プログレスM-65

プログレスM-65

プログレスM-65（Progress M-65）は、ロシアのプログレス補給船の一機として、2008年に国際宇宙ステーション（ISS）への補給任務を担いました。この補給船は、プログレス-Mバージョンの11F615A55タイプにあたり、シリアル番号365として製造されました。NASAではこのミッションをプログレス30（Progress 30）、略称30Pと呼称しています。

飛行の軌跡

プログレスM-65は、2008年9月10日19時50分（GMT）にカザフスタンのバイコヌール宇宙基地、Site 1/5から、ソユーズ-Uロケットによって宇宙へと旅立ちました。

国際宇宙ステーションへのランデブーとドッキングは、当初2008年9月12日21時01分（GMT）に予定されていました。しかし、アメリカ合衆国テキサス州に大型ハリケーン「アイク」が接近した影響で、ミッションの管制を担うジョンソン宇宙センター（JSC）が閉鎖される事態となりました。これにより、ドッキングは予定から5日間遅れることになり、実際のドッキングは9月17日18時43分（GMT）に行われました。M-65はISSのロシアモジュール「ズヴェズダ」の後方ポートに無事結合しました。この予期せぬ事態に備え、バックアップの管制センターとして、テキサス州オースティン近郊のホテルや、アラバマ州マーシャル宇宙飛行センターに要員が派遣され、管制業務が継続できる体制が敷かれました。

ISSとの結合を解除するアンドッキングについても、別の宇宙ミッションであるスペースシャトルSTS-125の準備とのスケジュール競合を避けるため、当初の計画より10日間前倒しされました。2008年11月15日16時19分（GMT）にISSから分離した後、プログレスM-65は単独で飛行を続け、「プラズマ・プログレス実験」と呼ばれる科学実験を実施しました。

任務の最終段階として、2008年12月8日8時2分（GMT）から142秒間エンジンの噴射を行い、軌道から離脱する軌道離脱マヌーバを実行しました。その後、機体は太平洋上空で地球大気圏に再突入し、その大部分が燃え尽きました。燃焼を免れた残骸は、同日8時49分頃（GMT）に太平洋上に着水したとみられています。

搭載された貨物

プログレスM-65は、国際宇宙ステーションで活動するクルーのために、様々な種類の物資を輸送しました。総重量は2,588kgに達し、その内容は多岐にわたりました。

具体的には、宇宙ステーションの姿勢制御や軌道維持に不可欠な推進薬、クルーの生命を支える食料や飲料水、呼吸に必要な酸素などが含まれていました。さらに、ISSでの科学研究活動に用いられる各種器具や実験装置も搭載されていました。特筆すべき貨物としては、宇宙船外活動で使用される新型の宇宙服である「Orlan-MK」もこのフライトでISSに届けられました。

このミッションを通じて、プログレスM-65はISSの長期滞在に必要な物資を滞りなく供給し、ステーションの継続的な運用と科学活動に貢献しました。計画外の調整があったものの、その任務を無事完了しました。

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