ブルース・フレーザー

ブルース・フレーザー：英国海軍を率いた英雄

ブルース・オースティン・フレーザー（1888年2月5日 - 1981年2月12日）は、初代ノースケープのフレーザー男爵であり、イギリス海軍における最高位である海軍元帥にまで上り詰めた傑出した軍人です。第二次世界大戦中、彼は本国艦隊司令長官として、歴史的な北岬沖海戦を指揮し、勝利を収めました。また、終戦時にはイギリス太平洋艦隊司令長官として、戦艦ミズーリ上での日本の降伏調印式にイギリス代表として署名するという、歴史的瞬間に立ち会いました。戦後には、第一海軍卿という海軍士官の最高ポストを務め、そのキャリアを通じて多大な貢献をしました。

生涯

フレーザーは1888年、アレクサンダー・フレーザーとモニカ・フレーザーの息子として生まれました。ブラッドフィールド・カレッジで教育を受けた後、1902年に海軍兵学校に入校し、軍人としての道を歩み始めます。1904年に卒業後、少尉候補生として戦艦ハンニバルに配属され、その後も戦艦プリンス・ジョージ、トライアンフと異動し、着実にキャリアを重ねていきました。1908年には大尉に昇進し、巡洋艦ランカスターに配属されています。

砲術の専門家としての道を志したフレーザーは、1911年から海軍砲術学校で研鑽を積み、王立海軍大学グリニッジ校の砲術コースでも優秀な成績を収めました。

第一次世界大戦では、ガリポリの戦いやエジプト西部防衛に参加し、艦砲射撃で貢献しました。1916年には少佐に昇進し、戦艦レゾリューションに異動。終戦までグランド・フリートで勤務し、ドイツ帝国海軍大洋艦隊のスカパ・フロー抑留に際会しています。1919年には中佐に進級し、大英帝国勲章（OBE）を授与されました。その後、ロシア内戦への参戦を志願し、カスピ小艦隊攻撃に参加しますが、赤軍に捕縛され、1920年まで拘束されるという苦難も経験しました。

戦間期には、海軍本部の兵器部や地中海艦隊での勤務を経て、1926年に大佐に昇進。その後も、海軍本部戦術部長、重巡洋艦エッフィンガム艦長、海軍本部兵器部長などの要職を歴任しました。1938年には少将に進級し、地中海艦隊参謀長に就任。1939年にはバス勲章（CB）を授与され、第三海軍卿に就任しました。

第二次世界大戦では、1940年に海軍中将に昇進。1942年には本国艦隊の次席指揮官である第2戦艦戦隊司令官に任命され、1943年には本国艦隊司令長官に就任しました。同年12月26日には、旗艦デューク・オブ・ヨークに坐乗し、北岬沖海戦でドイツ戦艦シャルンホルストを撃沈するという大戦果を挙げました。この功績により、バス勲章（GCB）やソ連のスヴォーロフ勲章を授与されています。1944年には海軍大将に進級し、東洋艦隊司令長官、イギリス太平洋艦隊司令長官を歴任。1945年9月2日、東京湾のミズーリ艦上で行われた日本の降伏文書調印式では、連合国イギリス代表として署名しました。

戦後、1946年に海軍侍従武官長に補され、ノース・ケープのフレーザー男爵に叙されました。1947年にはポーツマス鎮守府司令長官に就任し、1948年には海軍元帥に昇進。1948年から1951年まで、海軍士官の最高ポストである第一海軍卿を務めました。第一海軍卿在任中には北大西洋条約機構（NATO）の設立に関わり、大西洋連合軍最高司令官にアメリカ海軍の提督が就任する原則に合意しました。

1951年に第一海軍卿を退任後、1981年にロンドンで亡くなりました。生涯独身であったため、爵位は一代限りで断絶しました。

ブルース・フレーザーは、その卓越したリーダーシップと戦略的思考、そして勇敢な行動によって、イギリス海軍の歴史に名を刻んだ偉大な軍人として、後世に語り継がれています。

もう一度検索