ベイカー (サル)

ベイカーとエイブル：宇宙へ旅立った二匹のサル

1959年、アメリカ合衆国は宇宙開発競争において、重要な実験を行いました。それは、リスザルのベイカーとアカゲザルのエイブルを宇宙に打ち上げるというものでした。この記事では、二匹のサルがどのようにして宇宙飛行士に選ばれ、宇宙でどのような経験をしたのか、そしてその後の生涯について詳しく解説します。

宇宙飛行以前

アメリカでは、以前から動物を使った宇宙実験を行っていましたが、失敗が続いていました。ソ連に遅れをとっていたアメリカは、宇宙飛行の安全性を高めるため、新たな実験に臨むことになります。そこで選ばれたのが、ベイカーとエイブルでした。

ベイカーは、フロリダ州のペットショップで他の25匹のリスザルと共に購入され、海軍航空宇宙医学部に送られました。そこで、過酷な訓練とテストを受け、最終的に宇宙飛行士の候補として選ばれました。ベイカーは、その知性と穏やかな性格から「TLC（tender loving care）」という愛称で呼ばれていました。

当初、二匹はアルファとブラボーと呼ばれていましたが、後にエイブルとベイカーという名前に変更されました。

宇宙飛行

1959年5月28日、ベイカーとエイブルはジュピターロケットに搭載され、宇宙へ飛び立ちました。ベイカーは、ゴムとセーム革で裏打ちされたヘルメットとジャケットを着用し、呼吸計を装着した状態で、専用のカプセルに収容されました。カプセルには、生命維持装置として酸素ボンベや二酸化炭素吸収装置が備えられていました。

ロケットは38Gという加速度で高度480キロメートルまで上昇し、16分間の宇宙飛行を行いました。そのうち9分間は無重力状態でした。打ち上げられたのは、ケープカナベラル空軍基地の第26B発射施設で、2400キロメートル離れたプエルトリコ近くの大西洋に着水し、米海軍の艦艇によって回収されました。

この飛行では、ベイカーとエイブルの他に、アカパンカビ、ヒトの血液、大腸菌、玉ねぎ、マスタードとトウモロコシの種子、ショウジョウバエの蛹、酵母、ウニの卵子と精子など、様々な生物が搭載されました。

エイブルの死

宇宙飛行から4日後、エイブルは電極除去手術中に、麻酔による心房細動という非常に稀な症状で死亡しました。病理解剖では、死因となるような問題は見つかりませんでした。エイブルの遺体は剥製にされ、国立航空宇宙博物館に展示されています。

宇宙飛行後

ベイカーとエイブルは、1959年6月15日の『ライフ』誌の表紙を飾りました。ベイカーは、海軍航空宇宙医学部で展示されている間、同じ種のオスのビッグジョージとペアになり、後に結婚式を挙げました。その後、ベイカーはアラバマ州ハンツビルのアメリカ宇宙ロケットセンターに移り、博物館の訪問者を楽しませました。子供たちからは、毎日100〜150通の手紙が届いたと言われています。

ビッグジョージが亡くなった後、ベイカーは新たな伴侶としてノーマンを迎え、再婚しました。ベイカーは、宇宙飛行を行った5月28日を誕生日として祝われ、1984年には宇宙飛行25周年を記念して、お祝いをしてもらいました。

1984年11月29日、ベイカーは腎不全により亡くなりました。リスザルとしては長寿を全うしました。彼女の遺体は、アメリカ宇宙ロケットセンターの敷地内に埋葬され、墓石にはバナナが供えられています。

結論

ベイカーとエイブルの宇宙飛行は、宇宙開発における重要な一歩でした。ベイカーは、その後の生涯を通じて多くの人々に愛され、宇宙開発の象徴として記憶されています。

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