ヘラクレア・ミノア

ヘラクレア・ミノア:古代シチリアの興亡の都市



ヘラクレア・ミノア(古代ギリシア語: Ἡράκλεια Μινῴα; イタリア語: Eraclea Minoa)は、シケリア(シチリア)南岸、ハリカス川(現在のプラティニ川)の河口に位置した古代ギリシアの植民都市です。アクラガス(現在のアグリジェント)の西25キロメートルに位置し、その遺跡はアグリジェント県カットーリカ・エラクレーアのエラクレア・ミノア集落近くに存在します。考古学的調査によれば、紀元前6世紀中盤に建設され、紀元1世紀初頭に放棄されたと推定されています。

都市の歴史



建設と初期



当初、この都市はギリシア植民都市セリヌスの交易拠点として設立されました。その後、カルタゴの支配下に入り、アクラガス領の境界都市となりました。紀元前405年カルタゴとシュラクサイの僭主ディオニュシオス1世との条約によって、正式にカルタゴの従属都市となります。

相次ぐ支配者の変遷



紀元前397年にディオニュシオスが奪還しましたが、紀元前383年には再びカルタゴの支配に戻りました。シュラクサイの政治家ディオンは紀元前357年にここに上陸し、シュラクサイのディオニュシオス2世との戦いに向かいました。紀元前309年にはアクラガスが奪回しますが、すぐにシュラクサイの僭主アガトクレスの勢力に屈しました。紀元前277年には、一時的にエピロス王ピュロスがシュラクサイから奪回しています。

伝説



この都市は、その起源に関して二つの伝説を持っています。

ヘーラクレースの伝説: ヘーラクレースが地元の英雄エリュクスとのレスリング試合に勝ち、シケリア西部全体の所有権を得ましたが、それを子孫のためにとっておきました。
ミーノースの伝説: クレタ島の王ミーノースがダイダロスを追跡してシケリアに来た際に、ハリカス川の河口に上陸して街を造り、ミノアと名付けました。別の説では、ミーノースの死後、彼の部下達が街を建設してミノアと名付けたと言います。

ヘラクレイデスは、そこには先住民の都市が既にあり、その都市の名前はマカラであったと付け加えています。この二つの名前が組み合わされるのは、ずっと後のことです。

紀元前6世紀



街の建設に関する記録はありませんが、考古学的調査では紀元前6世紀中頃と推定されています。街に関する最初の記述は、ギリシア植民都市セリヌスがミノアという名前で小さな交易拠点を建設したというものです。紀元前510年頃、スパルタの王子ドリエウスが、伝説上の祖先であるヘーラークレースに与えられた土地を取り戻そうとして上陸したのはここでした。しかし、カルタゴ人とセゲスタ人に敵対され、エリュクス近くの戦闘で壊滅的な敗北を喫して殆どが戦死してしまいました。脱出に成功したエウリレオンがミノアを支配しヘラクレアと名付けたというのが、その名前に関する最初の記載です。このスパルタ人の植民が行われてから、ヘラクレアという名前が一般に使われるようになり、他のヘラクレアと呼ばれる街との区別のためにミノアの名前との組み合わせで、ヘラクレア・ミノアと呼ばれることとなりました。

紀元前5世紀 - 紀元前4世紀



ディオドロスによると、新しく建設されたヘラクレアは急速に発展しましたが、カルタゴがその勢力の増長を恐れたために破壊されたとしています。紀元前405年の講和条約で、ヘラクレア・ミノアの領域はカルタゴ領とされました。シュラクサイの政治家ディオンが紀元前357年にここに上陸したという記録があり、アクラガス領土の小さな街ですが、カルタゴの支配下にあったとされています。

紀元前3世紀



紀元前309年、アクラガスのクセノディクスがカルタゴ、シュラクサイ双方からの独立を宣言すると、ヘラクレアもこれに同調しました。しかし紀元前305年にアガトクレスに奪取されました。紀元前278年、エピロス王ピュロスの遠征時、ヘラクレアは再びカルタゴ支配下にありましたが、ピュロスによって攻略されました。第一次ポエニ戦争においては、カルタゴの将軍ハンノがヘラクレアに上陸して占領し、そこからアクラガスに向かいました。紀元前256年、ローマ艦隊によるカルタゴ本国侵攻を阻止するため、カルタゴ海軍は350隻からなる艦隊をヘラクレアに定係させていましたが、ローマに大敗しました。このことから、ヘラクレア・ミノアはこの時点におけるカルタゴ海軍の主要な軍港となっていたことが分かります。

ローマ時代



戦後シケリアはローマのシキリア属州となったため、ヘラクレアも当然ローマの支配下におかれました。第一次奴隷戦争で大きな損害を受けましたが、新たな移住者を受け入れました。しかしその後、政治は腐敗していきました。1世紀の地理学者ポンポニウス・メラは、シキリア南岸の3つの重要都市の1つであると述べています。プトレマイオスによる記述がヘラクレアに対する最後の記録です。

考古学



ヘラクレア・ミノアの場所を最初に特定したのは、16世紀の歴史家トマッソ・ファツェーロでした。プラティニ川の河口から数百ヤード南東に位置し、カポ・ビアンコと呼ばれています。20世紀の初頭に、紀元前6世紀から紀元前5世紀のものと推定されるネクロポリスが発見されました。1950年からは大規模な発掘が開始され、紀元前4世紀後半から紀元前1世紀後半にかけての住居跡と紀元前4世紀後半のギリシア劇場が発見されています。1世紀初頭から製造されているアレタイン式陶器が発見されていないことから、それ以前に都市は放棄されたものと推定されています。

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