ブラックトニー

ブラックトニー：競走馬としての平凡から種牡馬としての伝説へ

ブラックトニー（1911年 - 1938年）は、アメリカ合衆国で活躍したサラブレッド競走馬にして、種牡馬として名を馳せたサラブレッドです。競走馬としては目覚ましい活躍はできませんでしたが、種牡馬として類まれな成功を収め、ピーターパン系の全盛期を築いたことで知られています。その生涯は、競走馬としての挫折と種牡馬としての華々しい成功という、対照的な二つの側面から成り立っています。

誕生と若き日

1911年、ブラックトニーはジェームズ・ロバート・キーンの所有するキャッスルトンスタッドで誕生しました。青鹿毛の体毛に白斑はなく、胴長の体格をしていました。父はピーターパン、母はイギリスで活躍した牡馬ディスガイズの半妹であり、名繁殖牝馬クイーンメアリーの血を引く良血馬でした。父ピーターパンはドミノの孫であり、母父はベンブラッシュ。この組み合わせは、キーン牧場の歴史を支えてきた2つの血統の融合と言えるものでした。ブラックトニーは、ステークス競走勝ち馬であるフランコーニとグローブナーの半弟、そして後にステークス競走勝ち馬となるボニーメアリーの半兄でもありました。

キーンは晩年体調を崩しており、競走馬資産の売却を進めていました。1912年、ブラックトニーを含むキャッスルトンスタッドの全幼駒は、エドワード・ライリー・ブラッドリーによってウィリアム・A・プライムへ売却される予定でした。しかし、ブラッドリーはブラックトニーを1600ドルで購入し、自身の所有馬としました。

競走馬としてのキャリア

1940年に競走馬としてデビューしたブラックトニーは、2歳時には19戦7勝という成績を残し、ヴァリュエーションステークスを制覇しました。3歳時には8戦5勝、インディペンデンスハンデキャップ優勝など、活躍を見せました。しかし、4歳以降は怪我の影響もあり、成績は下降。大レースでの勝利には恵まれませんでした。生涯成績は40戦13勝、獲得賞金は13565ドルと、競走馬としては平凡な成績に終わりました。

5歳シーズンからは怪我を理由に休養し、種牡馬としての活動を開始しました。6歳シーズンに競走馬として復帰するも、3戦1勝で引退。種牡馬としての道を歩むことになりました。

種牡馬としての驚異的な成功

競走馬としては平凡な成績だったブラックトニーですが、種牡馬としては比類なき成功を収めました。ブラッドリーのアイドルアワーストックファームで繋養され、種付け頭数は制限されていましたが、21年間の活動で221頭の産駒を残したのみでしたが、そのうち約18％にあたる40頭がステークス競走勝ち馬となりました。1939年には、バイムレックなどの活躍により、アメリカ2歳リーディングサイアーにも輝いています。

ブラックトニーの産駒には、ミスジャマイマ（アメリカ最優秀2歳牝馬）、ブラックサーヴァント（ケンタッキーダービー2着）、ブラックゴールド、ブローカーズティップ（ケンタッキーダービー優勝馬）、ブラックヘレン、ブラックマリアといった名馬が数多く含まれています。多くの産駒は早熟のスピード馬であり、数多くの2歳ステークス競走勝ち馬を輩出しました。

血統とその後

ブラックトニーの後継種牡馬たちも活躍し、ピーターパン系の拡大に大きく貢献しました。しかし、彼の父系は次第に衰え、サラブレッドの血統としては途絶えています。一方、牝系は現在も存続しており、特にブラックヘレンとビッグハリーの牝系からはサーチングを始めとした名馬が多数輩出されています。ブラックトニーの血は、母父として成功した多くの種牡馬や、現代の名馬を通して受け継がれているのです。

ブラッドリーはブラックトニーの功績を称え、1/3サイズの銅像を牧場に設置しました。ダービーダンファームとなった現在も、その銅像は同じ場所に存在しています。1938年9月19日、27歳で心不全により亡くなりました。その遺骸は、銅像の近くに埋葬されています。ブラックトニーの物語は、競走馬としての成功だけが全てではないことを示す、感動的な物語です。彼の血統は、これからもサラブレッドの歴史に刻まれていくことでしょう。

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