ブロマイド

ブロマイドの歴史と文化

ブロマイドとは、主にスターの肖像を印刷した印画紙を指します。この用語はもともと英語の「Bromide」に由来していますが、日本では臭化銀を用いた印画紙を指す和製英語として使われています。さらに、ブロマイドは人気俳優や歌手、スポーツ選手といったスターたちの肖像写真として一般に知られるようになりました。印画紙に焼き付けた肖像写真は、特に「プロマイド」とも呼ばれています。

日本においてのブロマイドの起源は、江戸時代にさかのぼります。浮世絵の技術を駆使して作られた「役者絵」や「相撲絵」は当時の人気俳優や力士の肖像を描き、広く親しまれました。このような浮世絵は、やがて写真技術の普及とともに、写真に置き換わることになります。そして、明治時代には手札型の力士や歌舞伎俳優の写真が販売され始めましたが、この時期にはまだ「ブロマイド」という呼称は使われていませんでした。

大正時代の1920年に、日活の尾上松之助のプロマイドが「プロマイド第1号」として登場しました。翌年には、松竹キネマが蒲田撮影所を設立し、当時の人気女優の写真を大量に生産しました。特に、栗島すみ子のプロマイドは販売量が非常に多く、一日に4千枚も売れたという記録が残っています。

その後、ブロマイドは収集品としても広く知られるようになり、浅草の「マルベル堂」がその普及に貢献しました。マルベル堂から発売された「時代劇スタア」のプロマイドは特に人気があり、林長二郎（長谷川一夫）のプロマイドは、2年以上も売れ続けました。このように、ファンたちは自分の好きなスターのプロマイドを部屋に飾ったり、傷がつくのを気にしながら大切に扱ったりしていました。

興味深いことに、ブロマイドには「豆プロ」と呼ばれる小型のものも存在し、駄菓子屋で販売されていました。これらは封切り前後の時代劇のもので、スターの肖像や名場面が印刷されていました。豆プロは、トレーディングカードのように各枚数が紙袋に入っており、中身が分からないという点でもファンに人気がありました。

また、「ブロマイド」と「プロマイド」という用語の関係も興味深いもので、大辞泉などでは「訛ってプロマイドとも」と言及しています。日本におけるこの呼称の変化は、大正末期に映画俳優の肖像写真が商品として売り出される際に、「ブロマイド」という名称がふさわしくないと考えられ、語尾を変えたことによります。マルベル堂では、モノの原型を「ブロマイド」とし、それを写真にした製品を「プロマイド」として区別していました。

1945年から1990年にかけては、男性俳優、女性俳優、男性歌手、女性歌手の部門ごとに月間の売上実績が公表されていました。売上第1位を獲得した回数の最多記録は、西城秀樹と岡崎友紀の46回です。これにより、ブロマイドは単なる収集品にとどまらず、人気を競う文化の一部となりました。

これらのブロマイドは、時代を反映する貴重なアイテムともなり、スターたちの活躍や当時の流行を知る手がかりです。現在でも、ブロマイドは様々な形で愛され続けており、文化の一部として息づいています。

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