フランコクラティア

フランコクラティア（ラティノクラティア）とは

フランコクラティア（Φραγκοκρατία, Frankokratía）またはラティノクラティア（Λατινοκρατία, Latinokratía）は、ギリシアの歴史において、1204年の第4次十字軍以降に、かつてのビザンツ帝国領土に成立した、フランス系およびイタリア系の十字軍国家群を指す言葉です。それぞれ、「フランク人の支配」、「ラテン人の支配」を意味します。

また、特にヴェネツィア共和国の植民地を指して、ヴェネトクラティア（Βενετοκρατία, Venetokratía）またはエネトクラティア（Ενετοκρατία, Enetokratia）という言葉が用いられることもあります。

概要

ギリシア正教圏のギリシア人は、フランス人（フランク人）、ノルマン人、ヴェネツィア人など、カトリック教徒を「ラテン人」と呼んでいました。フランコクラティアという語が指す範囲は、厳密には定義されていません。当初は十字軍国家としての性格が強かったものの、支配層の交代やギリシア人による再征服など、さまざまな変遷をたどった国々が含まれるからです。

フランコクラティアのほとんどは、かつて一時的に復活したビザンツ帝国と同様に、14世紀から16世紀にかけてオスマン帝国に併合されました。これ以降のオスマン帝国による支配は、トルコクラティアと呼ばれます。ただし、イオニア諸島やヴェネツィア支配下の一部の要塞島は、19世紀まで独立を保ちました。

フランク・ラテン十字軍国家の例

以下に、フランコクラティアに分類される主な国家の例を挙げます。

ラテン帝国 (1204年–1261年)：コンスタンティノープルを首都とし、トラキアとビテュニアを支配しました。西欧の封建制と同様に、多数の十字軍封建国家がその支配下に成立しました。しかし、ビザンツ亡命政権との戦いで徐々に領土を失い、1261年にニカイア帝国の将軍アレクシオス・ストラテゴポウロスによってコンスタンティノープルを奪還され、滅亡しました。
テッサロニキ王国 (1205年–1224年)：モンフェッラート侯のもとでマケドニアとテッサリアを支配しました。第二次ブルガリア帝国の圧迫を受け、最終的にはエピロス専制侯国に征服されました。
アカイア公国 (1205年–1432年)：モレアス（ペロポネソス半島）を支配しました。ギリシアの十字軍国家の中でも特に強勢を誇り、ラテン帝国滅亡後も勢力を維持しました。ビザンツ帝国系のモレアス専制公領と対立し、次第にその勢力に飲み込まれていきました。
アテネ公国 (1205年–1458年)：テーバイとアテネを首都とし、アッティカ、ボイオーティア、南テッサリアを支配しました。1311年にカタルーニャ傭兵団に征服され、その後フィレンツェのアッチャイオーリ家の手に渡り、1456年にオスマン帝国に征服されるまで存続しました。
ナクソス公国（群島公国）(1207年–1579年)：サヌード家によって建国され、キクラデス諸島のほとんどを支配しました。1537年にオスマン帝国の属国となり、1579年に完全に併合されました。
ネグロポンテ三頭政治国 (1205年–1470年)：ネグロポンテ（現エヴィア島）を支配しました。ヴェネツィアの介入を招き、1390年までにその直接支配下に入りました。1470年にオスマン帝国に征服されました。
カンディア王国 (1211年–1669年)：ヴェネツィア領クレタ島。ヴェネツィア共和国の最重要植民地でありましたが、クレタ戦争の末、1669年にオスマン帝国に奪取されました。

これらの国家群は、ギリシアの歴史において、東西の文化交流や政治的な変遷に大きな影響を与えました。

参考文献

Bintliff, John (2012). “The Archaeology of Frankish-Crusader Society in Greece”. The Complete Archaeology of Greece: From Hunter-Gatherers to the 20th Century A.D.. John Wiley & Sons. pp. 416–435.
Bon, Antoine (1969) (French). La Morée franque. Recherches historiques, topographiques et archéologiques sur la principauté d'Achaïe. Paris: De Boccard.
Fine, John Van Antwerp (1994), The Late Medieval Balkans: A Critical Survey from the Late Twelfth Century to the Ottoman Conquest, University of Michigan Press
Miller, William (1908). The Latins in the Levant, a History of Frankish Greece (1204–1566)*. New York: E.P. Dutton and Company.

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