ブルー&ロンサム

ローリング・ストーンズ、キャリア54年目にして放つ初のブルース・カバーアルバム『ブルー＆ロンサム』

2016年、ローリング・ストーンズは前作から11年ぶりとなるニューアルバム『ブルー＆ロンサム』(Blue & Lonesome)をリリースしました。このアルバムは、バンドのキャリアにおいて特筆すべき作品となりました。なぜなら、それまで数々のオリジナルアルバムを発表してきたストーンズにとって、初のカバーアルバムだったからです。しかも、その対象は、彼らのルーツであるブルースの古典的名曲の数々。長きに渡るキャリアの中で培ってきた経験と、原点回帰とも言えるブルースへの熱い想いが凝縮された、まさに珠玉の一作と言えるでしょう。

短期間レコーディングと豪華ゲストミュージシャン

本作のレコーディングは、驚くべきことにわずか3日間で実施されました。その短期間でこれほどの完成度を誇るアルバムを作り上げた彼らの音楽的才能は、改めて称賛に値します。メンバーに加え、参加ミュージシャンも厳選された少人数。レギュラーメンバーである[ダリル・ジョーンズ]と[チャック・リーヴェル]に加え、3人のゲストミュージシャンのみが参加しています。中でも注目すべきは、エリック・クラプトン。ストーンズのスタジオ作品への参加は、実に1970年以来46年ぶりという、まさに夢のようなコラボレーションが実現しました。

さらに、ミック・ジャガーがハーモニカ以外の楽器を演奏していないのは1986年以来、キース・リチャーズがリードボーカルをとっていないのも1974年以来のこと。ストーンズの音楽性、そして個々のメンバーの個性が凝縮された、非常に貴重な作品と言えるでしょう。また、本作はオーバーダビングも最小限に抑えられおり、生演奏ならではのダイレクトなサウンドが特徴です。

偶然から生まれたブルースへの回帰

興味深いことに、『ブルー＆ロンサム』は最初からカバーアルバムとして企画されたわけではありませんでした。メンバーによると、当初は新曲のレコーディングを進めていたものの、創作の行き詰まりを感じていたところに、気分転換としてブルースの演奏を始めたところ、全員がその魅力に取りつかれたのだとか。そのセッションに、偶然隣のスタジオに滞在していたエリック・クラプトンが参加することになり、このアルバムは完成へと向かいました。

プロデューサーのドン・ウォズは、新曲の制作が中断されたことについて「これで終わりなんてことは全くない」と語り、オリジナルアルバムの制作再開を示唆しています。この発言からも、バンドが常に創造性を追求し続けている姿勢が見て取れます。

各国で高い評価を獲得、記録を更新

『ブルー＆ロンサム』は世界各国で高い評価を受けました。イギリスでは初登場1位を獲得し、プラチナディスクにも輝きました。これは、ストーンズのアルバムとしては2010年以来の快挙であり、新作アルバムとしては1994年以来22年ぶりの出来事でした。スイス、ドイツ、オーストリア、オランダ、ベルギー、スウェーデン、ノルウェー、オーストラリアでも1位を獲得し、その人気は世界中に広がりました。日本では3位を記録、1970年代から2010年代までの5つの世代でトップ10入りを果たすという偉業も達成しました。アメリカでは4位という結果に終わりましたが、それでも高い評価を得たことは間違いありません。

批評家からの評価も高く、デイリー・テレグラフでは満点の5/5、オールミュージックおよびローリングストーンでは4.5/5、ニュー・ミュージカル・エクスプレスでは4/5と、軒並み高評価を得ました。Metacriticによるスコアは82点と、その質の高さが数字でも証明されています。

収録楽曲と参加メンバー

アルバムには、バディ・ジョンソン、ハウリン・ウルフ、リトル・ウォルターといったブルース・レジェンドの名曲が収録されています。ストーンズのメンバーに加え、エリック・クラプトン、ジム・ケルトナーといった豪華ゲストミュージシャンの参加も、このアルバムの魅力を高めています。

このアルバムは、通常版に加え、72ページに及ぶアルバム・メイキングを解説したブックレットとポストカードが付いたデラックス・エディション、そして2枚組のLP盤も発売されました。ストーンズのスタジオ・アルバムで初めて、グループのロゴである舌のマークがジャケットに使用されたことでも話題となりました。

『ブルー＆ロンサム』は、偶然の産物から生まれた、しかしながら、バンドの深いブルースへの愛情と揺るぎない音楽性によって生み出された、まさに歴史に残る名盤と言えるでしょう。

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