フーズ・フォーラス

株式会社フーズ・フォーラスについて

株式会社フーズ・フォーラス（Foods Forus）は、かつて存在した日本の企業で、石川県金沢市に本社を置き、焼肉レストランチェーン「焼肉酒家えびす」を経営していました。

概要

創業者の勘坂康弘氏が脱サラ後に「焼肉酒家えびす」を創業しました。一皿100円の豚バラや280円の和風ユッケなどの低価格メニューを売りに、業績を急速に拡大させました。北陸3県と神奈川県の郊外を中心に店舗を展開していました。

社名は「Food for us」を意味し、「得るより与えよ」を企業理念としていました。創業当初は、勘坂氏の家族が店を運営しており、父親が駐車場整理、母親が厨房での皿洗いを行うなど、家族ぐるみでの経営が行われていました。また、取締役や監査役に社長の一族が就任している同族企業（非公開会社）でした。

2008年までに店舗数は富山、石川、福井の3県で10店舗でしたが、2009年以降急拡大し、2010年7月には横浜市に初出店し、神奈川県を含めた4県で計20店舗にまで拡大しました。石川県内には、「焼肉茶屋恵比須」という類似の店名を持つ焼肉店がありますが、フーズ・フォーラスとは無関係です。

しかし、2011年4月下旬に複数の店舗でユッケによる集団食中毒事件が発生し、全店が営業を中止しました。その後、営業を再開することなく、同年6月には従業員全員を解雇、7月には廃業となりました。

その後、フーズ・フォーラスは債権放棄や債権者会議を経て、被害者優先の返済計画が承認されました。2012年2月10日に金沢地方裁判所から特別清算開始決定を受けましたが、債権者との協定成立の見通しが立たず、最終的には2023年3月28日に破産手続き開始決定を受けました。2024年1月9日には破産手続きが終結し、債権者への配当が行われました。

沿革

1997年5月：富山県高岡市に「焼肉酒家えびす高岡駅南店」を開店。
1998年9月：資本金300万円で有限会社フーズ・フォーラスを設立。
2000年12月：資本金を1000万円に増資し、株式会社フーズ・フォーラスに組織変更。
2006年12月：本社を高岡市から石川県金沢市に移転。
2011年4月：ユッケ集団食中毒事件発生。
2011年7月8日：廃業。会社解散、清算手続きに移行。
2012年2月10日：金沢地方裁判所に特別清算を申し立て。負債総額17億7800万円。
2023年3月28日：金沢地方裁判所から破産手続開始決定。
2024年1月9日：破産手続き終結。

不祥事

ユッケ集団食中毒事件

2011年4月21日以降、「焼肉酒家えびす」の複数の店舗で、ユッケなどを食べた客181人が腸管出血性大腸菌O-111による食中毒を発症し、5人が死亡、24人が重症となる深刻な事態となりました。1996年にO-157などの大腸菌による食中毒が流行したことで、食品衛生法上の知識と対策が周知されていたにも関わらず、飲食チェーン店で3名以上が死亡する集団食中毒が発生したことは、非常に重大な問題として捉えられました。

富山県は、県内の2店舗に対し食品衛生法に基づく営業停止命令を下し、その後、無期限の営業禁止処分としました。これを受け、フーズ・フォーラス社は全店舗の営業を停止し、その後、営業を再開することなく廃業しました。

原因

食中毒患者の96%がユッケを食べていたことが判明しました。原因菌は店舗で発生したものではなく、配送前の肉に付着していた腸管出血性大腸菌O-111であることが特定されました。店舗で保管されていた未開封の肉からもO-111が検出され、患者から検出された菌と遺伝子パターンが一致しました。O-157も検出されましたが、一部の患者のみであり、保管肉からも検出されなかったため、O-157は原因菌ではないと判断されました。フーズ・フォーラスは肉の輸送には関与していませんでした。

「焼肉酒家えびす」は、大和屋商店から生食用牛肉を仕入れており、大和屋商店は埼玉県内の食肉市場から牛肉を仕入れていました。警察は大和屋商店と食肉市場に対して家宅捜索を行いましたが、菌は検出されませんでした。

「焼肉酒家えびす」と大和屋商店の問題点

「焼肉酒家えびす」

客に提供する前に肉のトリミングや衛生検査を行っていなかった。
売れ残ったユッケを翌日も客に提供していた。

大和屋商店

冷蔵庫が狭く、肉が接触した状態で保存されていた。
レバー用とその他の肉用で包丁やまな板を使い分けていなかった。
トリミング処理をしていない肉を「歩留まり100%で無駄がない」と生食用として出荷していた。
本来は生食用ではない牛肉を生食用として卸していた。

被害者

食中毒患者：181名
患者の都道府県別：富山県175名、福井県4名、石川県1名、神奈川県1名
溶血性尿毒症症候群を発症した重症者：32名
重症者の年代別：10歳未満7名、10代15名、20代6名、40代1名、60代1名、70代1名、不明1名
死亡者：5名
死亡者の都道府県別：富山県4名（砺波店）、福井県1名（福井渕店）

事件の経過

4月21日～26日：複数店舗でユッケを食べた客が食中毒症状を発症。
4月27日：福井県で6歳男児が死亡。富山県が2店舗を営業停止処分。
4月29日：富山県で6歳男児が死亡。フーズ・フォーラス社が全店を営業自粛。
5月2日：富山県警が捜査本部を設置。
5月4日：富山県で40代女性が死亡。
5月5日：富山県で70代女性が死亡。
5月7日：合同捜査本部がフーズ・フォーラス本社や大和屋商店を家宅捜索。
5月15日：死者4人を含む171人が食中毒を発症。
5月16日：横浜市の店舗から未開封の牛肉からO-111検出。
6月8日：資金繰り悪化により営業再開を断念、従業員を解雇。
7月8日：会社解散、清算手続きへ。
7月15日：全店舗を同業者に売却。
10月22日：入院中の少年が死亡し、死者5人となる。

廃業とその後

フーズ・フォーラスは、巨額の賠償金を確保するため、営業再開を模索しましたが、保健所の許可を得られず、資金繰りの悪化から営業再開を断念しました。2011年7月8日に会社を解散し、清算手続きに入りました。店舗施設は、ガソリンスタンド経営会社に売却され、焼肉店チェーン「ヴイ・ブリアン」として営業を開始しましたが、同社も後に経営が悪化し、全店閉鎖となりました。

食中毒事件の被害者からは、フーズ・フォーラスに対し約6億8993万円の債権届出がなされました。しかし、フーズ・フォーラスの預金は銀行の貸付金と相殺され、被害者への優先的な配分は実現しませんでした。フーズ・フォーラスは、牛肉の納入元である大和屋商店に対して損害賠償請求を行いましたが、調停は不調に終わり、裁判へと移行しました。

2016年、フーズ・フォーラスの元社長と大和屋商店の元役員が業務上過失致死傷容疑で書類送検されましたが、不起訴処分となりました。その後、検察審査会で不起訴不当の議決が出ましたが、再捜査後も再び不起訴となり、捜査は終結しました。その後、フーズ・フォーラスは破産手続きに移行しました。

事件の影響

この事件により、多くの焼肉店や朝鮮料理店でユッケの提供が自粛されるようになりました。また、厚生労働省の基準を満たす生食用牛肉が国内で出荷されていないことが広く知られるようになりました。

事件を受けて、2011年10月1日に生食用牛肉の処理に関する基準が改定され、微生物検査の義務化、加工設備の区分け、加熱処理などが義務付けられました。また、2012年7月1日からは牛生レバーの提供も禁止されました。