フロリダ・パンサーズ

フロリダ・パンサーズは、アメリカ合衆国フロリダ州サンライズを拠点とする、ナショナルホッケーリーグ（NHL）加盟のプロアイスホッケーチームです。

歴史

創設と初期の挑戦

チームの歴史は、1992年に著名な実業家であるウェイン・ハイゼンガ氏がマイアミにNHLフランチャイズ権を得たことから始まりました。創設初期には、ニューヨーク・レンジャースから移籍したベテランゴーリー、ジョン・バンビースブルックや、期待の新人ロブ・ニーダーマイヤー、そしてシーズン30ゴールを達成したスコット・メランビーといった選手がチームを牽引しました。拡張によって誕生したチームとしては異例の速さで競争力をつけ、最初のシーズン（1993-94）は惜しくも1ポイント差でプレーオフ進出を逃すなど、その後の躍進を予感させる船出となりました。

奇跡のシーズンと初のスタンレーカップ決勝進出

1994-95シーズンも僅差でプレーオフを逃した後、監督交代を経てダグ・マクレーン氏が就任します。この頃、「ラットトリック」と呼ばれる興味深い出来事がチームを後押ししました。ある試合前、スコット・メランビーがロッカールームに現れたネズミをスティックで仕留めたところ、その試合でチームが快勝。これ以降、得点が入るたびに観客がリンクにおもちゃのネズミを投げ入れるというユニークな応援スタイルが生まれ、チームに勢いをもたらしました。

そして迎えた1995-96シーズン、バンビースブルックの目覚ましい活躍に加え、ベテランと若手有望株（ドラフト全体1位のエド・ジョバノフスキ、ラデック・ドボラクら）が融合。トレード期限間際にはレイ・シェパードを獲得するなど補強も成功し、チームは創設3年目にして初のプレーオフ進出を果たします。プレーオフでは、ボストン・ブルーインズ、フィラデルフィア・フライヤーズ、そしてピッツバーグ・ペンギンズといった強豪を次々と破り、歴史的な快進撃を見せました。フロリダ州全体が熱狂に包まれる中、チームはスタンレーカップ決勝へ駒を進めます。決勝の相手は、同じく初優勝を目指すコロラド・アバランチでした。全ての試合が接戦となる激闘の末、第4戦の延長に失点を許し、惜しくもタイトル獲得はなりませんでした。

一時的な低迷と新たな試み

スタンレーカップ決勝進出の翌シーズンは怪我に泣かされ、プレーオフ1回戦で敗退。続くシーズンも怪我人が続出し、チームは成績不振に陥ります。1998年には、本拠地をサンライズに建設された新アリーナ（名称は変遷）へ移転しました。

1999年には、大型トレードによって「ロシア製ロケット」の異名を持つ世界的スター選手、パーヴェル・ブレを獲得。彼の圧倒的な得点力（2000年には58ゴール）を武器に、2000年には再びプレーオフに進出しますが、この年の優勝チームであるニュージャージー・デビルスに敗れました。しかし、ブレの弟ワレリー・ブレもチームに加わったものの、チーム全体の成績は低迷が続き、2002年のトレード期限にパーヴェル・ブレはレンジャースへ移籍しました。

長期低迷期のドラフト戦略

その後も数年間は低迷期が続きましたが、その代わりにドラフト上位指名権を多く獲得する機会に恵まれました。この時期に、スティーブン・ワイス（2001年全体4位）、ジェイ・ボウミースター（2002年全体3位）、ネイサン・ホートン（2003年全体3位）といった後の主力となる有望な若手選手を多数獲得しました。オリ・ヨキネンやロベルト・ルオンゴといった中心選手も活躍しましたが、ルオンゴは契約問題からバンクーバーへトレードされました。その後、トレードでトーマス・ヴォークーンといったトップクラスのゴーリーを獲得するなど、チーム強化を図りますが、成績はなかなか上向きませんでした。

12年ぶりのプレーオフと地区優勝

2011-12シーズン、新たな監督ケビン・ディニーン氏のもと、長年チームを支えてきたスティーブン・ワイスに加え、ブライアン・キャンベルやトーマス・フライシュマンらを補強し、チーム力が向上しました。粘り強い戦いを展開し、レギュラーシーズン最終盤で12年ぶりのプレーオフ進出を決めます。さらに、シーズンを負け越しながらも、チーム創設以来初となる地区優勝（カンファレンス3位）という快挙を達成しました。プレーオフでは第2戦で15年ぶりの勝利を挙げますが、最終的にニュージャージー・デビルスとの第7戦までもつれ込む激闘の末、1回戦で敗退しました。

近年の躍進

2021-22シーズンには、圧倒的なレギュラーシーズンを送り、チーム史上最高となる勝ち点122を記録し、初のプレジデンツトロフィー（レギュラーシーズン最高成績チームに与えられる賞）を獲得しました。プレーオフでは26年ぶりに1回戦を突破しましたが、2回戦でタンパベイ・ライトニングにストレートで敗退しました。

そして2022-23シーズン、レギュラーシーズンの勝ち点はプレーオフ進出チーム中最低でしたが、プレーオフに入ると快進撃を開始します。1回戦では、この年のプレジデンツトロフィー獲得チームであるボストン・ブルーインズを破る番狂わせを演じ、勢いそのままに2回戦、カンファレンス決勝も勝ち上がり、27年ぶり2度目のスタンレーカップ決勝進出を果たしました。決勝では第3戦でチームとして初の決勝での勝利を挙げましたが、最終的にベガス・ゴールデンナイツに1勝4敗で敗れ、またも優勝には届きませんでした。過去2回の決勝はいずれも相手チームに初のスタンレーカップ優勝を譲る結果となりました。

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