プライスの襲撃

プライスの襲撃：南北戦争最後のミズーリ遠征

プライスの襲撃（Price's Raid）は、南北戦争のミシシッピ川流域戦線において、1864年に南軍が行った大規模な騎兵襲撃作戦です。スターリング・プライス少将率いる南軍騎兵隊がミズーリ州とカンザス州で数多くの戦いを繰り広げましたが、最終的にはアルフレッド・プレソントン少将率いる北軍騎兵隊に敗北しました。この戦いは、ミシシッピ川以西における最後の主要な作戦となり、南北戦争の終結に向けて重要な意味を持ちました。

背景

1864年秋、アメリカ合衆国大統領選挙が近づくにつれて、南軍の状況は絶望的になっていました。エイブラハム・リンカーン大統領の再選は南軍にとって最悪の結果であり、各地の戦況はリンカーン有利に進んでいました。ユリシーズ・グラント将軍は南軍のロバート・E・リー将軍の軍をピーターズバーグに包囲し、ジュバル・アーリー将軍はワシントンD.C.郊外から撤退、ウィリアム・シャーマン将軍はアトランタを占領しました。

この状況下で、南軍はミシシッピ川流域軍のエドマンド・カービー・スミス中将に対し、リチャード・テイラー将軍の軍団をミシシッピ川東部へ派遣し、アトランタやモービルの防衛を支援するよう命じました。しかし、ミシシッピ川の渡河は北軍の砲艦が警戒しているため困難であり、テイラー軍団は別の任務に充てられました。

カービー・スミスは、テイラー軍団を渡河させる計画から北軍の注意を逸らすための支援作戦を考案しました。彼は、ミズーリ州を占領（または再占領）することで北部大衆の意識をリンカーン反対に変えることができると考えました。この目的のため、スターリング・プライス少将を大規模な騎兵襲撃作戦に送り込みました。プライスの作戦は、セントルイスとその豊富な軍需物資倉庫を占領することでしたが、防御が堅いと判断された場合は、西に進んで州都ジェファーソンシティを占領し、さらにカンザス州を横断して南のインディアン準州に向かい、物資を奪取するというものでした。

プライスは1864年8月28日にアーカンソー州カムデンを出発し、9月19日にミズーリ州に侵入、連日ミズーリ州民兵隊と小競り合いを繰り返しました。

対戦勢力

プライスは「ミズーリ軍」と呼ばれる騎兵隊を率いており、総勢12,000名でしたが、作戦開始当初、その3分の1は武装していませんでした。部隊はジェイムズ・F・ファガン少将、ジョン・S・マーマデューク少将、ジョセフ・O・シェルビー准将が指揮する3個師団で構成されました。

北軍は民兵隊に加え、アンドリュー・J・スミス少将の第16軍団と、アルフレッド・プレソントン少将の騎兵師団が派遣されました。当初スミス軍団はジョージア州のシャーマン軍に加わる予定でしたが、プライスの襲撃に対応するためミズーリ州に派遣されました。陸軍参謀総長のヘンリー・ハレックは要請に応じ、スミス軍団を上流に向かわせました。10月中旬までには、新設された境界軍の指揮官サミュエル・R・カーティス少将（ピーリッジの戦いでプライスの旧敵）の指揮下で、カンザス州境から追加部隊が到着し、総勢約35,000名となりました。

戦闘

ダビドソン砦の戦い（1864年9月27日）

北軍のトマス・ユーイング・ジュニア准将は援軍と共に、プライス軍の前進を阻止するため、セントルイスからミズーリ州アイアントンに向かう鉄道を下りました。プライス軍は9月27日の朝に攻撃を開始し、北軍をダビドソン砦まで後退させました。プライス軍は何度も砦を急襲しましたが失敗し、大きな損失を出しました。夜の間に、北軍は砦を放棄しました。この戦闘で、プライスは大きな損失を被り、また北軍に態勢を立て直すための時間を与えてしまいました。

グラスゴーの戦い（10月15日）

プライスはグラスゴーにある武器倉庫を襲撃するため、部隊を派遣しました。10月15日の夜明け前、南軍の砲撃が開始され、北軍は町の外のヒアフォードヒルの防御陣地に後退しました。南軍は防御陣地を突破し、北軍のチェスター・ハーディング大佐は降伏しました。プライス軍は町に3日間滞在し、新しい物資と武器を確保しました。

第二次レキシントンの戦い（10月19日）

プライスのミズーリ川沿いの行軍は遅く、北軍は集結する時間を得ました。10月19日、プライス軍はレキシントンに接近し、北軍の前哨隊と衝突しました。北軍は抵抗しましたが、最終的にはプライス軍が北軍を町の郊外まで押し出し、追撃しました。北軍はプライス軍を完全に阻止することはできませんでしたが、南軍の行軍をさらに遅らせることができました。

リトルブルー川の戦い（10月21日）

10月21日、北軍はリトルブルー川で南軍を迎え撃ちましたが、勢力で勝る南軍に押され、インデペンデンスまで後退しました。この戦闘で南軍は前進を遅らせられましたが、カーティス指揮下の北軍は増援を得ました。

第二次インデペンデンスの戦い（10月22日）

10月22日、プライス軍は西へ進み、プレソントンの北軍騎兵隊と遭遇しました。南軍は攻撃を仕掛けましたが、プレソントンの行動がプライス軍に影響を与え、南軍は輜重隊をスコット砦道路のリトルサンタフェまで送らざるを得ませんでした。

バイラムズフォードの戦い（10月22日-23日）

プライス軍はカンザスシティやレブンワース砦を目指していましたが、カーティスの境界軍に西進を阻まれ、プレソントンの騎兵師団に後衛を圧迫されていました。バイラムズフォードは戦略的に重要な場所であり、プライス軍の輜重隊が渡河するのに必要でした。10月22日、ブラント師団が川西岸で防御陣を構築しましたが、南軍は側面攻撃で北軍を後退させました。10月23日、プレソントン隊はバイラムズフォードでマーマデューク隊を攻撃し、南軍はウェストポート方向に後退しました。

ウェストポートの戦い（10月23日）

プライスはカーティス軍とプレソントン隊に対応する必要があり、まずウェストポートでカーティス軍を攻撃することを選びました。南軍は4時間に及ぶ激戦を繰り広げましたが、北軍の前線を突破できず、南に後退しました。ウェストポートの戦いはプライスの襲撃の行方を決定づける戦いとなり、南軍はこの時点から撤退を始めました。

メルダジーンの戦い（10月25日）

プライス軍が南に後退する中、プレソントン隊はカンザス州まで追撃し、メルダジーン川岸で南軍を攻撃しました。プレソントン隊は南軍の前線を叩き、後退させました。

マインクリークの戦い（10月25日）

マインクリークで、プレソントン隊は南軍の輜重隊に追いつき、騎兵攻撃を仕掛けました。南軍は包囲され、マーマデュークとキャベルの二人の将軍を含む約600名が捕虜になりました。プライス軍は大きな損失を被り、敗北が決定的になりました。

マーミトン川の戦い（10月25日）

プライス軍はマーミトン川を渡ろうとして再び立ち往生しました。プレソントン隊が攻撃を仕掛け、プライス軍は撤退を続けました。この時点で、プライス軍はほぼ崩壊状態に陥っていました。

第二次ニュートニアの戦い（10月28日）

プライス軍の残存部隊はニュートニアで休息していましたが、ブラントの北軍に急襲されました。シェルビー師団が交戦し、残りの南軍はインディアン準州へ撤退しました。北軍は南軍を後退させましたが、完全な捕獲には失敗しました。

戦闘後

プライス軍はアーカンソー州に撤退し、インディアン準州、テキサス州を経由して、12月2日にわずか6,000名の残存兵と共にアーカンソー州に戻りました。プライスはカービー・スミスに、1,434マイルの行軍、43度の戦闘と小競り合い、3,000名の北軍兵の捕獲、18門の大砲の捕獲、ミズーリ州の1,000万ドル相当の資産の破壊を報告しました。しかし、自軍の損失は1,000名と主張しましたが、実際には6,000名近くが失われていました。

プライスの襲撃作戦は完全に失敗し、北軍の勝利を確実なものにし、リンカーンの再選に貢献しました。この戦いは、ミシシッピ川流域における最後の主要作戦となり、南北戦争の終結を加速させました。

関連項目

ミシシッピ川流域戦線

参考文献

Eicher, David J., The Longest Night: A Military History of the Civil War, Simon & Schuster, 2001, ISBN 0-684-84944-5.
Foote, Shelby, The Civil War, A Narrative: Red River to Appomattox, Random House, 1974, ISBN 0-394-74913-8.
* National Park Service Battle Summaries

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