古蜀

古蜀：古代中国の謎多き王国

古蜀（こしょく）は、古代中国の蜀の地に存在したとされる謎多き王国です。その歴史は、東晋時代の地誌『華陽国志』によって詳細が伝えられていますが、司馬遷の『史記』では、紀元前316年に秦によって滅ぼされたという事実のみが簡潔に記されています。この王国は、豊かな自然に恵まれ、「天府」と称される肥沃な土地を背景に独自の文化を育みました。

古蜀の概要

古蜀は、東は巴、南は越、北は秦、西は峨眉山に接する地域に位置していました。その原名は「華陽」といい、肥沃な土地から「天府」とも呼ばれていました。古蜀は、武王による帝辛（紂王）討伐にも参加し、周王室を奉じていましたが、中原から遠く離れていたため、春秋時代の会盟には参加することができませんでした。周王室が衰退すると、古蜀はまず王を称し、蜀王杜宇の時代には帝を称するようになりました。その後、開明氏が代々蜀王となり、隣国の巴と争いを繰り返しました。

秦による滅亡

周の慎靚王5年（紀元前316年）、蜀王は弟の葭萌を漢中に封じ、その城邑を葭萌と名付けさせました。しかし、葭萌は敵国の巴王と親交を持ったため、蜀王の怒りを買い討伐されました。葭萌は巴に逃亡し、秦に助けを求めました。当時、楚を討伐する計画を立てていた秦の朝廷では、蜀を討伐するか否かで議論が起こりました。一部の家臣は、「蜀は辺境の国であり、楚とは異なる」と反対しましたが、司馬錯と田真黄は、「蜀は富んでおり、軍備を整えるための資源も豊富である。また、水路を通じて楚へ通じているため、蜀を征服することは楚を征服することに繋がり、天下統一の足がかりとなる」と主張しました。恵文王はこの意見を受け入れ、張儀、司馬錯、都尉墨らを派遣して蜀を討伐しました。

蜀王は自ら軍を率いて葭萌と戦いましたが、敗走し武陽で秦軍に殺害されました。宰相、太傅、太子は逢郷まで逃れましたが、白鹿山で自害しました。冬の十月、蜀は秦によって平定され、葭萌と巴も滅ぼされました（秦滅巴蜀の戦い）。

開明朝

望帝から禅譲を受けた鱉霊は開明朝を開き、初代叢帝を称しました。しかし、秦の勢力が増大するにつれて、第九代開明尚は帝号を廃し、蜀王を称するようになりました。第十二代蘆子覇王の子である蜀泮は、秦軍の追撃を逃れて越南に逃れ、甌雒国を建国し、安陽王を名乗り、秦の侵攻に備えました。秦が滅亡した後、南[[越国]]を建国した趙佗の侵攻を受けましたが、これを退けました。しかし、趙佗の計略によって二度目の侵攻を防ぐことができず、紀元前179年に滅亡しました。これにより、開明朝の系譜は途絶えることとなりました。

歴代君主

蚕叢
柏灌
魚鳧
望帝
開明朝
鱉霊（叢帝）
蜀蘆帝
蜀保子帝
不明
蜀別帝
不明
不明
不明
蜀王開明尚
不明
不明
蘆子覇王

関連項目

華陽国志
長江文明
三星堆遺跡
* 蜀道の険

古蜀は、その歴史の多くが謎に包まれており、発掘調査や研究によって新たな発見が期待される地域です。この地で栄えた古蜀文化は、古代中国の多様性を示す上で重要な役割を果たしており、今後の研究によってその全貌が明らかになることが期待されます。

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