エドワード・ライリー・ブラッドリー

エドワード・ライリー・ブラッドリー：アメリカ競馬史に輝く実業家とオーナーブリーダー

エドワード・ライリー・ブラッドリー（1859年-1946年）は、19世紀末から20世紀前半にかけて活躍したアメリカ合衆国の実業家であり、その名を競馬史に刻むオーナーブリーダーでした。製鉄業から出発し、後にカジノ経営や競馬場運営、そしてブックメーカーとしても成功を収め、巨万の富を築き上げました。しかし、彼の生涯はビジネスの成功だけに留まりません。慈善活動への貢献や、アメリカ競馬界への多大なる功績によって、現在でも高く評価されています。

多彩なビジネスキャリア

ペンシルベニア州でアイルランド系移民の家庭に生まれたブラッドリーは、14歳で製鉄業に携わった後、テキサス州の牧場などで経験を積みます。その後、彼は競馬産業へと進出。アーカンソー州、テネシー州、ミズーリ州などでブックメーカーとして活動を始めました。さらに、競馬用具の製造販売にも手を広げ、彼が開発したヘルメットやブリンカーは、当時多くの競馬関係者に愛用されていたと言われています。シカゴでのホテル経営や若手実業家の育成にも取り組み、多角的な事業展開で成功を収めていきました。

1891年にはフロリダ州セントオーガスティンに移住。1898年には、レイクワース・ラグーン沿岸にカジノを併設したリゾート施設を建設し、その人気はニューオーリンズへの支店開設に繋がるほどでした。

競馬場経営とフェアグラウンズ[[競馬場]]

ブラッドリーは、カジノ経営の一環として草競馬を開催していた時期もありましたが、1926年にはフェアグラウンズ[[競馬場]]を買収し、本格的な競馬場経営に乗り出します。大規模な設備投資を行い、競馬場の近代化に貢献しました。1932年にはハイアリアパーク競馬場の再建にも携わりました。しかし、フェアグラウンズ[[競馬場]]は1934年にライバル競馬場の所有者に買収され、ブラッドリーの手を離れることとなります。現在でもフェアグラウンズ[[競馬場]]では、彼を称える「カーネルE・R・ブラッドリーハンデキャップ」という競走が開催されています。

伝説と社会的地位

ブラッドリーは、これらの事業で築き上げた莫大な資産から、19世紀末の著名な実業家として広く知られるようになりました。その知名度は非常に高く、アメリカ合衆国下院議会やタイム誌の表紙を飾るほどでした。しかし、彼の経歴には、テキサス時代に関する脚色された伝説も数多く残されています。カウボーイとして活動し、インディアン戦争に従軍した、あるいはワイアット・アープと親交があったなど、様々な逸話が語り継がれています。

慈善活動と功績

ブラッドリーは、子供がいなかったことから、孤児院への多額の寄付を積極的に行っていました。毎年秋には牧場で草競馬を開催し、その収益を孤児院支援に充てていました。また、カトリック系の病院への支援にも熱心で、フロリダ州パームビーチにある病院の設立にも貢献しています。1926年に妻が亡くなると、彼はパームビーチの私有地を市に寄付し、公園として市民に開放しました。これらの慈善活動は高く評価され、2000年にはフロリダ州政府から「フロリダ州の偉人」に選出されています。

馬主・生産者としての成功

ブラッドリーは、ブックメーカーとしての活動と並行して、サラブレッド競走馬の馬主兼生産者としても成功を収めました。1898年に医師から屋外活動の必要性を指摘されたことをきっかけに競走馬の購入を始め、最初の所有馬フライアージョンで勝利を収めたことが、彼の馬主としてのキャリアの始まりでした。

彼は、ウィリー・ナップやエドワード・ホートンといった当時の名調教師に馬を預託する傍ら、後に名伯楽と呼ばれるウィリアム・J・ハーレーやハーバート・J・トンプソンとも協業。ハーレー厩舎からはバブリングオーバーやバイムレック、トンプソン厩舎からはブラックヘレンやブルーラークスパーといった名馬が輩出されました。特にトンプソンとの相性は抜群で、「ダービー・ディック」と呼ばれたトンプソンのケンタッキーダービー優勝馬4頭のうち3頭はブラッドリーの所有馬でした。ブラッドリーの勝負服は白地に緑輪でした。また、所有馬の頭文字を「B」にすることを好んでいました。

アイドルアワーストックファーム

1906年、ブラッドリーはケンタッキー州レキシントンにアイドルアワーストックファームを設立しました。当初400エーカーだった牧場は、後に1400エーカーに拡張され、近代的な設備を備えた大規模なサラブレッド生産牧場へと発展しました。

1912年には、著名オーナーブリーダーだったジェームズ・ロバート・キーンから生産馬の売却を依頼され、多くの馬を買い取りました。その中には、後の名種牡馬ブラックトニーも含まれていました。ブラッドリーは、キーンの「国産種牡馬と欧州産繁殖牝馬の掛け合わせ」という手法を受け継ぎ、欧州からの繁殖牝馬の輸入に積極的に取り組みました。

1930年には、フランスのオーナーブリーダー、マルセル・ブサックが生産した繁殖牝馬ラトロワンヌを購入。ラトロワンヌは、ブラッドリーの牧場で数々の名馬を産み出し、その牝系は現代まで続いています。「ラトロワンヌの輸入」は、ブラッド・ホース誌が選定したアメリカ競馬史の重要な瞬間トップ100において20位にランクインするなど、ブラッドリー最大の功績の一つとして称えられています。

主な生産馬・所有馬

ブラッドリーは、カリタン、ビヘイブユアセルフ、バブリングオーバー、ブルーラークスパー、バーグーキング、ブローカーズティップ、バイムレックなど、数々のクラシック競走優勝馬を所有・生産しました。これらの馬の多くはアメリカ競馬殿堂入りを果たしています。

没後

1946年にブラッドリーが死去すると、アイドルアワーストックファームの生産馬や設備は競売にかけられ、牧場は分割されて売却されました。その一部は、キングランチの所有者だったジョン・W・ガルブレスによってダービーダンファームとして再興され、現在も運営されています。ダービーダンファーム内には、ブラッドリーや彼の生産馬の墓地が残されており、彼の競馬界への貢献を今も静かに物語っています。

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