ヘルベルト・バッケ

ヘルベルト・フリードリヒ・ヴィルヘルム・バッケ（Herbert Friedrich Wilhelm Backe, 1896年5月1日 - 1947年4月6日）は、ナチス・ドイツの政治家であり、食糧相を務めた人物です。また、親衛隊（SS）の将軍でもあり、最終階級は親衛隊大将（SS-Obergruppenführer）にまで昇進しました。

生い立ちと初期のキャリア

バッケは、当時ロシア帝国領だったグルジアのバトゥミで、ドイツ人実業家アルブレヒト・バッケの次男として生まれました。五人兄弟の家庭で育ち、父アルブレヒトは1907年に自殺しています。彼はチフリス（現トビリシ）のドイツ人福音教会学校やロシア人学校で教育を受けましたが、第一次世界大戦の勃発により、敵性住民として捕虜収容所に収容されました。ロシア革命後、釈放されたバッケは、1918年にドイツに帰国し、ドイツ軍に志願兵として入隊しましたが、前線には出ませんでした。

戦後、1919年にアビトゥーアに合格し、1920年から1923年までゲッティンゲン大学で農業を学びました。その後、1924年から1927年にかけてハノーファーの工科単科大学で地理学を専攻しました。大学卒業後は、農場管理人や小作農として働きました。

ナチス党への入党と昇進

バッケは、大学在学中の1922年から1923年にかけて国家社会主義ドイツ労働者党（ナチス党）の武装組織である突撃隊（SA）に参加しました。1925年にはナチス党に入党しましたが、一時的に離党し、その後1931年に再入党しました。入党後、バッケは自身の経歴を生かし、党の農民指導者として頭角を現しました。

1933年、ナチス党が政権を掌握すると、バッケはリヒャルト・ヴァルター・ダレ食糧相の下で食糧省次官に任命されました。しかし、彼はダレのイデオロギーには共感せず、テクノクラートとしての側面を強く持っていました。また、同年には親衛隊にも入隊し、人種及び移住本部に配属されました。親衛隊での昇進も早く、1942年には親衛隊大将にまで昇進しています。

食糧政策と「飢餓計画」

バッケは、「食糧独裁者」とも呼ばれるほどの権力を持ち、ドイツの食糧政策を一手に担いました。1941年には、ドイツの食糧不足の危機をヒトラーに進言し、四カ年計画庁と共に報告書を提出しました。この報告書には、戦争遂行のためにはソ連占領地域からの食糧収奪が必要であり、結果として数百万人のスラブ人が餓死するという見積もりが含まれていました。このバッケの計画は「飢餓計画」と呼ばれ、ナチス・ドイツの侵略政策の残酷さを象徴するものとなりました。バッケを含むナチス高官たちは、ドイツの食糧確保を最優先し、スラブ人の餓死を無視しました。

1942年、ダレ食糧相が病気療養に入ると、バッケが食糧相職務代理となり、1944年4月1日に正式に食糧相に就任しました。

戦後と死

ヒトラー自殺後、カール・デーニッツ大統領のフレンスブルク政府でも食糧相に留任しましたが、間もなく連合軍によって逮捕されました。バッケはニュルンベルク継続裁判にかけられることになりましたが、1947年4月6日に収監されていたニュルンベルク留置場において自殺しました。

人物像と信仰

バッケの身長は175センチでした。信仰はもともとプロテスタントでしたが、1942年に親衛隊の方針に従ってキリスト教会を離れました。

キャリア

親衛隊における階級は、1933年10月1日の親衛隊少佐から始まり、1942年11月9日に親衛隊大将へと昇進しました。受章歴としては、戦功十字章、黄金ナチ党員バッジ、ナチ党勤続章、親衛隊勤続章、親衛隊全国指導者名誉長剣、親衛隊髑髏リング、記念メダル、SAスポーツ勲章、オリンピック名誉勲章、イタリア王冠勲章、聖マウリッツィオ・ラザロ勲章などがあります。

バッケは、そのキャリアを通じてナチス・ドイツの食糧政策に深く関わり、その政策は多くの人々の命を奪いました。彼の生涯は、ナチス政権下における官僚の役割と、戦争における倫理的責任を考える上で重要な事例の一つと言えるでしょう。

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