ブルート・バーナード

ブルート・バーナード：狂乱の野獣、その生涯と伝説

ブルート・バーナード（Brute Bernard）こと、ジェームス・"ジム"・バーナードは、1921年 6月6日にカナダ・ケベック州モントリオールで生まれました（生年については諸説あります）。スキンヘッドに全身を覆う剛毛という強烈な外見と、予測不能な狂乱ファイトで、世界中のプロレスファンを熱狂させた伝説的なレスラーです。日本では「野獣」の異名で知られ、日本プロレスや新日本プロレスといった主要団体で活躍しました。

プロレスラーとしての軌跡

プロレス入り前はトロントのプロフットボールチームに所属していましたが、プロモーターのジャック・ブリットンに見出され、1956年に地元のケベックでプロレスデビュー。初期はジム・バーナードの名で活動し、トロントやニューヨークといった主要都市の会場にも登場しました。

1962年、アメリカ東部地区でブルート・バーナードと改名し、スキンヘッドの野獣スタイルへと変貌を遂げます。全身無毛の怪奇派スカル・マーフィーとのタッグは、その凶悪なファイトスタイルで観客を震え上がらせ、各地のテリトリーを席巻しました。1963年にはWWWF（現WWE）でUSタッグ王座を獲得するなど、数々のタイトルを手中に収めました。

フロリダでは、NWA世界タッグ王座を獲得。デューク・ケオムカ&ヒロ・マツダの日系コンビとも激しいタイトル争いを繰り広げました。1966年にはオーストラリアにも遠征し、IWA世界タッグ王座を獲得するなど、その活躍は世界規模に広がりました。

日本での活躍

1968年11月、日本プロレスに初来日。ジャイアント馬場をピンフォールで破るという衝撃的なデビューを飾り、アントニオ猪木とのシングルマッチでも好勝負を展開。奇声を発しながらギクシャクと入場するパフォーマンスは、怪奇ムード満点でヒール人気を博しました。しかし、初来日時のタッグマッチで、角材で大木金太郎の耳をそぎ落とすという「大木金太郎耳そぎ事件」を起こし、その悪名を轟かせました。

その後も、スカル・マーフィーとのタッグでBI砲（ジャイアント馬場&アントニオ猪木）のインターナショナル・タッグ王座に挑戦するなど、日本プロレスで存在感を示しました。マーフィーの死後も、ムース・ショーラックとのタッグで来日し、BI砲への挑戦を続けました。

1975年、新日本プロレスに初参戦。タイガー・ジェット・シン、ジョニー・パワーズ、キラー・カール・クラップらと共に、初期の新日本を支える看板ヒールとして活躍しました。猪木とのシングルマッチでは反則勝ちを収めるなど、その狂暴性は健在でした。

晩年と死

1970年代以降は、アメリカを拠点に活動。ノースカロライナのNWAミッドアトランティック地区を主戦場とし、リック・フレアーやブラックジャック・マリガンといったトップスターと対戦しました。晩年はジョバーとしての役割が多くなりましたが、その存在感は色褪せませんでした。

1984年10月21日、拳銃自殺により死去。63歳という若さでした。思うように動かなくなった身体を嘆いての自殺とも、事故死やロシアン・ルーレットによるものとも言われていますが、真相は不明です。

得意技とスタイル

ブルート・バーナードのファイトスタイルは、まさに「野獣」そのものでした。フライング・ニー・ドロップやパンチ、キックといった基本的な技に加え、噛みつき、かきむしり、凶器攻撃など、あらゆる反則攻撃を駆使して相手を追い詰めるのが常套手段でした。角材などの凶器を隠し持ち、試合を有利に進める狡猾さも持ち合わせていました。タフネスにも優れており、打たれ強く、殴り合いでも決して引かない強靭な精神力を持っていました。

獲得タイトル

WWWF USタッグ王座（w / スカル・マーフィー）
IWA世界タッグ王座（オーストラリア版）（w / スカル・マーフィー）
NWA豪亜ヘビー級王座
NWA世界タッグ王座（フロリダ版）（w / スカル・マーフィー）
NWA大西洋岸タッグ王座（w / ミズーリ・モーラー）
NWAミッドアトランティック・タッグ王座（w / ジェイ・ヨーク）
NWA USヘビー級王座（テキサス版）
NWAテキサス・ブラスナックル王座
NWAアメリカン・タッグ王座（w / マイク・パドーシス、ミズーリ・モーラー）
NWAウエスタン・ステーツ・タッグ王座（w / フランク・モレル）
NWAメイコン・タッグ王座（w / ニコライ・ボルコフ）

エピソード

WWEのジェイソン・アルバート（ジャイアント・バーナード）は、新日本プロレス参戦時に「ブルート・バーナードの息子」と名乗っていましたが、これはギミック上の設定であり、実際には血縁関係はありません。
腰の保護のために、タイツの尻の部分に特製のパッドを入れていたそうです。
実生活では非常に優しい性格で、バスの運転手の話し相手になったり、ベトナム難民の写真を見て号泣したというエピソードがあります。
* 一方で、リック・フレアーの自著では、人種差別主義者として描かれています。

ブルート・バーナードは、その強烈なキャラクターとファイトスタイルで、プロレス史に大きな足跡を残しました。その名は、狂乱の野獣として、永遠にプロレスファンの記憶に刻まれるでしょう。

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