ブリュッヒャー (装甲巡洋艦)

ブリュッヒャー (SMS Blücher)

ブリュッヒャーは、ドイツ帝国海軍が建造したユニークな装甲巡洋艦で、同型艦は存在しません。ドイツ海軍では大型巡洋艦に分類されており、艦名はナポレオン戦争で名を馳せたプロイセンの将軍、ゲプハルト・レベレヒト・フォン・ブリュッヒャーに由来しています。

概要

ブリュッヒャーは1904年から1905年にかけての建艦計画において、ドイツ側が想定していたイギリスの新型装甲巡洋艦よりも優れた火力を持たせるために設計されました。当初は前級の「シャルンホルスト級」と同じ21cm速射砲を採用しつつ、主砲の数を8門から12門に増加させました。これにより、想定されるイギリスの艦船に対して圧倒的な火力を持つことを目指しました。しかし、他の艦船との設計競争の中で、イギリス海軍はより強力な12インチ砲を搭載した弩級戦艦を建造していたため、ブリュッヒャーは建造時点で既に劣勢となってしまいました。その結果、代わりに後の艦は弩級戦艦並みの主砲を搭載することになりました。

艦形

ブリュッヒャーの船体は、中央部分が乾舷が高い長船首楼型の造形を特徴としており、艦首には衝角を装備していました。艦首甲板上には新設計の21cm速射砲が連装砲塔に収められており、艦の左右にそれぞれ武装が配置され、火力の多様化が図られていました。また、艦橋や煙突の形状、見張り所なども工夫され、当時の艦艇と比べて視認性と指揮能力が向上しています。

武装

主砲には「1909年型 21cm（44口径）速射砲」を採用し、最大射程19,100mを誇りました。発射速度は毎分4～5発で、俯仰能力も備わっています。また、副砲として15cm速射砲を搭載し、対水雷艇用に8.8cm速射砲も装備されています。魚雷発射管もいくつか配置され、対艦戦闘にも対応可能でした。

防御

装甲はクルップ鋼製で、舷側装甲は180mmに達しました。防御様式は旧式の装甲巡洋艦に準じていたため、弾薬庫の配置に問題があり、これが艦の喪失につながる原因ともなりました。

機関

ブリュッヒャーは、石炭を燃料とするレシプロ機関を搭載しており、設計上は24.5ノットを目指しましたが、公試で最大速力25.4ノットを記録しました。しかし、艦の喪失時には機関が痛手を受け、速度が低下する結果となりました。

艦歴

1907年に起工し、1909年に竣工したブリュッヒャーは、当初はバルト海艦隊に配備されました。1914年11月にはイギリスの襲撃に参加し、その後のドッガー・バンク沖海戦に参加しました。この戦闘ではイギリス艦隊との激しい交戦が繰り広げられ、ブリュッヒャーは次第に優位に立つ敵艦に対応できず、力尽きて沈没しました。乗員1,026名のうち、生存者は234名でした。

参考文献と関連項目

関連項目には、ドイツ海軍艦艇一覧を初め、「世界の艦船 増刊ドイツ巡洋艦史」などがあり、ブリュッヒャーの詳細を知るための資料が存在します。この艦は、その設計思想と戦歴から、第一次世界大戦の文脈で重要な役割を果たしました。

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