ブラックスワン級スループ

ブラックスワン級スループ

ブラックスワン級スループは、イギリス海軍が第二次世界大戦中に建造した艦級であり、その設計と戦績から「大戦中最も成功した護衛艦」と評されることもあります。この艦級は、1930年代の軍縮条約と国際情勢の変化に対応して、イギリス海軍の護衛艦艇の主力として開発されました。

来歴

1930年のロンドン海軍軍縮会議を受け、イギリス海軍は、駆逐艦よりも建造制約が緩いスループを船団護衛に活用する方針を打ち出しました。初期にはグリムスビー級、ビターン級、イーグレット級といったスループが建造されましたが、これらは掃海艇としての任務も担っていました。しかし、1935年のドイツ再軍備宣言と英独海軍協定により、国際情勢は緊迫化し、より専門的な対潜能力を持つ護衛艦艇が求められるようになりました。

当初は、船団護衛、対機雷戦、沿岸警備の各任務に特化したスループを建造する計画でしたが、ヘンダーソン第三海軍卿の指示により、これらの任務を兼任できる汎用スループの開発が検討されました。しかし、複数の機能を1隻に集約することの困難さから、グリムスビー級の設計を基にした、より短期間で建造できる艦が求められました。これがブラックスワン級スループの出発点であり、1937年度計画で4隻が建造されました。1940年度計画以降は船体を拡幅した改型に移行しました。

設計

ブラックスワン級は、イーグレット級の発展型として設計されましたが、船体長は2メートル以上延長され、長船首楼型の船型を採用しています。艦首から順に、10.2cm連装高角砲を背負い式で2基、艦橋、マスト、煙突、艦載艇、そして後部に10.2cm砲1基が配置されています。特徴的なのは、艦中央部に配置された1本煙突であり、後部甲板に対潜爆雷が配置されています。安定性を向上させるために、フィンスタビライザーも搭載されました。

ボイラーはアドミラルティ式3胴型水管ボイラー、タービンはパーソンズ式オール・ギヤード・タービンを採用し、機関出力は4,300馬力に増強されました。これにより、速力は19.75ノットに向上しました。また、改型では電源容量も強化され、タービン発電機とディーゼル発電機が搭載されました。

装備

ブラックスワン級の主砲は45口径10.2cm連装高角砲で、3基搭載されています。対空兵装として、当初は39口径40mm4連装機銃が搭載されていましたが、後にヘイズメイヤー式の56口径40mm連装機銃が搭載された艦もあります。一部の艦では40mm機銃の代わりに70口径20mm機銃を多数搭載し、対空能力を強化しました。

対潜兵装としては、爆雷が当初は40発搭載されていましたが、後に110発に増強されました。一部の艦にはヘッジホッグ対潜迫撃砲も搭載されています。また、レーダーとしては、目標捕捉用の276型、後に293型、早期警戒用の291型が搭載されました。1941年度計画艦では新型の144型探信儀が搭載されています。

運用史

ブラックスワン級は第二次世界大戦でその能力を遺憾なく発揮し、29隻のUボートを撃沈する戦果を挙げました。特にフレデリック・ジョン・ウォーカーが指揮する「スターリング」は9隻のUボート撃沈に関与しました。戦後も、イギリス海軍だけでなく、エジプト、インド、西ドイツなどでも運用されました。また、1949年には「アメシスト」が長江で中国人民解放軍の攻撃を受ける事件（アメジスト号事件）が発生し、朝鮮戦争にも参加した艦も存在します。

ブラックスワン級スループは、その優れた設計、高い汎用性、そして実戦での活躍により、第二次世界大戦におけるイギリス海軍の重要な戦力として、その名を歴史に刻みました。

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