フランチェスコ・マリーア・デッラ・ローヴェレの肖像

フランチェスコ・マリーア・デッラ・ローヴェレの肖像

ティツィアーノ・ヴェチェッリオによって1536年から1538年にかけて制作された油彩画『フランチェスコ・マリーア・デッラ・ローヴェレの肖像』は、ルネサンス期のヴェネツィア派を代表する作品です。この肖像画は、ウルビーノ公爵フランチェスコ・マリーア1世・デッラ・ローヴェレの姿を描いており、彼の妻であるエレオノーラ・ゴンザーガの肖像画と対をなす作品として知られています。ティツィアーノの卓越した肖像画家としての技術が遺憾なく発揮されており、現在ではフィレンツェのウフィツィ美術館に所蔵されています。

制作の背景

1536年にウルビーノ公爵からティツィアーノに宛てられた書簡から、この肖像画がヴェネツィアで制作されたことが判明しています。公爵は、ティツィアーノに自身のドイツ風の甲冑を詳細に描いてもらうために、工房へ送ったとされています。1530年のボローニャでの戴冠式で、神聖ローマ皇帝カール5世から公に称賛された後、公爵の名声が高まったことが制作の背景にあります。

ティツィアーノは、ボローニャに滞在中にフランチェスコ・マリーアから肖像画の依頼を受けた可能性は低いとされています。近年のX線撮影により、ティツィアーノは以前に素描されていたキャンバスを再利用したことが明らかになりました。モデルを直接見ずに制作することも珍しくはなく、例えば、パラティーナ美術館の『ジュリア・ヴァラーノの肖像』も、画家へ送られた簡単な素描に基づいて描かれています。

エレオノーラ・ゴンザーガの肖像画は1536年1月に考案され、同年9月からヴェネツィアに滞在した際に制作されました。フランチェスコ・マリーアの肖像画は同年の春から夏に始まり、遅くとも1538年までに完成したと考えられています。ウフィツィ美術館には、公爵の全身像の素描が所蔵されていますが、これは、当初の構想が、女性の全身像の肖像画が一般的ではなかったために破棄された可能性を示唆しています。最終的に、作品はほぼ正方形の画面に、公爵の鎧を着た工房の見習いによる習作をもとに描かれたとされています。

作品の特徴

公爵のポーズは、かつてティツィアーノが制作したカール5世の肖像画（現在はエングレーヴィングのみで知られる）を想起させます。公爵は上半身像で描かれ、胴体をわずかにねじり、右手で司令官の杖を持ち、左腕を剣の柄の近くに伸ばしています。彼の視線は鑑賞者へと向けられ、頭部は暗い背景に配置されています。背景には赤いベルベットのドレープが配置され、その上には、ドラゴンの紋章、白い羽毛飾りを持つ兜、元帥の杖などが置かれています。これらの杖には、教皇領とフィレンツェ共和国の記章があり、オークの枝はデッラ・ローヴェレ家がウルビーノの領地を取得したことを象徴しています。

オークの枝には「SE SIBI」（「己のみ」の意）と記されたカルトゥーシュが巻かれており、これは公爵の意志を表明しています。4本の杖は、公爵が率いたヴェネツィア、フィレンツェ、教皇、そして自身の軍事的キャリアを象徴しています。

肖像画は、公爵の人間的な強さを際立たせ、肌の質感、顎髭、髪の毛、鎧の輝きなど、様々な素材の効果を巧みに表現しています。筆遣いは素材に合わせて変化し、羽毛は素早く、ベルベットは粗く、肌は厚く溶け合うように、鎧は滑らかなタッチで描かれています。

この作品は、ピエロ・デッラ・フランチェスカの『フェデリーコ・ダ・モンテフェルトロの肖像』と比較されることがあり、ウルビーノ公国の政治的、文化的変化を要約しています。ピエロの作品が明るく穏やかな小宇宙を描いているのに対し、ティツィアーノの作品は、公爵が軍事的シンボルに囲まれた空間に描かれ、大陸間帝国の脅威を感じさせるものとなっています。

来歴

1537年、ヴェネツィアで未完成の肖像画を見たピエトロ・アレティーノは、ヴェロニカ・ガンバラへの手紙でこの作品を賞賛しました。彼は、肖像画が公爵のしわ、髪、兆候だけでなく、魂の活力までを示していると述べています。

公爵の肖像画は、1538年春に『エレオノーラ・ゴンザーガの肖像』と共にペーザロのドゥカーレ宮殿に届けられました。その後、17世紀にウルビーノ公国の最後の子孫であるヴィットーリア・デッラ・ローヴェレが、フェルディナンド2世・デ・メディチと結婚した際に、持参金の一部としてフィレンツェに移されました。

参考文献

Fossi, Gloria (2004). Uffizi. Firenze: Giunti.
Gibellini, Cecilia, ed (2003). Tiziano (I Classici dell'arte ed.). Milano: Rizzoli.
Kaminski, Marion (2000). Tiziano. Colonia: Könemann.
Valcanover, Francesco (1969). L'opera completa di Tiziano. Milano: Rizzoli.
Zuffi, Stefano (2008). Tiziano. Milano: Mondadori Arte.
イアン・G・ケネディー『ティツィアーノ』Kazuhiro Akase 訳、Taschen、2009年。

関連項目

エレオノーラ・ゴンザーガの肖像
リンゴを持つ青年

外部リンク

* 公式サイト, ティツィアーノ・ヴェチェッリオ『フランチェスコ・マリーア・デッラ・ロヴェーレの肖像』

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