ベルト・オルタネーター・スターター

ベルテッド・オルタネーター・スターター (BAS) / インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター (ISG)

ベルテッド・オルタネーター・スターター（Belted Alternator Starter）は、略称でBASと呼ばれます。日本国内では、インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター（Integrated Starter Generator）という名称が一般的であり、こちらはISGと略されます。BAS/ISGは、自動車のエンジンに付属する発電機（オルタネーター）の機能を大幅に拡張した電動デバイスです。

概要と機能

従来のオルタネーターは、エンジンのクランクシャフトの回転をベルトを介して受け取り、車両の電装品に必要な電力を発電する役割を主に担っていました。BAS/ISGは、このオルタネーターとしての発電機能に加え、エンジンの始動機（スターターモーター）としての役割、そして走行をアシストするモーターとしての役割を一体化したものです。これらの機能も、従来通りエンジンのベルトシステムを利用して実行されます。

この単一のユニットが複数の役割を担うことで、車両の電動化を比較的シンプルな構造で実現可能にします。

BAS/ISGが提供する主要な機能は以下の通りです。

エンジンの始動: キー操作やプッシュスタートによる通常のエンジン始動を行います。
アイドリングストップからの再始動: 停車時にエンジンを停止させるアイドリングストップ機構において、スムーズかつ迅速なエンジンの再始動を行います。これは特に信号待ちなどでの停車・発進時に有効です。
走行アシスト: 車両の発進時や加速が必要な際に、モーターとして機能し、エンジンの駆動力を補助します。これにより、加速性能の向上やエンジンの負荷軽減に貢献します。
電力回生: 車両が減速する際などに、運動エネルギーを電気エネルギーに変換し、バッテリーに蓄えることで、エネルギーの無駄を減らします。

マイルドハイブリッドシステムへの応用

BAS/ISGは、それ単体でも上記の機能を発揮しますが、専用の高電圧バッテリー（二次電池）と組み合わせることで、マイルドハイブリッドシステムの中核部品となります。マイルドハイブリッドは、本格的なフルハイブリッドシステムに比べて構造がシンプルでコストも抑えられるため、既存の内燃エンジン車を効率的に電動化する手法として広く採用されています。

MILD HYBRIDシステムの構築により、以下のようなメリットが得られます。

燃費向上: アシスト機能によるエンジンの効率化や、回生エネルギーの活用により、燃料消費を抑えることができます。
騒音・振動の低減: 特にアイドリングストップからの再始動が静かでスムーズに行えるため、市街地走行などでの快適性が向上します。
* 排出ガスの削減: 燃費向上に伴い、CO2などの排出ガス削減にも寄与します。

主な導入事例

BAS/ISG技術は、国内外の多くの自動車メーカーで採用されています。

トヨタ自動車:

2001年、トヨタ自動車は11代目クラウンの一部モデルに、ISGを用いた「トヨタ・ハイブリッド・システム-M（THS-M）」を初めて搭載しました。このシステムは、36ボルトのバッテリーとISGを組み合わせたマイルドハイブリッドであり、エンジンのクランクプーリー部に電磁クラッチを追加することで、エンジン停止中であってもISGの電力でエアコンコンプレッサーを駆動できるという特徴を持っていました。

ゼネラルモーターズ (GM):

米国ゼネラルモーターズ（GM）も、2007年にBASを採用したハイブリッドシステムを導入しました。このシステムも36ボルトの電圧を採用し、BASがスターターとモーターアシストの機能を兼ねることで、搭載車種の燃費を最大で20%改善しました。このシステムは、サターン・ヴュー、サターン・オーラ、シボレー・マリブといったセダンやSUVモデルに採用されました。

まとめ

BAS/ISGは、従来の発電機を発展させ、始動機や電動機の機能を統合した、自動車電動化における重要な技術です。マイルドハイブリッドシステムの中核として、燃費改善、騒音低減、排出ガス削減など、内燃エンジン車の環境性能向上に貢献しており、今後もその採用は広がっていくと考えられます。

もう一度検索