ホロフェルネスの首を斬るユーディット (カラヴァッジョ)

カラヴァッジョ作『ホロフェルネスの首を斬るユーディット』について

作品概要

カラヴァッジョの『ホロフェルネスの首を斬るユーディット』（1598-1599年頃、または1602年）は、旧約聖書外典「ユーディット記」を題材とした絵画です。この作品は、未亡人ユーディットが敵将ホロフェルネスを誘惑し、殺害する瞬間を描いています。現在、ローマのバルベリーニ宮国立古典絵画館に所蔵されています。

2017年から2018年にかけてミラノで開催された展覧会では、この作品の制作年について議論がなされました。初期の作品には見られない光の使用法から、1602年制作の可能性が示唆されました。また、伝記作家ジョヴァンニ・バリオーネの記述から、ジェノヴァの銀行家オッタヴィオ・コスタが依頼主であった可能性も指摘されています。

主題

ユーディット記では、ユーディットがアッシリアの将軍ホロフェルネスを誘惑し、酔わせて殺害する場面が描かれています。カラヴァッジョはこの物語の中で、最大の劇的瞬間である斬首の瞬間を描きました。

画面構成は、ユーディットと女中のアブラがホロフェルネスの横に立ち、ユーディットが剣を振り上げている様子です。漆黒の背景を背に、人物たちは舞台のように照らされ、劇的な効果を生み出しています。ホロフェルネスは腹ばいになり、首をねじってユーディットの方を見ています。彼は無防備であり、死を悟っているようです。

X線検査により、カラヴァッジョがホロフェルネスの頭部の位置を調整し、より劇的な効果を追求したことがわかっています。3人の人物の表情は感情豊かで、特にユーディットの表情は、決意と嫌悪感が混ざり合った複雑な感情を表しています。

この作品は、後世の芸術家たちに大きな影響を与え、アルテミジア・ジェンティレスキなどの画家が、その影響を受けて同様の主題を描きました。しかし、カラヴァッジョの作品は、その物理的な写実性と、ユーディットの心理的なアンビバレンスを捉える点において、他の追随を許さないと評価されています。

ユーディットのモデルは、カラヴァッジョの他の作品にも登場するローマの遊女フィリーデ・メランドローニであると考えられています。また、血と斬首の描写は、1599年に起こったベアトリーチェ・チェンチの処刑から着想を得た可能性があります。

真筆の可能性のある第2版

カラヴァッジョが1607年にナポリを離れた際、工房に『ロザリオの聖母』とともに残されたとされる『ホロフェルネスの首を斬るユーディット』の第二のバージョンが存在します。この作品は、長らく行方不明でしたが、2014年にトゥールーズの屋根裏部屋で発見されました。

この第二のバージョンは、失われたカラヴァッジョの作品であると主張する学者もいれば、フランドルの画家ルイ・フィンソンの作品であるとする学者もいます。この作品の真筆性を巡っては議論が続いており、美術史家たちは作品の様式や技術的な特徴から帰属を判断しようとしています。

フランス政府は、この作品の輸出を禁止していましたが、ルーヴル美術館が購入を見送った後、オークションに出品されました。その後、アートコレクターであるJ.トミルソン・ヒルが、オークション直前に非公開の金額で購入しました。

この第二のバージョンは、カラヴァッジョの作品であるとすれば、彼の画業を理解する上で重要な資料となります。しかし、フィンソンの作品であるとすれば、カラヴァッジョの影響を受けた画家たちの活動を知る上で貴重な資料となります。いずれにせよ、この作品は美術史における重要な発見であり、その帰属に関する議論は今後も続いていくでしょう。

外部リンク

ウィキメディア・コモンズ：Judith beheading Holofernes by Caravaggio
Caravaggio.org - Analysis of Caravaggio's "Judith Beheading Holofernes"

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