バイムレック

バイムレック(1937-1966)は、アメリカ合衆国が生んだサラブレッド競走馬にして、名種牡馬である。1940年のアメリカクラシック二冠を制覇し、1990年にはアメリカ競馬殿堂入りを果たした輝かしい経歴を持つ。

その誕生は、アメリカを代表するオーナーブリーダー、エドワード・ライリー・ブラッドリー氏の所有するアイドルアワーストックファーム。母は後に名牝系の祖となる名牝ラトロワンヌであり、姉には既に活躍馬ブラックヘレンがいた。馬名はブラッドリー氏の友人ジョン・ハリス氏のニックネーム「Abimelech」に由来し、頭文字のAを省いて命名された。

ウィリアム・ハーレイ調教師の指導の下、1939年、競走馬としてデビュー。初戦のサラフォークダウンズ競馬場では3馬身差という圧勝劇を飾り、続くエンパイアシティ競馬場のアローワンス競走も難なく制した。サラトガ競馬場で行われたサラトガスペシャルステークスも勝利し、勢いは止まらなかった。ホープフルステークスではクビ差の接戦を制し、続くフューチュリティステークスとピムリコフューチュリティではそれぞれ1馬身半差、4馬身差と圧勝。2歳シーズンは6戦全勝という驚異的な成績で締めくくり、アメリカ最優秀2歳牡馬に選出された。フリーハンデにおいても、2歳馬ながら130ポンドという高評価を得た。

翌1940年、4月のブルーグラスステークスで始動し、ダービートライアルステークスも制し、ケンタッキーダービーの有力候補として注目を集めた。本番のケンタッキーダービーでは、1番人気に推され、あるブックメーカーでは単勝オッズ4倍という、当時のケンタッキーダービー史上最低オッズが付けられたほどであった。しかし、結果は2着。ダービートライアルステークスで敗っていたギャラハディオン（単勝36倍）に敗れたのだ。レース中盤まで外を回り続けたバイムレックはスタミナを消耗し、最後の直線でギャラハディオンに交わされ、1馬身半差で敗れた。初めての敗戦であった。

しかし、この敗戦から1週間後に行われたプリークネスステークスでは見事に復活。2着馬ミオランドに3馬身差をつけて勝利し、ギャラハディオン（3着）への雪辱を果たした。ウィザーズステークスで2着を挟んだ後、ベルモントステークスを制し、見事に二冠を達成した。

ベルモントステークス後はアーリントンクラシックステークスに出走し3着。続くトラヴァーズステークスを予定していたが、脚に異常が見られたため、残りのレースを全て取りやめ、休養に専念した。この年の活躍が評価され、最優秀3歳牡馬に選出された。

翌1941年に復帰するも、この頃導入されたスターティングゲートが新たな試練となった。ゲートを嫌がるバイムレックは2戦に出走したものの、ブラッドリー氏はバイムレックが暴れて怪我を再発することを恐れ、2戦で引退を決断した。

引退後はブラッドリー氏のアイドルアワーストックファームで種牡馬として活躍。ブラッドリー氏の死後、グリーンツリースタッドに移籍。生涯で30頭のステークス勝ち馬を輩出した。代表産駒はベターセルフ（1945年生）で、5歳まで活躍し、バイムレック産駒中最高の賞金を獲得した。種牡馬としても成功し、アスピディストラなど名牝を輩出した。その他にも、フューチュリティステークス優勝馬ギロチン、ホーソーンゴールドカップ優勝馬ビーフェイスフル、サンタアニタダービー優勝馬バイミーボンドなど数々の活躍馬を輩出した。

種牡馬としての成功だけでなく、母父としての影響も大きかった。産駒の牝馬が産んだステークス勝ち馬は50頭にのぼる。代表的な産駒には、1955年のケンタッキーオークス優勝馬レイラン(ネヴァーベンドの母)、フューチュリティステークス優勝馬ポーターハウスなどがいる。

1966年7月21日、老衰のため29歳でこの世を去った。その遺骸はグリーンツリースタッドの墓地に埋葬されている。1990年、アメリカ競馬名誉の殿堂博物館に殿堂入りを果たし、その偉業は後世に語り継がれている。1999年にはブラッド・ホース誌の選ぶ20世紀のアメリカ名馬100選において、第84位に選出された。

主な勝鞍（当時グレード制未導入）
1939年（2歳）：サラトガスペシャルステークス、ホープフルステークス、フューチュリティステークス、ピムリコフューチュリティ（6戦6勝）
1940年（3歳）：プリークネスステークス、ベルモントステークス、ブルーグラスステークス、ダービートライアルステークス（7戦4勝、ケンタッキーダービー2着、ウィザーズステークス2着）
1941年（4歳）：1戦1勝

受賞歴
1939年：アメリカ最優秀2歳牡馬
1940年：アメリカ最優秀3歳牡馬
1990年：アメリカ競馬名誉の殿堂博物館殿堂入り

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