プロートゲネイア

プロートゲネイア

ギリシア神話に登場するプロートゲネイア（古希: Πρωτογένεια, Prōtogeneia）という名前は、複数人の女性に用いられています。長母音を省略してプロトゲネイアとも表記されるこの名前を持つ人物のうち、特に以下の三名がよく知られています。

1. デウカリオーンを父に持つプロートゲネイア
2. カリュドーンを父に持つプロートゲネイア
3. アテーナイ王エレクテウスを父に持つプロートゲネイア

これらのプロートゲネイアはそれぞれ異なる系譜を持ち、関連する神話も異なっています。

デウカリオーンの娘プロートゲネイア

最初にご紹介するのは、人類の祖とされるデウカリオーンとその妻ピュラーの娘であるプロートゲネイアです。彼女はヘレーンやアムピクテュオーンといった兄弟姉妹を持ちます。このプロートゲネイアは、全知全能の神ゼウスとの間にアエトリオスとオプースをもうけたと伝えられています。また、別の伝承では、ロクロスとの間にオプースを生まれたとも語られています。この系譜は、ギリシア世界の各民族の祖先に関わる重要な位置を占めています。

カリュドーンの娘プロートゲネイア

次に挙げられるのは、エートーリア地方のカリュドーンの王カリュドーンと、アミュターオーンの娘アイオリアーの間に生まれたプロートゲネイアです。彼女にはエピカステーという姉妹がいました。このプロートゲネイアは、戦いの神アレースとの結びつきを持ち、彼との間にオクシュロスという息子をもうけました。オクシュロスは後の時代にエリス地方の建国に関わるとされる人物であり、このプロートゲネイアもまた、ギリシア神話の系譜において重要な位置を占める人物の一人です。

エレクテウスの娘プロートゲネイア

三番目のプロートゲネイアは、アテーナイの王エレクテウスの娘です。彼女にはパンドーラーという姉妹がいました。このプロートゲネイアの物語は、アテーナイがエレウシースとの間で繰り広げた戦争と深く関わっています。

当時、アテーナイはエレウシースと戦火を交えていましたが、エレウシース側にはトラーキア軍を率いる勇将エウモルポスが加勢していました。彼の強力な支援により、アテーナイ軍は次第に不利な状況に追い込まれていきます。窮地に立たされたエレクテウス王は、この戦争に勝利するための方法を神託に尋ねました。神託は、エレクテウス自身の娘を生贄として捧げれば勝利できる、と告げました。

王は神託に従い、長女であるプロートゲネイアと彼女の姉妹パンドーラーを連れて、アテーナイのアクロポリス近くにあるヒュアキントスの丘へ向かいました。そこで、父であるエレクテウス自身の手によって、二人の娘は犠牲として殺されました。この悲劇的な死の後、プロートゲネイアとパンドーラーの姉妹は、犠牲となった丘の名にちなんで「ヒュアキンティデス」と呼ばれるようになりました。彼女たちの犠牲はアテーナイに勝利をもたらしたと語られています。

このように、「プロートゲネイア」という名前は、異なる時代、異なる地域、そして全く異なる運命をたどった三人の女性によって共有されています。それぞれの物語は、ギリシア神話の多様な側面を示しています。

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