フロム・ファーストビル

フロム・ファーストビルは、東京都港区南青山五丁目に位置する、総合的なライフスタイルを提案する複合ビルです。この建物は、単なる商業施設を超え、1970年代の東京に新しい風を吹き込んだ先駆的な存在として、その名を歴史に刻んでいます。

建築とプロデュースの背景

建築家・浜野安宏は、ロケット開発の先駆者である糸川英夫博士との出会いを通じて、生活産業への転身を促されました。太平洋炭鉱を母体とする太平洋興発が、生活産業への進出を模索していた時期に、浜野商品研究所が全面的に指導することとなり、その第一歩として「FROM 1st」が提案されました。当時、みゆき通りには店舗がほとんどなく、表参道も数軒の土産物屋がある程度だった時代に、この場所が選ばれたことは、その後のこのエリアの発展を大きく左右することになります。

「Work Live With Joy」

「Work Live With Joy」を合言葉に、新しいライフスタイルを提案するビルとしてFROM 1stは誕生しました。そのコンセプトは、今日のストリートカルチャーの隆盛にも影響を与えたと言えるでしょう。

建築の特徴

山下和正が設計を担当したこの建物は、外壁にレンガタイルを使用し、細かなセットバックと、上部に45度の傾斜をつけたハイサイドライトが特徴的です。建物内部はスキップフロアや渡り廊下が複雑に入り組んだ回廊のような構造になっており、訪れる人に独特の空間体験を提供します。

立地と入居テナント

青山通りの表参道駅南東側、表参道交差点からみゆき通りを300mほど進んだ場所に位置し、青南小学校の真向かいにあります。フランス料理店「フィガロ」をはじめ、今治タオル専門店、花屋、高級ブランドのブティックやジュエリーショップなど、多様な店舗が入居しています。フロム・ファーストビルの登場が、この界隈にファッションやインテリア関連のショップが増えるきっかけとなったことは特筆すべきでしょう。

開発と評価

開発・所有は、釧路市を拠点とした炭鉱会社である太平洋興発です。フロム・ファーストビルは、2007年にDOCOMOMO Japanによって、日本におけるモダン・ムーブメントの建築の一つに選定されました。また、山下和正はこの建物の設計により、1976年に第28回日本建築学会賞作品賞を受賞しています。これらの事実は、フロム・ファーストビルが建築史的にも非常に重要な価値を持っていることを示しています。

ロケ地としての側面

フロム・ファーストビルは、数々のドラマのロケ地としても利用されてきました。山口百恵主演のドラマ『赤い絆』（1977-78年）では、1階の店舗がブティックとして使われ、水谷豊主演のドラマ『相棒』では、フランス料理店「フィガロ」が撮影に使われました。

これらの情報から、フロム・ファーストビルは、単なる商業施設ではなく、建築、デザイン、文化、歴史といった多くの要素が複合的に絡み合った、非常に価値のある存在であることがわかります。その独創的な空間は、今も多くの人々を魅了し続けています。

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