ブリ属

ブリ属（Seriola）について

ブリ属は、スズキ目アジ科に属する魚のグループで、全世界の亜熱帯から温帯の海域に広く分布しています。これらの魚は回遊性で、大型の肉食魚として知られています。食用魚としての重要度も高く、世界中で漁獲・養殖されています。

特徴

ブリ属の魚は、他のアジ科の魚と同様に、小さな第一背鰭と長い第二背鰭を持っています。また、肛門と臀鰭の間には2本の遊離棘があるのが特徴です。体は細かい鱗で覆われていますが、アジ亜科に特徴的な側線上の稜鱗（ゼイゴ）は発達していません。稚魚の時期には横縞模様がありますが、成長するにつれて消失する種が多いです。ただし、バンデッド・ラダーフィッシュのように成長しても横縞が残る種や、サムソンフィッシュのように釣り上げると横縞が薄く浮き出る種もいます。成魚は背側が緑色、紫色、青色などの寒色系で、腹側は白色をしています。ブリ、カンパチ、ヒラマサなどの成魚には、体の中心に黄色い縦帯があり、これが英名「Amberjack（琥珀のアジ）」の由来となっています。

生態

ブリ属の魚はすべて肉食性で、小型魚、甲殻類、頭足類などを捕食します。分布については、寒流のベンゲラ海流流域に生息するギニアン・アンバージャックや、強い海流から離れたオーストラリア沿岸に生息するサムソンフィッシュを除いて、三大洋の熱帯・亜熱帯海域に広く分布しています。黒潮流域に生息するブリや、メキシコ湾流流域に生息するバンデッド・ラダーフィッシュは、北に広く分布しています。一般的に水深100m前後の沖合低層を回遊し、産卵期になると岸に近づく習性があります。このため、沖合漁業や沿岸漁業の対象魚となるほか、陸釣りや船釣りのターゲットとしても人気があります。

漁業と養殖

国際連合食糧農業機関（FAO）の推計によると、2014年には世界で約33万トンのブリ類（ブリ属と近縁種を含む）が生産されました。そのうち、約26万トンが日本で生産されています。その他、中国、韓国、インドネシアなどでも生産が行われています。養殖は世界で年平均15万トン程度ですが、その約80%が日本と韓国で生産されるブリ、カンパチ、ヒラマサで占められています。ニュージーランドではヒラマサ、アメリカではヒレナガカンパチの養殖が行われています。日本では刺身として生食されることが多いですが、世界的には鮮魚や冷凍だけでなく、塩漬けや干物などの加工品としても利用されています。また、熱帯のサンゴ礁に生息する大型のカンパチやヒラマサには、シガテラ毒を蓄積し、中毒を引き起こす場合があるので注意が必要です。

ブリ属の主な種

ブリ属には、以下の9種が分類されています。

1. ギニアン・アンバージャック (Seriola carpenteri)
大西洋東岸に分布し、アフリカ沖ではカンパチと混同されることがあります。寒流を好む珍しい種です。
2. カンパチ (Seriola dumerili)
三大洋の熱帯・亜熱帯海域に広く分布する汎存種で、ブリ属のタイプ種です。日本では主に養殖物が出回ります。
3. レッサー・アンバージャック (Seriola fasciata)
西大西洋に分布する小型の種で、稚魚の横縞が蛇行しているのが特徴です。
4. サムソンフィッシュ (Seriola hippos)
オーストラリア周辺海域に分布する固有種で、南半球のゲームフィッシングの対象魚です。日本では「ミナミカンパチ」とも呼ばれます。
5. ヒラマサ (Seriola lalandi)
三大洋の亜熱帯・温帯海域に広く分布し、大型になることで知られています。日本やニュージーランドで養殖が盛んです。
6. フォーチュン・ジャック (Seriola peruana)
太平洋東岸に分布する小型種で、ブリ属の中で最も生息域が狭いです。
7. ブリ (Seriola quinqueradiata)
日本周辺海域に固有の種で、日本の食文化に深く関わっています。漁獲量、養殖量ともにブリ属の中で最も多いです。
8. ヒレナガカンパチ (Seriola rivoliana)
三大洋の熱帯・亜熱帯海域に広く分布し、第二背鰭と腹鰭の先端が尖っているのが特徴です。アメリカで養殖されています。
9. バンデッド・ラダーフィッシュ (Seriola zonata)
* 大西洋西岸に分布する小型種で、若魚には横縞模様が残ります。

ブリ属の魚は、その多様な生態や食味から、世界中で人々に愛されています。これらの魚は、漁業や養殖を通じて、私たちの食生活を豊かにする重要な資源となっています。

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