ペトロ・カナダ

ペトロ・カナダ：カナダの石油・ガス企業の変遷

ペトロ・カナダ（Petro-Canada）は、かつてカナダを代表する石油・ガス企業でした。本社はアルバータ州カルガリーのペトロ・カナダ・センターにありました。2008年時点では、カナダ国内で売上規模11位を誇る大企業でしたが、2009年8月にサンコー・エナジー（Suncor Energy Inc.）との合併により、その歴史は新たな段階を迎えます。

合併後、社名はサンコーとなり、上流事業（石油生産・精製）はサンコー・エナジーとして、下流事業（ガソリン小売）では「ペトロ・カナダ」ブランドが使用されています。現在でもカナダ国内では、ペトロ・カナダのガソリンスタンドを見かけることができます。

歴史

ペトロ・カナダの設立は、1973年の第四次中東戦争に端を発します。当時、アルバータ州の石油産業がアメリカ企業に牛耳られている状況を危惧したトルドー政権は、石油産業における公営企業の創設を目指しました。そして、1975年に国営企業としてペトロ・カナダが誕生しました。

しかし、当時カルガリーでは、人口の多くがアメリカ系石油企業に関わっていたため、国営企業創設には敵対的な雰囲気が漂っていました。カナダ進歩保守党も創業に反対し、分割・売却の意向を示していました。しかし、アルバータ州外では、ペトロ・カナダはカナダのナショナリズムの象徴として国民に受け入れられていきました。

連邦政府とペトロ・カナダは、その人気を強化するため、1988年カルガリーオリンピックの招致活動を支援し、成功を収めました。その後、西部石油開発と東部大西洋のオイルサンド開発における主要企業として成長を遂げました。

ペトロ・カナダのガソリンスタンドの多くは、元BPカナダのスタンドを引き継いだもので、その後、ガルフやフィナ（Fina）のスタンドも買収しています。

1984年から1993年まで政権を担ったマルルーニー政権は、ペトロ・カナダを政策会社としてではなく、民間企業との健全な競争関係へと促しました。そして、1990年に政府はペトロ・カナダの民営化計画を発表し、1991年から株式を公開しました。2004年には、政府が保有していた全株式（19%）を売却し、完全民営化を果たしました。

2010年開催のバンクーバーオリンピックでは、ローカルスポンサー（ナショナル・スポンサー）として支援を行いました。

サンコー・エナジーとの合併

2009年3月、ペトロ・カナダはサンコー・エナジーとの合併計画を発表し、同年5月に両社株主の承認を得て、8月に合併が実施されました。

日本との関わり

日本国内では、ペトロ・カナダのブランドを見かける機会は多くありませんが、輸入された潤滑油が流通しています。潤滑油に関して言えば、ペトロ・カナダは2010年代後半まで、アメリカを含む北米地域のプラントにおいて、商業ベースでグループ3基油を継続的に製造する唯一のメーカーでした。

なお、ペトロ・カナダの潤滑油を製造するPetro-Canada Lubricants (PCLI)は、2017年にアメリカの石油会社en:HollyFrontierがサンコーから買収しており、資本的にはアメリカのブランドとなっています。

ペトロ・カナダは、国営企業として誕生し、民営化を経て、最終的にはサンコー・エナジーとの合併に至りました。その過程で、カナダのナショナリズムの象徴としての役割を果たし、石油・ガス産業の発展に貢献しました。現在では、ブランド名としてその名を残し、潤滑油などの製品を通じて、世界に展開しています。

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