プログレスMS-29

プログレスMS-29（ロシア語: Прогресс МС-29、ロシア製造番号459、NASA呼称プログレス90P）は、国際宇宙ステーション（ISS）へ補給物資を届けるために、ロシアの宇宙機関ロスコスモスが運用する無人宇宙補給船です。プログレス宇宙船としては、これが記念すべき182回目の飛行となりました。

このミッションは、2024年11月21日12時22分23秒（協定世界時UTC、射場現地時間では17時22分23秒AQTT）に開始されました。プログレスMS-29は、カザフスタン共和国に位置するバイコヌール宇宙基地の31番射点から、ソユーズ2.1aロケットによって宇宙へと送り出されました。約2日間の軌道飛行を経て、同年11月23日14時31分16秒（UTC）に、ISSのポイスク・モジュール天頂側ポートへのドッキングを成功させました。

しかし、ドッキング後、ISSのクルーがプログレス補給船のハッチを開放しようとした際、船内から異臭が感知され、飛沫による汚染の可能性も疑われる事態となりました。安全のため、クルーは直ちにハッチを閉め、ISSの換気システムなどを稼働させて、船内の空気に含まれる可能性のある有害物質の除去に取り組みました。

この異臭の原因については、複数の見解が示されました。NASAは、プログレスMS-29の加圧貨物区画内に搭載されていた物質から発生したガスが原因である可能性が高いと示唆しました。一方、ロシアの宇宙産業関係者の一部からは、2024年11月19日にISSから分離した前任のプログレスMS-27補給船の運用に関連している可能性が高いとの推測も出されました。この説では、地上管制が、推進剤をISSのタンクへ移送するための配管を分離前に十分にパージしなかったため、毒性の強いハイパーゴリック推進剤が配管内に残留し、MS-27分離時にドッキング機構に漏洩した可能性を指摘しています。プログレスMS-29が到着した際、このドッキング機構に残っていた推進剤がハッチ内に閉じ込められ、ハッチ開放時にISS船内へ侵入したのではないかと考えられています。

その後の調査と対応を経て、ハッチは11月25日に再び開けられることとなり、プログレスMS-29に搭載されていた物資の荷下ろしは計画通りに進められました。

今回のミッションで、プログレスMS-29は打ち上げ前に総計2,487キログラムの貨物および補給品を搭載していました。積荷の具体的な内訳は以下の通りです。

与圧貨物：1,155 kg
これはクルーが直接アクセスできる区画に搭載されており、食料、飲料水、空気といった消耗品のほか、ISSの維持管理や科学研究に必要な機材が含まれています。
燃料：869 kg
飲料水：420 kg
* 窒素ガス：43 kg

燃料、飲料水、窒素ガスなどの非与圧セクションに搭載された資源は、ステーション内部のシステムや空気環境を維持するために、自動化されたプロセスを通じてISSのタンクへと移送されます。

このように、異臭発生という予期せぬ出来事に見舞われたものの、プログレスMS-29はISSへの重要な補給任務を遂行しました。無人宇宙飛行は、ISSの長期的な運用を支える上で不可欠な要素となっています。

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