ヘロド系

ヘロド系：サラブレッドの三大父系の系譜と、その栄枯盛衰

ヘロド系は、サラブレッドの父系を分類する際に用いられる分類の一つであり、三大父系の一つとして知られています。他の三大父系にはエクリプス系とマッチェム系があります。本稿では、ヘロド系の歴史、特徴、そして現代における現状について詳細に解説します。

17世紀から18世紀：バイアリータークからヘロドへ

ヘロド系の起源は、1688年にイギリスに輸入されたバイアリータークという馬に遡ります。バイアリーターク自体はそれほど優れた種牡馬ではありませんでしたが、その血統は孫の代に優れた競走馬を生み出し、父系として繋がって行きました。 18世紀には、ヘロド（キングヘロド）という非常に優れた種牡馬が登場します。ヘロドはイギリスで8回もリーディングサイアー（その年の種付け頭数から生まれた産駒の獲得賞金で上位にランクインする種牡馬）の座を獲得するなど、その活躍は目覚ましく、ヘロド系を一大勢力へと押し上げました。ヘロドの主要な子孫であるハイフライヤー、フロリゼル、ウッドペッカーの3頭は、それぞれ父系を繋いでいく上で重要な役割を果たしました。特にハイフライヤーは、ヘロドに匹敵するほど優れた種牡馬であり、イギリスで13回もリーディングサイアーとなりました。

19世紀：ハイフライヤー系とウッドペッカー系の競演

19世紀に入っても、しばらくの間はハイフライヤー系の勢いが続きました。サーピーターティーズルやその子孫であるウォルトン、ファントムといった名馬が活躍しました。しかし、1830年代に入るとハイフライヤー系の勢いは衰え始め、ウッドペッカー系が台頭してきます。サルタンやベイミドルトンなどの名種牡馬が活躍し、ヘロド系はエクリプス系と競い合うようにして勢力を保ちました。1870年代にはハイフライヤー系が再び勢力を伸ばす時期もありましたが、エクリプス系のセントサイモンの登場を機に、ヘロド系は衰退の一途をたどります。1900年頃には、イギリス国内ではハイフライヤー系とウッドペッカー系の両系統が消滅してしまいました。しかし、サーピーターティーズルの子孫はドイツに、ウッドペッカーの子孫はフランスに輸出され、それぞれの国でヘロド系の血統は生き残ることになります。アメリカにも、ヘロド系の子孫は早くから輸出されており、グレンコーやレキシントンといった名馬が活躍しました。

20世紀：フランスにおけるヘロド系の隆盛と衰退

19世紀末以降、ヘロド系はイギリスでは衰退しましたが、フランスではその勢力を維持しました。イギリスでヘロド系の衰退を憂慮した人々によって、フランスからヘロド系の馬が輸入され、繁殖が行われました。ザテトラークは20世紀初頭を代表するスピード馬として活躍しましたが、大勢力となるには至りませんでした。しかし、ザフライングダッチマンの子孫はフランスでますます栄え、クサールやトウルビヨンといった名馬を輩出しました。特にトウルビヨンは、フランスで3度リーディングサイアーとなり、その子孫であるジェベルも4度仏リーディングサイアーとなりました。トウルビヨンの血統はフランスのみならず、日本やオーストラリアなど世界各地に広まりました。しかし20世紀後半には、大種牡馬の死や後継種牡馬の不在、ノーザンダンサー系の台頭といった要因により、ヘロド系は再び苦境に立たされました。多くの分枝が断絶し、その数は激減しました。

21世紀：存続に向けた努力

21世紀に入り、ヘロド系は衰退の一途をたどっていますが、それでもなお、その存続に向けた努力が続けられています。2010年代以降も、いくつかの系統が辛うじて存続していますが、その数は非常に少ないです。日本でも、最後のヘロド系種牡馬であるギンザグリングラスが2023年に死亡したことにより、その数はさらに減少しました。現在では、障害競走馬として細々と残っている程度であり、存続の危機に瀕しています。

まとめ

ヘロド系は、サラブレッドの歴史において重要な役割を果たした父系の一つです。バイアリータークから始まり、ヘロド、ハイフライヤーといった名馬を輩出し、一時的に大きな勢力を誇ったものの、時代とともに衰退していきました。現在では、その存続が危ぶまれる状況となっていますが、関係者による努力が続けられています。ヘロド系の将来がどうなるのか、注目が集まっています。

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