感情を描写するために、フラッシュバックが効果的に用いられます。

フラッシュバックは、内的後説法と外的後説法の2種類に分類できます。内的後説法は、物語の開始時点よりも後の過去を描写するものであり、外的後説法は、物語の開始時点よりも前の過去を描写するものです。

表現形式

フラッシュバックは、通常のシーンとは異なる特別なシーンであることを読者や視聴者に伝えるために、様々な表現形式が用いられます。例えば、以下のようなものがあります。

漫画: フレーム外色調（黒枠など）を使用したり、ナレーションを入れたりする。
映像: フレーム周囲をぼかしたり、セピア色やモノクロにしたり、フェードイン・フェードアウトなどのトランジション効果を用いたり、ナレーションを入れたりする。

これらの表現形式によって、読者や視聴者は、そのシーンが過去の出来事であることを認識し、物語の流れを理解することができます。

主要な例

フラッシュバックは、文学、映画、テレビドラマなど、様々なメディアで用いられています。

文学

古代文学: 『ラーマーヤナ』、『マハーバーラタ』、『オデュッセイア』、『千夜一夜物語』など。
16世紀: 『ウズ・ルジアダス』など。
近代以降: フォード・マドックス・フォード、ロバート・グレーヴス、ソーントン・ワイルダー、エリ・ヴィーゼルなどの作品。
現代: ハリー・ポッターシリーズなど。

映画

初期の例: 『ある犯罪の物語』（1901年）。
トーキー時代: 『市街』（1931年）。
代表的な作品: 『嵐が丘』（1939年）、『陽は昇る』（1939年）、『市民ケーン』（1941年）、『天国は待ってくれる』（1943年）、『羅生門』（1950年）、『ザ・シン・ブルー・ライン』（1988年）。
ミュージカル映画: 『回転木馬』（1956年）、『キャメロット』（1967年）。
その他: 『ラ・ジュテ』（1962年）、『女郎蜘蛛』（1921年）、『アンニー可愛や』（1925年）、『リバティ・バランスを射った男』（1962年）、『ひとり狼』（1968年）、『オペラ座の怪人』（2004年）、『野菊の如き君なりき』（1955年）、『対抗者』（1972年）、『ビリー・バスゲイト』（1991年）。
近年の作品: クエンティン・タランティーノ監督作品（『レザボア・ドッグス』、『パルプ・フィクション』、『キル・ビル』）。

テレビドラマ

* 『刑事コロンボ』、『ジェシカおばさんの事件簿』、日本の2時間サスペンスなど。

これらの作品では、フラッシュバックが物語の重要な要素として機能し、ストーリー展開や登場人物の心理描写に大きく貢献しています。

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