メルス・エル・ケビール

メルス・エル・ケビール：地中海の戦略拠点の歴史

メルス・エル・ケビールは、アルジェリア西部に位置する地中海の港湾都市です。アラビア語で「大きな港」を意味するその名のとおり、古くから地中海貿易において重要な役割を果たしてきました。

古代から近世：覇権争いの舞台

この地の歴史は古く、ローマ帝国時代には既に港湾都市として栄えていました。その後、ムワッヒド朝、ザイヤーン朝といった北アフリカの王朝による支配を経て、15世紀には海賊の拠点となります。その後、オスマン帝国やポルトガル、スペインといったヨーロッパ列強が支配権を争いました。特にスペインは16世紀初頭、枢機卿フランシスコ・ヒメネス・デ・シスネロス率いる軍勢によってメルス・エル・ケビールを占領、隣接するオラン攻略の足掛かりとしようとしましたが、災害に見舞われ計画は頓挫します。その後も、スペインとオスマン帝国の支配が入れ替わるなど、複雑な歴史を歩んできました。

18世紀には再びスペインが支配下に置きますが、1792年にはアルジェ知事へ売却されました。

近代：フランス支配と独立後

1830年、フランスがアルジェリアを植民地化すると、メルス・エル・ケビールもその支配下に置かれ、サン・タンドレ・ド・メルス・エル・ケビールと改名されました。フランスは港湾施設の拡張や灯台の建設などを行い、軍事的にも重要な拠点として利用しました。

しかし、第二次世界大戦中の1940年7月3日、この地でイギリス海軍とヴィシー・フランス海軍の間でメルセルケビール海戦が発生。激戦の末、フランス艦隊は壊滅的な打撃を受けました。この海戦は、第二次世界大戦における重要な転換点の一つとなりました。

アルジェリア独立後も、1962年のエビアン協定によってフランス軍は港湾の使用権を獲得し、しばらくは軍事基地として機能していましたが、5年後に撤退しました。

オランとの関係

メルス・エル・ケビールは、オランという主要都市のすぐ西に位置しており、その歴史と運命はオランと深く結びついています。両都市は地理的に近接しているため、歴史上、互いに影響を与え合いながら発展してきました。スペインによる支配、オスマン帝国との関係、そしてフランスによる植民地支配など、多くの歴史的出来事を共有しています。また、港湾都市としてのメルス・エル・ケビールと商業都市としてのオランは、経済的にも密接な関係を築いてきました。

結論

メルス・エル・ケビールは、ローマ時代から現代に至るまで、地中海における戦略的に重要な港湾都市として、数多くの出来事を経験してきました。古代からの歴史、ヨーロッパ列強の覇権争い、そしてアルジェリア独立後の変遷など、その歴史は複雑で多様であり、地中海地域の国際関係や歴史を理解する上で重要な場所と言えるでしょう。

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