フランソワ・ルルー

フランソワ・ルルー（François Leleux、1971年 - ）は、フランス出身の著名なオーボエ奏者であり、近年は指揮者としても国際的に活躍しています。

若き才能、パリから世界へ

1971年にフランス北部のクロワに生を受けたルルーは、わずか6歳でオーボエを手にしました。その才能はすぐに開花し、14歳という異例の若さでパリ国立高等音楽・舞踊学校への入学を許可されます。そこでは、オーボエ界の巨匠ピエール・ピエルロやモーリス・ブルグから薫陶を受けました。卒業時には、オーボエと室内楽の両部門で審査員全員一致による首席を獲得するという輝かしい成績を収め、その将来性が嘱望されました。

18歳を迎える頃には、既にパリ・オペラ座管弦楽団の首席オーボエ奏者という要職に就任。さらにトゥーロン国際コンクールやミュンヘン国際音楽コンクールといった権威ある国際音楽コンクールでも第1位に輝き、ソリストとしての地位を不動のものとしていきました。1992年から2004年までの12年間は、世界有数のオーケストラであるバイエルン放送交響楽団の首席奏者として活躍。現在は、ヨーロッパ室内管弦楽団のソロ・オーボエ奏者として、その洗練された音楽性を披露しています。

多岐にわたる音楽活動

ルルーの活動はソリストや首席奏者にとどまりません。教育者としても熱心で、ミュンヘン音楽・演劇大学で教授を務め、次世代の育成にも力を注いでいます。

ソリストとしては、これまでにピエール・ブーレーズ、マリス・ヤンソンス、コリン・デイヴィス、チョン・ミョンフン、ダニエル・ハーディング、トーマス・ダウスゴー、ヴォルフガング・サヴァリッシュ、アラン・ギルバートといった錚々たる指揮者たちと共演。その活動はヨーロッパに留まらず、日本のオーケストラとも頻繁に共演しており、東京都交響楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団、大阪フィルハーモニー交響楽団などの定期演奏会でリヒャルト・シュトラウスのオーボエ協奏曲などを披露し、日本の音楽ファンを魅了しています。

室内楽においても精力的に活動しており、フルート奏者のエマニュエル・パユ、クラリネット奏者のポール・メイエらと共に結成した木管五重奏団「レ・ヴァン・フランセ」のメンバーとしても知られています。同アンサンブルでも度々来日し、各地で演奏会を行っています。また、ピアニストのイェフィム・ブロンフマンやヴァイオリニストのヴィクトリア・ムローヴァといった著名な音楽家とも共演。バッハのオーボエとヴァイオリンのための協奏曲は、ヴィクトリア・ムローヴァや諏訪内晶子といった高名なヴァイオリニストとそれぞれ録音を残しています。

録音活動も活発で、1995年にフランスのレーベル「Harmonia Mundi」から初のソロCDをリリースして以来、RCA、フィリップス、そして日本のフォンテックといった国内外の主要レーベルから、ソロ、室内楽、協奏曲など幅広いジャンルの録音を発表しています。特にモーツァルトのオーボエ協奏曲は2度録音するなど、オーボエの主要レパートリーに対する深い探求心を示しています。

マリゴとの揺るぎない関係

ルルーは、フランスの著名な管楽器メーカーであるマリゴ社のオーボエしか使用しないことでも知られています。マリゴ社は特定の奏者と専属契約を結ぶことを基本的には行わない方針で知られていますが、ルルーは同社にとって唯一の専属契約アーティストであり、この事実からも彼とマリゴ社の間の特別な関係性が伺えます。彼は単なる使用者にとどまらず、マリゴ社の新型オーボエ開発において重要なアドバイザーも兼任しています。特に、現代のオーボエ奏者から高い評価を得ている「M2」モデルや、人間工学に基づいた設計が特徴の「2000シリーズ」は、ルルーを含む複数のトップ奏者からの助言を受けて開発されたものであり、彼の楽器開発への貢献は大きいと言えます。

私生活では、著名なヴァイオリニストであるリサ・バティアシュヴィリを妻に持ち、音楽一家を築いています。

フランソワ・ルルーは、その超絶技巧と豊かな音楽性で世界中の聴衆を魅了し続けるだけでなく、教育者、そして楽器開発者としてもその影響力を広げており、現代オーボエ界における最重要人物の一人と言えるでしょう。

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