フレデリック・スペンサー (第4代スペンサー伯爵)

スペンサー伯爵フレデリック・スペンサー

第4代スペンサー伯爵フレデリック・スペンサー（1798年4月14日 - 1857年12月27日）は、19世紀イギリスの貴族、海軍軍人、そして政治家でした。彼は、後のダイアナ元皇太子妃の高祖父にあたる人物として知られています。

第2代スペンサー伯爵ジョージ・スペンサーと夫人ラヴィニアの五男として、1798年にロンドンのイギリス海軍本部庁舎で生を受けました。幼少期は、1808年から1811年にかけて名門イートン校で学び、その後王立海軍に士官候補生として入隊します。

彼の海軍でのキャリアは、激動の時代と共に始まりました。ナポレオン戦争中の1811年から1815年にかけて、地中海を舞台に実戦を経験します。さらに1827年には、ギリシャ独立戦争におけるナヴァリノの海戦に参加し、そこで顕著な功績を挙げたことにより、バス勲章（コンパニオン級）を受勲しました。翌1828年には、この戦功が認められ、ロシア帝国から聖アンナ勲章、フランスから聖ルイ勲章騎士章、ギリシャからも救世主勲章が贈られるなど、国際的にもその活躍が評価されました。同年の11月には、モレア遠征にも従軍しています。晩年には、海軍における最高位の一つである中将の階級に昇進しました。

軍務と並行して、彼は政治の世界にも足を踏み入れます。1831年には、ウスターシャー選挙区からホイッグ党の候補者として出馬し、庶民院議員に初当選しました。その後、1832年から1834年までミッドハースト選挙区選出の議員となり、さらに1837年から1841年まで再び同選挙区から再選されています。

政治活動と貴族としての地位を活かし、宮廷や政府でも要職を歴任しました。1840年から1845年まで、ヴィクトリア女王の生母であるケント公妃ヴィクトリアの侍従を務めました。1845年10月1日には、兄である第3代スペンサー伯爵ジョン・スペンサーの死去に伴い、第4代スペンサー伯爵位を継承し、貴族院議員となります。これ以降、1845年まで使用していた「フレデリック・スペンサー閣下（The Honourable Frederick Spencer）」という儀礼称号は使われなくなりました。伯爵位継承後、1846年から1848年まで宮内長官を務め、この期間中の1846年7月8日には枢密顧問官（PC）に列せられました。1847年にはランカスター公領会議の議員にも選ばれています。学術面では、1847年7月5日にケンブリッジ大学から名誉法学博士号（LL.D.）を授与されました。1849年3月23日には、イギリスの最高勲章の一つであるガーター勲章を受勲しています。晩年の1854年から1857年にかけては、家政長官として国王の家政を取り仕切る重要な役割を担いました。

フレデリック・スペンサーは生涯に二度結婚しました。最初の妻はジョージアナ・ポインツで、1830年2月に結婚し、3人の子供をもうけました。長女ジョージナ・フランセス（1832-1852）、長男ジョン（1835-1910、後に第5代スペンサー伯爵を継承）、次女サラ・イザベラ（1838-1919）です。ジョージアナの死別後、1854年8月にアデレイド・ホラティア・エリザベス・シーモアと再婚し、さらに2人の子供を授かりました。三女ヴィクトリア・アレクサンドリナ（1855-1906）と、次男チャールズ（1857-1922、後に兄の死去により第6代スペンサー伯爵を継承）です。

多忙な公務と軍務、そして貴族としての役割を果たし、1857年12月27日に死去しました。彼の生涯は、海軍での輝かしい功績、政治家としての貢献、そして英国貴族社会における重要な役割によって特徴づけられます。特に、第5代伯爵となる長男ジョンを通じて、彼の血筋は後のダイアナ元皇太子妃へと繋がっていくことになります。

もう一度検索