ブラッドハーレーの馬車

ブラッドハーレーの馬車

『ブラッドハーレーの馬車』は、沙村広明によって描かれた日本の漫画作品です。2004年から2006年にかけて『マンガ・エロティクス・エフ』（太田出版）にて不定期連載され、単行本は全1巻で刊行されています。

作者である沙村広明は、当初「赤毛のアンのような作品を描きたい」という構想を持っていました。しかし、完成した作品は、登場人物の名前や馬車、孤児院、切妻屋根といった要素にわずかな共通点が見られる程度で、ストーリー展開は大きく異なります。舞台となる国家も、議員制政治を敷いた近代西洋風という曖昧な設定に留められています。

タイトルにもあるように、物語には毎回必ず馬車が登場します。この馬車は、ブラッドハーレー家に養女として迎えられる少女たちの、残酷な運命を象徴する重要なモチーフとなっています。

あらすじ

物語の舞台は、とある時代のとある国。国内有数の資産家であり、貴族院議員でもあるニコラ・A・ブラッドハーレー公爵は、「ブラッドハーレー聖公女歌劇団」という劇団を経営していました。劇団員はすべてブラッドハーレーの養女であり、全国の孤児院から集められた少女たちで構成されています。

孤児院の少女たちにとって、「ブラッドハーレー聖公女歌劇団」は憧れの的であり、ブラッドハーレー家に養女として迎えられることは、羨望の眼差しで見られる幸運でした。しかし、現実は大きく異なっていました。毎年養女として引き取られる少女たちの数と、劇団員の数には大きな隔たりがあったのです。

実は、この国では過去に「ヘンズレーの暴動」と呼ばれる、囚人と看守合わせて37名が死亡する大規模な集団脱獄・暴動事件が発生していました。国は、このような事件の再発を防止するためのプログラムを策定し、実行に移します。そのプログラムとは、服役者の性的欲求と破壊欲求を解消するために、全国の孤児院から少女たちを買い上げ、年に一度、無期懲役囚に与えるという、おぞましいものでした。10年や20年の長期服役者には参加資格が与えられないのは、この計画の残忍性によるものでした。

この恐るべき計画、『1/14計画案』（通称・パスカの祭り）を発議し、実行に移した人物こそが、ニコラ・A・ブラッドハーレー公爵その人だったのです。

『ブラッドハーレーの馬車』は、華やかな歌劇団の裏に隠された、国家規模の陰謀と少女たちの絶望を描き出した、衝撃的な作品です。沙村広明ならではの緻密な描写と、残酷な物語展開が読者を魅了します。

書誌情報

* 沙村広明 『ブラッドハーレーの馬車』 太田出版〈Fx COMICS〉、2008年1月13日初版発行、ISBN 978-4-7783-2051-5

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