ペルクナス

ペルクナス：リトアニア神話の雷神

ペルクナス（Perkūnas）は、リトアニア神話において最も重要な神の一柱とされる雷神です。ピクラス、パトリムパスと共に、主要な三神として崇められてきました。

起源と特徴

ペルクナスの起源は、スラヴ神話のペルーン、インド神話のパルジャニヤなどと同様に、印欧祖語の雷神に遡ると考えられています。ギリシア神話のゼウスに相当するとも言われ、雷を操る強大な神として畏れられました。

ドイツの年代記には「リトアニアのゼウス」と記され、北欧神話のトールのように、斧を武器に悪と戦う姿で描かれます。山羊に曳かれる二輪車に乗って天空を駆け巡るとも伝えられています。

雷神としての性格に加え、鍛冶神としての側面も持ち合わせています。リトアニアの伝承では、ペルクナスが鍛冶仕事をする様子が語られることもありました。

神々の世界のヒエラルキー

ペルクナスは、他の神々よりも上位に位置する、高尚で恐ろしい神とされていました。怒ると稲妻を放ち、黄金の樫の木をも真っ二つにすると言われています。月の神メヌオが、妻サウレがいながら暁の女神アウシュリネを愛した際には、その体を切り裂いて罰したという逸話も残っています。

ただし、A・ミエルジンスキーは、リトアニアの神々には格差の概念はなく、ペルクナスが他の神々より上位であるという解釈に否定的な見解を示しています。

信仰

16世紀初頭の年代記には、ロムヴァ神殿に神聖な樫の木があり、その洞にペルクナスの像が安置され、絶えず火が焚かれていたと記されています。

ペルクナスは、地域や部族によって異なる名前で呼ばれていました。ラトビアでは「ウェザイス」または「ウェザイス・デウス」（それぞれ「老人」「年老いた父」の意味）と呼ばれ、「天空で太鼓を鳴らす者」という異名もありました。

バルト地方では、雷はペルクナスの独り言や愚痴だと解釈されていました。しかし、リトアニアの人々はペルクナスを「親しい神」と呼びました。これは、リトアニアの古来の宗教が牧歌的で平和的な要素を持っていたことを示唆していると考えられています。

ペルクナスは、自然の力、正義、そして秩序を象徴する神として、リトアニアの人々に深く信仰されてきました。

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