フーリッシュプレジャー

フーリッシュプレジャー：ケンタッキーダービー王者と悲劇のマッチレース

1972年生まれのサラブレッド競走馬、フーリッシュプレジャー。その名は、1975年のケンタッキーダービー制覇によって、アメリカ競馬史に刻み込まれました。しかし、彼の名は、同時に悲劇的なマッチレースの対戦相手としても記憶されています。この記事では、輝かしいキャリアと、名牝ラフィアンとの運命的な出会い、そしてその後の種牡馬としての活躍まで、フーリッシュプレジャーの生涯を詳細にたどります。

華麗なるデビューと若駒時代

リロイ・ジョリー調教師の指導の下、フーリッシュプレジャーは1974年4月、ハイアリアパーク競馬場でデビュー。初戦から勝利を収めると、続くドーバーステークスで重賞初制覇を飾ります。この年は驚異の7戦全勝。シャンペンステークス、ホープフルステークス、サップリングステークスとG1競走3勝を含む圧巻の成績で、エクリプス賞最優秀2歳牡馬の栄冠に輝きました。

ケンタッキーダービー制覇と三冠への挑戦

3歳シーズンも好調を維持。フロリダダービーで初黒星を喫するも、ウッドメモリアルステークスを制し、ケンタッキーダービーへ最高の準備を整えました。ダービーでは単勝オッズ1番人気に推され、後方から鋭く追い上げ、アバターを1馬身3/4差で退け、優勝を掴み取ります。しかし、続くプリークネスステークスではマスターダービーに敗れ、ベルモントステークスでもアバターに屈し、三冠制覇はなりませんでした。

ラフィアンとの運命のマッチレース

当時、アメリカ競馬界を沸かせたのが、三冠牝馬ラフィアンの存在でした。前年の最優秀2歳牝馬として、三冠を達成した彼女は、史上最強牝馬候補の一頭として高く評価されていました。このラフィアンと三冠牡馬の対決という企画が持ち上がり、当初はマスターダービーとアバターとの対戦が予定されていましたが、最終的にフーリッシュプレジャーとラフィアンのマッチレースが実現しました。

フーリッシュプレジャーの主戦騎手ファシント・ヴァスケスがラフィアンを選択したため、フーリッシュプレジャーには新たな騎手が起用されました。7月6日、ベルモントパーク競馬場。5万人を超える観客とテレビ中継に見守られ、両馬はゲートイン。スタートダッシュで先頭を奪ったフーリッシュプレジャーでしたが、ラフィアンもすぐにペースを上げ、馬体を併せながら競り合います。しかし、残り8ハロン地点でラフィアンは骨折、失速し競走を中止。フーリッシュプレジャーは勝利しましたが、勝利の喜びよりも悲しみが場を覆いました。ラフィアンは数日後に安楽死されました。この悲劇的な出来事を受け、アメリカではマッチレースが自粛されるようになりました。

種牡馬としての成功と晩年

マッチレース後、フーリッシュプレジャーは4歳シーズンまで競走生活を続けました。1976年のサバーバンハンデキャップで年度代表馬フォアゴーを破るなど、活躍を見せますが、エクリプス賞最優秀3歳牡馬の座はワジマに奪われました。引退後は種牡馬となり、フィレイゴ、カイリスクラウン、マーファなど多くの重賞勝ち馬を輩出。その子孫からも、ビューティフルプレジャー、メックなど活躍馬が輩出され、その血統は現代競馬にも影響を与え続けています。1994年、蹄葉炎のため22歳で生涯を終えましたが、翌年にはアメリカ競馬名誉の殿堂入りを果たしました。

まとめ

フーリッシュプレジャーは、ケンタッキーダービー制覇という偉業を残した一方で、ラフィアンとのマッチレースという悲劇的な出来事にも遭遇しました。彼の名は、勝利だけでなく、その生涯を通して競馬界に大きな影響を与え、記憶に残る名馬として語り継がれています。彼の血統は現代競馬に受け継がれ、これからもその偉大さが語り継がれることでしょう。

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