ペドロ・ゴメス (イエズス会士)

ペドロ・ゴメス：桃山時代の日本に西洋の学問を伝えたイエズス会宣教師

ペドロ・ゴメス（1535年 - 1600年）は、16世紀後半の日本において、イエズス会宣教師として重要な役割を果たした人物です。スペインに生まれ、日本イエズス会の最高責任者である日本準管区長を務めました。

生涯

ゴメスはスペインのアンテケーラで生まれ、アルカラ・デ・エナーレスでイエズス会に入会。コインブラ大学で哲学や神学を教えました。1579年に東洋布教を志し、1583年に日本に渡航。

豊後地区で教鞭を執り、大友義統やペトロ岐部らに洗礼を授けました。1590年には日本準管区長に就任し、ルイス・フロイスやフランチェスコ・パシオを秘書として迎えました。彼はヴァリニャーノの適応主義に従いながらも、マニラからの托鉢修道会宣教師を援助するなど、独自の活動も展開しました。

1598年、長崎に落ち着き、1600年に同地で生涯を閉じました。葬儀では原マルティノが追悼説教を担当し、彼の後任としてパシオが日本準管区長に就任しました。

『講義要綱』とその内容

ゴメスの最も重要な業績は、コレジオの教科書として編纂された『講義要綱』です。これは、『天球論』、『霊魂論』、『カトリック教理要綱』の3部構成からなり、アリストテレス的宇宙論や霊魂論、カトリック神学を日本に紹介しました。

天球論

『天球論』では、アリストテレス・プトレマイオス型の宇宙論、すなわち天球説・天動説・地球球体説などを解説。クラヴィウスの『サクロボスコ天球論註解』などが参考にされました。本書は、西洋宇宙論を体系的に日本に伝えた最初の書物とされています。

霊魂論

『霊魂論』では、アリストテレスの『霊魂論』に基づき、霊魂、理性、感覚などを紹介。自由意志論や霊魂不滅性論証など、近世哲学・神学のトピックも取り上げられています。

カトリック教理要綱

『カトリック教理要綱』は、『講義要綱』の中核をなす最も長大な部分です。トリエント公会議を踏まえたカトリックの教義を中心に、神の存在証明、徳倫理学、三位一体論、偶像崇拝論、強制改宗論、信仰告白論などが論じられています。ゴメスは、日本の信徒が迫害を避けるために信仰を隠すことを条件付きで容認するなど、日本の状況に合わせた柔軟な対応を示しました。

その他の業績

ゴメスは、『マルチリヨの心得』や『スピリツアル修行』といった書物の執筆にも関わりました。これらの著作や書簡を通して、彼の思想や活動を知ることができます。

ペドロ・ゴメスは、西洋の知識やキリスト教の教えを日本に伝え、日本の文化や思想に大きな影響を与えた人物として、記憶されるべきでしょう。

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