プログレスMS-11

プログレスMS-11（ロシア語名: Прогресс МC-11、NASAでの呼称: プログレス72P）は、国際宇宙ステーション（ISS）へ重要な貨物と補給物資を輸送するために、ロシア連邦宇宙局（ロスコスモス）によって運用された無人宇宙輸送船です。これは、長きにわたりISSへの生命線を担ってきたプログレス補給船シリーズにおける、記念すべき163回目の飛行ミッションにあたります。

「プログレスMS」型の特徴

本機は、先行するプログレスM型輸送船を基に開発された改良型である「プログレスMS」型に属します。このバージョンは2015年12月21日に初飛行を果たし、旧型に比べて特に航法装置や通信システムにおいて顕著な機能強化が図られています。

具体的には、以下のような点が改良されました：

人工衛星などを展開可能な新しい外部コンパートメントの追加（プログレスMS-03で初搭載）。各コンパートメントには最大4個の発射コンテナーを搭載できます。
ドッキング機構や密閉機構で使用される電気モーターに予備システムを追加し、冗長性を強化しました。
貨物コンパートメントのパネルを強化することで、微小隕石に対する防護能力が向上しています。
ロシアのルーチ中継衛星との連携機能により、地上局の視野外でもテレメトリーデータの送信や遠隔制御が可能になりました。
GNSS（全球測位衛星システム）を用いた自律航法により、地上局による軌道決定に頼ることなく、自身の位置情報や軌道パラメーターを正確に把握できるようになりました。
ISSとの間で直接無線データ交換を行う機能が導入され、リアルタイムでの相対的な位置情報の把握やナビゲーションが可能になりました。
ドッキング操作時の視認性を向上させる、新しいデジタル無線システムが採用されました。
ウクライナ製のChezara Kvant-V無線システムおよびアンテナシステムが、統合コマンド・テレメトリー・システム（UCTS）によって置き換えられました。
古いクルスAドッキングシステムが、より近代的なクルスNAデジタルシステムに更新されました。

打ち上げまでの経緯

プログレスMS-11の打ち上げ計画は、何度か変更を経験しています。当初、2014年の計画では2018年4月16日に予定されていました。しかし、2018年11月には、コメルサント紙が報じたところによると、EgyptSat-A衛星の打ち上げスケジュール調整に伴い遅延が発生し、2019年3月28日に打ち上げが求められる状況となりました。さらに、2019年1月のRIAノーボスチの報道では、打ち上げ日が2019年4月4日に再び延期されたことが伝えられました。

打ち上げとドッキング

最終的に、プログレスMS-11は計画された通りの2019年4月4日11時01分34秒（UTC）に、カザフスタン共和国にあるバイコヌール宇宙基地から、ソユーズ2.1aロケットを用いて成功裏に打ち上げられました。特筆すべきは、本機が打ち上げ後非常に短時間でISSへのドッキングを完了させたことです。打ち上げからわずか3時間22分後の同日14時22分26秒（UTC）には、ISSのピアースモジュールへの自動ドッキングに成功しました。

輸送された貨物

プログレスMS-11は、合計で約3,400kgに及ぶ多種多様な貨物および補給物資をISSへと運びました。この内訳は以下の通りです。

与圧貨物: 1,400 kg（ISS内部で保管・使用される消耗品、機器など）
燃料: 900 kg（ISSの軌道維持などに使用される推進剤）
圧縮空気: 47 kg
* 水: 420 kg（ロドニックシステム用の水）

これらに加え、Bioplenka、Konstanta-2、Produtsent、Mikrovir、Struktura、Biodegradatsiya、Kristallizatorといった複数の生命科学実験に関する機器や、水草を育てるためのFaza容器、教育実験Ryaskaのための関連照明装置なども搭載されていました。

任務の終了

ISSでの滞在期間を終えたプログレスMS-11は、2019年7月29日10時43分（UTC）にピアースモジュールからドッキングを解除しました。その後、地球の大気圏に再突入し、その過程で機体の大半は燃え尽きました。残ったデブリは、同日中に安全確保のため太平洋上の予定された海域に落下しました。

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