プロヴァンス級戦艦

プロヴァンス級戦艦：フランス海軍の誇りと悲劇

プロヴァンス級戦艦、あるいはブルターニュ級戦艦と呼ばれるこの艦級は、第一次世界大戦前夜、フランス海軍が建造した最初の超弩級戦艦です。クールベ級戦艦を改良した設計で、船体構造の大部分は共通しています。最大の違いは主砲で、クールベ級の12インチ砲から13.5インチ砲へと強化された一方、砲塔数は6基から5基に減少しました。5基の主砲塔は船体の中央線上に配置され、重厚な艦影を形成していました。

誕生の背景：ドレッドノート革命と建艦競争

20世紀初頭、フランス海軍はレピュブリク級やリベルテ級、ダントン級といった戦艦を建造していましたが、イギリス海軍が革命的な戦艦「ドレッドノート」を完成させたことで、海軍強国間の建艦競争は激化します。フランスも1910年計画で建造されたクールベ級戦艦を保有していましたが、列強諸国では既に13.5インチ以上の主砲を持つ超弩級戦艦が登場していました。プロヴァンス級戦艦は、この状況に対抗するためにクールベ級の設計を基に、13.5インチ連装砲塔5基を搭載するなど、近代化が図られたのです。しかし、竣工時には既に15インチ砲を搭載した戦艦が登場するなど、フランス海軍の遅れは依然として解消されていませんでした。

造船と輸出計画：ギリシャとの関係

バルカン半島ではオスマン帝国とギリシャ王国が対立しており、両国とも積極的に軍備増強を進めていました。ギリシャ海軍はフランスにプロヴァンス級戦艦の輸出仕様を発注し、「ヴァシレフス・コンスタンティノス」の建造が始まりました。しかし、ギリシャの予算不足により建造は中止され、フランス海軍が取得したのち「サヴォイア」と改名されますが、第一次世界大戦の勃発により建造は最終的に中止されました。フランス海軍はプロヴァンス級の建造を3隻（輸出仕様1隻含む）で打ち切り、次世代戦艦であるノルマンディー級やリヨン級の建造を計画しますが、第一次世界大戦によりこれらの建造計画は全て中止されました。

艦形と武装：重厚な巨艦

プロヴァンス級は長船首楼型船体を持ち、艦首は垂直に切り立った形状でした。前弩級時代の複雑な艦上構造物は簡略化され、すっきりとした印象です。主砲は新設計の「1912年型34cm(45口径)砲」を連装砲塔に収め、5基搭載。副砲には「カネーModel 1910 13.8cm(55口径)速射砲」22門、対水雷艇用として47mm単装速射砲7門、魚雷発射管4基などを装備しました。

防御力：堅牢な装甲

防御はクールベ級と同様の全体防御方式を採用。水線部の舷側に270mm（艦首艦尾部180mm）の装甲を施し、主砲塔前盾は400mm～250mm、バーベット部は270mmと重装甲でした。甲板にも三層に渡って装甲が施され、防御力は高いものでした。

近代化改装：性能向上への努力

海軍休日時代には幾度かの近代化改装が行われました。マストの改良、射撃指揮装置の更新、主砲仰角の増加による射程延伸、主砲弾の重量化、ボイラー更新による速力向上、対空兵装の強化などが行われ、性能が着実に向上しました。しかし、改装は他国と比較して小規模にとどまりました。

第二次世界大戦：栄光と終焉

第二次世界大戦では、高速戦艦がドイツ海軍のポケット戦艦狩りに奔走する中、プロヴァンス級はフランス本国海域や地中海で活動しました。1940年、イタリア参戦により、プロヴァンスとブルターニュはアルジェに、ロレーヌはアレキサンドリアに配置されました。フランス降伏後、メルス・エル・ケビール海戦でブルターニュは撃沈、プロヴァンスは大破しました。ロレーヌはアレキサンドリアで抑留された後、自由フランス海軍に所属し、ノルマンディー上陸作戦やトゥーロン攻略作戦に参加しました。プロヴァンス級ではロレーヌのみが戦後まで生き残り、1953年に退役しました。

まとめ：フランス海軍戦艦史における足跡

プロヴァンス級戦艦は、フランス海軍が超弩級戦艦建造において経験した苦悩と、その後の近代化への努力、そして第二次世界大戦での悲劇的な結末を象徴する艦級と言えるでしょう。その艦歴は、フランス海軍史、ひいては世界海軍史において重要な一章を刻んでいます。

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