ホータキー朝

ホータキー朝とは

ホータキー朝は、18世紀初頭にアフガニスタンでギルザイ部族連合が樹立したイスラム王朝です。1709年4月、ギルザイ族の一派であるホータク族の族長、ミール・ワイスがサファヴィー朝に対して反旗を翻し、ローイ・カンダハールで独立を宣言したことで成立しました。

最盛期には、現在のアフガニスタン、イラン、パキスタン西部、タジキスタン、トルクメニスタンの一部にまたがる広大な地域を支配しました。しかし、1738年のカンダハール包囲戦で、当時の首長であったフサイン・ホータキーがアフシャール朝のナーディル・シャーに敗北し、短命な王朝はその終焉を迎えました。

名称について

日本語の資料では、ミール・ワイスとその継承者たちが築いた勢力に対し、「ミール・ワイスのカンダハール王国」や「カンダハールのアフガン系ギルザイ部族による反乱」といった呼称が用いられることが多く、特定の王朝名が与えられない場合も少なくありません。

イラン百科事典においても、形式的にサファヴィー朝が存続していたことを考慮し、「ホータキー朝」という用語は使用されていません。

本記事では「ホータキー朝」という名称を使用していますが、この名称がこの勢力を指す一般的な用語として確立されているわけではない点に留意が必要です。

歴史

16世紀から18世紀初頭にかけて、ローイ・カンダハール（現在のアフガニスタン南部）は、シーア派イスラム王朝であるサファヴィー朝の東端に位置していました。しかし、この地に元々居住していたパシュトゥーン人はスンニ派を信仰しており、東に位置するスンニ派のムガル帝国との間でしばしば紛争が起こっていました。また、同時期には北部地域がブハラ・ハン国の支配下に置かれるなど、不安定な情勢が続いていました。

17世紀後半になると、サファヴィー朝は度重なる紛争や宗教対立によって衰退の一途をたどります。1704年、サファヴィー朝のシャーであるフサインは、カルトリ王国の国王ギオルギ11世をローイ・カンダハールの総督に任命し、地域の反乱を鎮圧しようと試みます。しかし、既に国内は混乱しており、アフガニスタンにおける反乱の気運は高まっていました。後にホータキー朝の初代首長となるミールワイス・ホータクもこの時拘束され、イスファハーンの法廷に送られますが、フサインによって嫌疑を免じられ、カンダハールに帰還しました。

1709年4月、ミールワイスはナーシル氏族の支援を受け、カンダハールでサファヴィー朝に対して反旗を翻します。反乱は、ギオルギ11世とその護衛を宴会に誘い込み、殺害することから始まりました。その後、サファヴィー朝の兵士を殺害し、イスファハーンから派遣された軍勢を打ち破り、ホータキー朝を成立させました。

ミールワイスは王の称号を拒否し、カンダハールのヴァキール（摂政）として国軍を率いました。1715年11月に彼が死去すると、その地位は兄弟のアブドゥルアズィーズ・ホータキーに引き継がれましたが、後にミールワイスの息子であるマフムードによって殺害されました。

1720年、マフムードはスィースターンの砂漠を越えてケルマーンを占領し、サファヴィー朝の首都イスファハーンの征服を計画します。1722年3月8日、グルナバードの戦いでサファヴィー軍を破った彼の軍勢はイスファハーンに進軍し、6ヶ月にわたって包囲、陥落させました。10月23日、フサインは退位し、マフムードを新たなシャーとして承認せざるを得ませんでした。

しかし、ペルシア住民の多くは、アフガニスタンの反乱軍による政権簒奪という認識を強く持っていました。1729年までの7年間、ホータキー朝はペルシアを支配しましたが、その支配は不安定であり、当初から苦難と暴力が伴いました。マフムードはイスファハーンで数千人もの民間人を虐殺するなど、血なまぐさい統治を行い、ペルシアにおける王朝の影響力は徐々に低下していきました。

滅亡

1725年、アシュラフ・ギルザイがマフムードを殺害し、その地位を奪いました。1729年10月、アシュラフ率いる軍勢はダームガーンでアフシャール族のナーディル・シャー率いるペルシア勢力と衝突し、大敗を喫します。ナーディル・シャーはペルシアからギルザイ部族連合の残党勢力を追放し、ファラーフやカンダハールのドゥッラーニー部族連合から軍勢を募りました。そして、アフマド・シャー・ドゥッラーニーらを従え、カンダハールに進軍し、1738年にここを占領しました。

カンダハールの包囲によってホータキー朝は滅亡し、約30年にわたる支配に終止符が打たれました。

もう一度検索