ホセ・カレーラス

ホセ・カレーラス：情熱と感動を届けるテノール歌手

ホセ・カレーラス（Josep Maria Carreras Coll）は、1946年12月5日、スペインのバルセロナに生まれました。カタルーニャ語ではジョゼップ・マリア・カレーラス・コールと発音されます。彼は、ルチアーノ・パヴァロッティ、プラシド・ドミンゴと共に「三大テノール」として知られ、その情熱的な歌声で世界中の人々を魅了してきました。

幼少期からの音楽の才能

幼い頃から音楽的才能を発揮していたカレーラスは、8歳でスペイン国立放送に出演し、ヴェルディのオペラ『リゴレット』の中の有名なアリア『女心の歌』を歌い、初めて公の場で演奏を行いました。11歳になると、バルセロナのリセウ大劇場で、ファリャの『ペドロ親方の人形芝居』でボーイソプラノの語り手を務め、プッチーニの『ボエーム』では子役を演じました。

プロとしてのデビュー

十代でリセウ音楽院に進学し、音楽の専門教育を受けました。リセウ劇場でのデビューは、『ノルマ』のフラヴィオ役。この舞台で、主役のノルマを演じた著名なソプラノ歌手モンセラート・カバリェにその才能を見出されました。カバリェはカレーラスをドニゼッティのオペラ『ルクレツィア・ボルジア』に起用し、これがカレーラスにとって大きな成功のきっかけとなりました。

国際的な活躍

1971年、カレーラスは25歳でカバリェと共にロンドン・デビューを果たしました。その後数年間、二人は15以上のオペラで共演しました。1972年には、『蝶々夫人』のピンカートン役でアメリカデビューを飾り、1973年にはNHK招聘のイタリア歌劇団の一員として初来日しました。この来日公演では、レナータ・スコット主演の『ラ・トラヴィアータ』でアルフレード役を演じました。さらに、1976年のNHK招聘公演では、カバリェ主演の『アドリアーナ・ルクヴルール』でマウリツィオ役を演じ、日本の観客に新進歌手としての印象を強く残しました。

1974年には、ウィーン国立歌劇場に『リゴレット』のマントヴァ公役で、ロイヤル・オペラハウスには『椿姫』のアルフレード役で、そしてメトロポリタン歌劇場には『トスカ』のカヴァラドッシ役で、それぞれ初舞台を踏みました。翌年にはミラノ・スカラ座で『仮面舞踏会』のリカルド役でデビュー。28歳までに、24ものオペラで主役テノールを務めました。

世界的なスターへ

カレーラスの最大の魅力は、その情熱的で力強い歌唱にありました。高音や声量には不安定さも残しましたが、その魅力的な歌声は、パヴァロッティ、ドミンゴに次ぐオペラ界のスターへと押し上げました。童顔のルックスも彼の人気を支える要素の一つでした。当初はリリコの声質でしたが、後にスピント系の役にも挑戦し、高い評価を得ました。

白血病との闘い

キャリアの絶頂期にあった1987年、カレーラスは白血病と診断され、一時は回復の見込みがないと宣告されました。しかし、故郷バルセロナの病院での化学療法後、アメリカ・シアトルの病院で自身の骨髄を用いた自己移植を行い、奇跡的な回復を遂げました。この闘病生活は、彼の人生に大きな影響を与えました。

白血病との闘いを支える財団設立

1988年、カレーラスは自らも罹患した白血病の研究と、骨髄提供者の登録支援を目的とした慈善活動のため、「ホセ・カレーラス国際白血病財団」を設立しました。この財団を通じて、多くの白血病患者やその家族を支援しています。

1990年代以降の活躍

1990年、イタリアで開催されたFIFAワールドカップの開会式では、ドミンゴ、パヴァロッティと共に歌唱を披露し、世界中の何百万人もの人々に感動を与えました。この共演は、カレーラスの財団への寄付を目的としたものであり、ドミンゴとパヴァロッティが復帰を祝う意味も込められていました。1992年のバルセロナオリンピックでは音楽監督を務め、サラ・ブライトマンとのデュエットでテーマソング「AMIGOS PARA SIEMPRE」を歌い、故郷でのオリンピックに貢献できたことは、白血病克服後の大きな喜びとなりました。

カレーラスは、オペラの舞台だけでなく、サルスエラなどの親しみやすいジャンルにも挑戦し、『ウェスト・サイド物語』の録音にも参加しました。また、坂本龍一の「オペラ」にも出演するなど、ジャンルを超えた活動も展開しています。

エピソード

スイスの高級宝石商ショパールは、「ホセ・カレーラス・モデル」の腕時計を発売し、その売り上げの一部が「ホセ・カレーラス国際白血病財団」に寄付されています。

作家の桐野夏生の小説「魂萌え」には、カレーラスの熱狂的なファンが登場します。

カレーラスは世界各地の病院を訪問し、白血病と闘う患者を励ましています。日本でも、少女患者にクマのぬいぐるみ（ルチアーノと名付けた）をプレゼントし、勇気づけました。

彼の愛犬の名前は、オペラ『トゥーランドット』のアリア「誰も寝てはならぬ」にちなんで「Vincero」と名付けられています。

カレーラスの活動の中心はイタリアオペラとフランスオペラですが、三大テノールの仲間であるドミンゴとは異なり、ドイツオペラにはあまり積極的ではありません。しかし、シノーポリ指揮によるドイツ語オペラやヨハン・シュトラウス作品でドイツ語を披露した録音や録画も残されています。

オーディオ愛好家としても知られ、米wilson audio社のモニタースピーカーを愛用しています。

来日時のテレビ出演

テレビ朝日系列のトーク番組「徹子の部屋」に出演した際、番組表で「ホセ・カレーライス」と誤植されたことがありました。

外部リンク

ホセ・カレーラス ファンクラブ ジャパン

ホセ・カレーラスは、その情熱的な歌声と不屈の精神で、多くの人々に感動と勇気を与え続けています。

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