フルートと管弦楽のためのコンチェルティーノ (シャミナード)

フルートと管弦楽のためのコンチェルティーノ ニ長調 作品107

概要

『フルートと管弦楽のためのコンチェルティーノ』ニ長調 作品107は、フランスの女性作曲家セシル・シャミナード（Cécile Chaminade, 1857-1944）が1902年に作曲した、フルートとオーケストラのための単一楽章の作品です。この作品は「コンチェルティーノ」、すなわち小協奏曲という形式をとっています。

本作は、パリ音楽院のフルート科修了コンクールにおける課題曲として委嘱され、書かれました。後に作曲者自身の手により、ピアノ伴奏版も作成されています。シャミナードの数ある作品の中でも特に広く知られており、その親しみやすい旋律と楽器の特性を活かした技巧的なパッセージにより、フルートの重要なレパートリーとして、また初級・中級者からプロに至るまで多くのフルート奏者に愛されるスタンダード曲となっています。

楽曲について

このコンチェルティーノは、全体を通して切れ目なく演奏される単一楽章形式で構成されています。テンポはモデラート、主調は明るいニ長調です。

曲は、ファゴット、チェロ、コントラバスによる穏やかな2小節の導入で静かに幕を開けます。すぐにソロ・フルートが登場し、優雅で歌謡的な第一主題を提示します。この主題は、イ長調、続いて変ロ長調へと転調しながら発展し、様々な装飾を加えて次第に盛り上がりを見せます。オーケストラ全体（トゥッティ）が加勢し、主題は再びニ長調に戻って、オクターヴ上で高らかに響き渡ります。

トゥッティによる第一主題のこだまがピアニッシモまで静まり消えようとする瞬間、ソロ・フルートはヴァイオリンの繊細なトレモロを背景に、対照的な性格を持つ第二主題を歌い始めます。この第二主題の主要な動機は、その後ソロ・フルートとオーケストラのオーボエやヴァイオリンとの間で、まるで会話をするかのように巧みにやり取りされます。その後、ソロ・フルートがこの第二主題をより表情豊かに奏で、楽曲は中間部へと進みます。

中間部は、イ短調に転じ、ソロ・フルートによる技巧的なパッセージが主体となります。分散和音や半音階を駆使した装飾的で華麗な走句が展開され、弦楽器のピッチカート伴奏に乗って、ソロ・フルートは2オクターヴにわたる半音階を驚くべきスピードで駆け上がります。そしてフォルティッシモで一つの区切りをつけると、オーケストラがこれに代わって、第一主題に基づいた楽句をイ短調で力強く奏で始めます。この部分は、楽曲全体に展開部としての性格を与えています。

続いて、ソロ・フルートのためのカデンツァが挿入されます。このカデンツァは、第一主題の旋律に基づいた比較的短いものですが、ソロ奏者の技巧を示す重要なパートです。カデンツァが終わると、再びニ長調の再現部へと接続され、ソロ・フルートが冒頭の優雅な第一主題を再び歌い上げます。この主題は再び徐々に盛り上がりながら繰り返され、オーケストラがフォルテで応えることで曲は最高潮に達します。

曲は一気に速度を速めてプレストとなり、華やかなコーダへと突入します。ソロ・フルートは分散和音やトリルなど、輝かしい技巧的な走句を惜しみなく披露します。オーケストラは第一主題の断片を奏でながら、ソロ・フルートをサポートし、この愛らしくも華麗なコンチェルティーノは、ニ長調の明るい響きの中で華やかに締めくくられます。

編成

この作品は以下の編成で演奏されます。

木管楽器：フルート2（うち1人はピッコロに持ち替え）、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2
金管楽器：ホルン4、トロンボーン3、テューバ1
打楽器：ティンパニ
弦五部
* ハープ

演奏時間

演奏時間は約8分程度です。

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