タンパベイ・ライトニング

タンパベイ・ライトニング（Tampa Bay Lightning）は、アメリカ合衆国フロリダ州タンパを本拠地とする、ナショナルホッケーリーグ（NHL）所属のプロアイスホッケーチームです。

創設と初期の困難（1990年代）

ライトニングは1992年にNHLのエクスパンション（球団拡張）によって誕生しました。チーム運営の専門家が不足していたため、初期のフロント陣にはフィル・エスポジトやトニー・エスポジトといったホッケー界の伝説的な選手を起用し、ヘッドコーチにはスタンレー・カップ優勝経験を持つテリー・クリスプを迎えました。

1992年10月7日に行われた初試合では、シカゴ・ブラックホークス相手に7対3で勝利。当時無名だったクリス・コントスが4ゴールを挙げ、チームの歴史に名を刻みました。チームは序盤こそ地区首位争いに加わりましたが、最終的には最下位に終わります。それでも、創設初年度に挙げた勝ち点53は、当時のエクスパンションチームとしてはNHL史上でも比較的優れた成績でした。ブライアン・ブラッドリーが42ゴールを挙げる活躍を見せています。

翌1993年は、チーム力強化のためゴーリーのダレン・プッパ、得点力のあるペトル・クリーマ、ベテランのデニ・サヴァールらを獲得。プッパの加入で失点は大幅に改善されましたが、サヴァールは全盛期を過ぎており、クリーマの攻撃力も守備の課題で相殺される形となり、再び地区最下位となりました。

設立4年目の1996年シーズンには、チーム得点王のブラッドリー、加入2年目のアレクサンダー・セリヴァノフ、ドラフト1位指名で年度のオールスターに選ばれたロマン・ハムリクらの活躍により、チームは初のプレーオフ進出を果たします。フィラデルフィア・フライヤーズとの第1ラウンドは敗退しましたが、このシリーズで行われた試合には当時のNHL史上最多観客動員数を記録しました。

初のプレーオフ進出後、チームはデトロイト・レッドウィングスからベテランストライカーのディーノ・シサレッリを獲得するなど補強を進め、プレーオフ返り咲きを目指します。しかし、プッパとブラッドリーが相次いで負傷し、中心選手のジョン・カレンに癌が見つかる（後に回復）といった困難に見舞われ、1997年はプレーオフを逃します。

1998年以降、主要選手たちがフリーエージェントやトレードでチームを離れ、若手選手が育つまでチームは数年間の低迷期に入ります。この間、ヘッドコーチの交代もありました。深刻な不振の最大の要因は、不安定なオーナーシップにありました。創設時の日本の共同企業体が債務不履行を起こすと、そのメンバーであった国際グリーンが支配権を握りますが、チームの財政難に加え、日本の暴力団による資金洗浄への関与が噂されるなど、経営面での問題が常に指摘されていました。チームは慢性的な赤字に苦しみ、オーナーシップは誰が握っているのかすら関係者にも不明瞭な状況でした。6年間で1億ドル以上の損失を計上した後、チームは1998年に保険業を営むアート・ウィリアムズに売却されます。しかし、ウィリアムズもわずか1年でチーム経営から撤退し、1999年春にNBAデトロイト・ピストンズのオーナー、ビル・デビッドソンに売却されました。

初の栄光と再建期（2000年代）

オーナーシップが安定した2000年代に入ると、チームは徐々に力をつけます。ゴーリーのニコライ・ハビブリン、マルタン・サンルイ、ヴァンサン・ルキャヴァリエ、ヴァーツラフ・プロシュパルといった選手たちが台頭し、2003年には南東地区首位となり、7シーズンぶりにプレーオフ進出を果たしました。1回戦ではワシントン・キャピタルズを相手に2連敗から盛り返し、第6戦ではマルタン・サンルイが3度の延長戦で決勝ゴールを決めるという劇的な勝利で勝ち上がりましたが、第2ラウンドでニュージャージー・デビルスに敗退しました。

そして2004年シーズン、ライトニングは東カンファレンスをトップの成績で通過し、チーム史上最多となるシーズン106ポイントを獲得しました。マルタン・サンルイはこの年のハート記念賞（シーズンMVP）に輝いています。プレーオフでは、1回戦でニューヨーク・アイランダーズ、2回戦でモントリオール・カナディアンズを破り、東カンファレンス決勝ではフィラデルフィア・フライヤーズを4勝3敗で破り、クラブ史上初のスタンレー・カップ決勝進出を果たしました。

2004年6月7日、ライトニングはカルガリー・フレームスを4勝3敗で下し、創設以来初のスタンレー・カップ優勝を成し遂げました。プレーオフで26ポイントを挙げたブラッド・リチャーズは、プレーオフMVPにあたるコーン・スマイス賞を受賞しました。

しかし、優勝メンバーであるニコライ・ハビブリンが退団すると、控えだったジョン・グラアムや新加入のショーン・バークがゴールマウスを守ることになりますが、ハビブリンほどの安定感には欠け、チームは再び低迷期に入ります。2004-05シーズンのNHLロックアウトを挟んだ後、チームはカンファレンス8位、7位と苦戦し、いずれのシーズンもプレーオフ1回戦で敗退しました。さらに2007-08シーズンは深刻な不振に陥り、トレード期限直前にチームに貢献したブラッド・リチャーズを放出し、再建の方向へ舵を切ります。同オフのドラフトでは、全体1位でスティーブン・ステムコスを獲得し、彼をチームの中心とする新体制づくりが始まりました。2008-09シーズン、ステムコスは23ゴールにとどまりましたが、翌2009-10シーズンには50ゴールを挙げるブレイクを果たしました。また、2009年には長年チームを支えたオーナー、ビル・デビッドソンが死去しました。

再び頂点へ、そして連覇（2010年代以降）

2010-11シーズンにGMがスティーブ・アイザーマンに交代すると、効果的な補強が実を結び、チームは4シーズンぶりにプレーオフに進出。シドニー・クロスビーらを欠くピッツバーグ・ペンギンズを破るなど健闘し、アイザーマンは最優秀GM賞のファイナリストに選ばれました。

2014-15シーズンには、東カンファレンス決勝で前シーズンの王者であるニューヨーク・レンジャーズを破り、11シーズンぶりに東カンファレンス優勝。スタンレー・カップ決勝ではシカゴ・ブラックホークスに敗れましたが、再び頂点に迫りました。

2018-19シーズンはレギュラーシーズンで圧倒的な強さを見せ、チーム記録となる62勝、128ポイントを記録しました。しかし、プレーオフ1回戦でコロンバス・ブルージャケッツ相手にまさかの4連敗を喫し、早期敗退という衝撃的な結果に終わります。

この悔しさを糧に、2019-20シーズンは新型コロナウイルスの影響でシーズンが中断・短縮される異例の状況下でしたが、チームは集中力を保ち、プレーオフへ。ブルージャケッツ、ボストン・ブルーインズ、ニューヨーク・アイランダーズを破って5シーズンぶりにスタンレー・カップ決勝へ駒を進め、ダラス・スターズを4勝2敗で下し、16シーズンぶり2度目のスタンレー・カップ優勝を果たしました。

続く2020-21シーズンは、パンデミックの影響で特例的に4地区制が導入され、ライトニングは中地区に所属しました。地区3位でプレーオフに進出し、フロリダ・パンサーズ、カロライナ・ハリケーンズ、アイランダーズを破って2シーズン連続でスタンレー・カップ決勝に進出。モントリオール・カナディアンズを4勝1敗で下し、クラブ史上初となるスタンレー・カップ連覇を達成しました。

タンパベイ・ライトニングは、創設初期の経営難や低迷期を乗り越え、2度の連続優勝を含む3度のスタンレー・カップ獲得という輝かしい実績を残し、NHLを代表する強豪チームの一つとしてその地位を確立しています。

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