ワジマ

ワジマ：アメリカンサラブレッドの栄光と影

ワジマは、アメリカ合衆国ケンタッキー州で誕生したサラブレッドの競走馬である。名種牡馬ボールドルーラーを父に持ち、フランス産馬のイスクラを母とする血統は、競走馬としての成功を予感させるものだった。1歳時には60万ドル（現在の価値で320万ドル以上に相当）という高額で取引され、日本の吉田善哉氏を含む4名による共同所有のもと、アメリカで競走生活を送ることとなった。馬名は、日本の著名な大相撲力士、輪島大士に由来している。

華々しい競走馬時代

2歳時は4戦2勝とまずまずの成績を残し、将来性を示唆した。しかし、3歳時シーズン序盤は脚部不安に悩まされたため、アメリカクラシック三冠への挑戦は叶わなかった。だが、6月に復帰すると驚異的な活躍を見せる。メリーランダーハンデキャップでステークス初勝利をコースレコードで飾り、その後もモンマスハンデキャップ、トラヴァーズステークスなど主要競走を4連勝。さらにガヴァナーステークスでは、その年のケンタッキーダービー馬フーリッシュプレジャー、前年の年度代表馬フォアゴー、そして後に殿堂入りを果たすエンシェントタイトルを破るという快挙を成し遂げた。

その中でも、マールボロカップでの勝利は特筆に値する。このレースで再びフォアゴーを下し、ニューヨーク・タイムズ紙は「今のワジマなら60万ドルはお買い得」と報じた。この勝利によってワジマの名は世界中に知れ渡り、その価値は飛躍的に上昇。当時としては世界記録となる720万ドル（現在の価値で3170万ドル以上に相当）でシンジケートが組まれた。世界中の著名な生産者たちがワジマのシンジケート株を購入し、その人気と期待の高さがうかがえる。

しかし、ウッドワードステークスとジョッキークラブゴールドカップで2着に終わった後、11月には惜しまれながら引退が発表された。それでも、その年のエクリプス賞最優秀3歳牡馬に選出されるなど、3歳シーズンでの活躍は高く評価された。

種牡馬としてのキャリア

引退後は種牡馬として活躍の場を移し、ケンタッキー州のスペンドスリフトファームで繋養された。しかし、種牡馬としての成績は、競走馬時代の輝かしい実績からはやや期待外れだったと言えるだろう。17世代に渡り産駒を残し、26頭のステークスウィナーを輩出したものの、グレード1競走勝ち馬はわずか4頭に留まった。代表産駒としては、カナダのクイーンズプレートとアメリカの重賞に勝利したキートゥザムーン（1984年カナダ最優秀3歳牡馬）などが挙げられる。その後、ストーンファームに移籍し、1992年に種牡馬を引退。2001年、老衰のため安楽死の処置がとられた。

血統とその後

ワジマの血統背景も興味深い。半兄のNaskraは重賞2勝、ベルモントステークス3着などの実績を残し、種牡馬としても成功を収めている。伯母のLezghinkaもヴェルメイユ賞など重賞3勝を挙げた名牝だった。ワジマ自身は競走馬として、そして種牡馬として、その能力の片鱗を惜しみなく示したと言えるだろう。競走馬としての華々しい活躍と、種牡馬としてはやや期待外れだったという対比は、サラブレッドという生き物の複雑さと、競走馬としての成功と種牡馬としての成功が必ずしもイコールではないことを示しているのかもしれない。彼の血統は、今もサラブレッド界に影響を与え続けている。

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